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ひとの活動が、生物多様性の未来をつくる

人の手が守る生物多様性

私たちは、森や湿地などの自然に手を加えず「ありのまま」にすることこそ自然を守ることだと思いがちです。しかし逆に、人の手が加わることで生育が可能になる動植物もたくさんあります。

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例えばこのカタクリは、樹木が鬱蒼と茂った森ではなく、適度に間伐された樹林に多く生育します。マツタケは落ち葉を集めて持ち出すような手入れをしている松林に生えます。これらの生物は明るい場所や土壌の栄養が乏しい場所を好むため、人間による「自然の手入れ」が助けになるのです。

もちろん、あらゆる自然の維持にとって人間の手入れが必要というわけではありません。高山帯の植生やサンゴ礁のように、人間の影響を減らすことによって守られる自然もあります。

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要するに「人間が自然の手入れをしたほうが守られる生物もいるし、そうでない生物もいる」のです。これは考えてみれば当然のことかもしれません。あらゆる生物は他の生物と、助け合う関係から敵対しあう関係まで、様々な関係をもって暮らしており、人間活動との関係も種によって異なります。

人間の持つ自然への影響力

かつての日本では、生活に必要な燃料として薪や炭を利用し、田んぼや畑の肥料として落ち葉や刈草を利用してきました。こうした自然の手入れの結果、多くの動植物が暮らせる環境が作られていたことは上で述べた通りです。

また現代のようなコンクリート製の用排水路の整備がなされる以前の田んぼでは、山の湧水や川から引き込んだ水を多くの田んぼで利用できるよう、溜池・畔・水路などを作ってきました。その結果、カエルやサンショウウオなどの両生類や、ゲンゴロウなどの水生昆虫の暮らし場所が維持されてきました。

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このように生物多様性の保全につながる自然の手入れは、生活や農業の一環として行われていました。しかし現代は、生活や農業の方法が大きく変化し、昔のように森林の資源が利用されなくなり、溜池や田んぼを手作業で管理することも少なくなりました。その結果、生物多様性が損なわれるとともに、自然がもつ防災などの機能も低下しました。

人間は他の生物と比べて「活動」の幅の広さが突出しています。人間は、樹林の間伐や落ち葉掻きのように多くの種の共存を促す活動を行える一方で、山を切り崩したり地面をアスファルト舗装したりするような、ほとんどの生物の生息を不可能にする活動も行える生物です。人間は活動の選択次第で「生物多様性」のあり方を大きく変える力がある生物であるといえるでしょう。また、人間の活動の選択は、他の生物だけでなく水や土砂の動態といった地学的な過程にも影響します。

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適度に間伐などの管理が行われ多様な植物が生育するようになった樹林では、降った雨が地下に多く染み込むため、地下水の涵養や水害の抑制に役立つのに対し、アスファルト面に降った雨は地下には染み込まずに流出します。このように、人間活動のあり方は水資源の量や災害の起きやすさなど多方面に影響します。

そのため私たち人間は、自らの影響力を自覚し、その力を賢く活用することが重要です。

「自然の手入れ」の未来

これからの時代は、かつては「生活や農業のため」として行われてきた自然の手入れを、「新たな動機」に置き換えていくことが重要です。そのために柔軟な発想が必要になるでしょう。

例えば高齢化社会を迎えた日本では、健康寿命の延長が大きな課題です。近年の研究では、自然の中での適度な運動は、心と体の両面に大きなプラスの効果をもつことが知られています。自然の手入れの活動は、個人の健康と自然の恵みの両方を向上させる活動になるでしょう。

また気候変動対策という新しい動機のもと 、種多様性の高い樹林を回復させたり、樹木や竹を適切に刈り取ってバイオ炭にしたりすることもあるでしょう。

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繁茂したモウソウチク(竹)を伐採し、バイオ炭(植物由来の炭)をつくる作業。炭は半永久的に分解されずに残るので、竹が成長過程で大気から吸収した炭素を隔離することができ、脱炭素=気候変動対策に役立つ。

また自然の手入れを「地元」の人だけに頼ることには限界がありますが、これからはデジタル技術を使って、遠隔地に住んでいる人も巻き込んだ新しい形の自然の管理のグループがつくれるかもしれません。

すべてを昔に戻すのではなく、昔からの自然の管理を学びながら、その良いところを未来の社会の中に組み込んでいく活動は、自然と人間が共存する未来にとって重要なものになるはずです

執筆者

雲

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