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ブロードバンド無線アクセスにおけるMIMO多重法を用いた5Gbit/s超高速パケット信号伝送屋外実験〜4.屋外実験結果

屋外実験は、図3に示す神奈川県横須賀市のYRP(Yokosuka Research Park)地区の測定コースで行った。屋外実験で用いた基地局アンテナと移動局および移動局アンテナを搭載した測定車の外観を写真2に示す。

図3 屋外実験コース

写真2 屋外実験用基地局アンテナ/移動局測定車

基地局のアンテナ高は約26mとし、水平方向のビーム幅が90°のセクタアンテナ注意1を用いた。全アンテナの送信電力は20Wであり、アンテナ利得は19dBi、アンテナ間隔は70cm( キャリア周波数(4.635GHz)に対する波長の約11波長相当)で線形配置した。移動局の受信アンテナは線形配置の12本のダイポールアンテナ注意2を用いた。アンテナ高は約3.5m、アンテナ利得は2dBiであり、隣接する受信アンテナの間隔は20cm(約3.1波長相当)とした。移動局を搭載した測定車は、基地局からの距離が150〜200m程度の測定コースを平均時速10kmで走行し実験を行った。測定コースは、周囲に3〜6階建てのオフィスビルが建ち並ぶ見通し外環境である。

各送信アンテナからの信号の平均受信SINR、隣接する送信アンテナ間のフェージング相関、平均パケット誤り率(PER : Packet Error Rate)およびスループットの時間変動を図4に示す。

図4 時間変動特性

図4(a),(b)より、測定コースにおける送信アンテナ当りの受信SINRは約18〜22dB程度、フェージング相関は約0.2〜0.4で変動していることが分かる。また、図4(c)より、基地局から最大200m離れた測定コースにおいて約99%の確率で、平均PER が10−2以下の情報レート4.915Gbit/sの超高速パケット信号伝送を実現できていることが分かる。さらに、1受信アンテナ当りの平均受信SINRに対するスループット特性を図5に示す。また、屋外実験における遅延スプレッド注意3およびアンテナ間のフェージング相関の測定コースの平均値と同等の条件での計算機シミュレーション結果を併せて示す。図5より、屋外実験結果の所要受信SINRのシミュレーション結果との差分は、約1dB以内に抑えられている。この差分の主な原因として、A/D変換による量子化に起因するチャネル推定、信号分離演算の誤差、および実際の伝搬チャネルモデルとの差に起因する誤差が考えられる。

図5 スループット特性

この図より、屋外実伝搬環境においてASESSを適用するQRM−MLD法を用いることにより、1受信アンテナ当りの平均受信SINRが約28.5dBで4.915Gbit/sの超高速パケット信号伝送を実現できていることが分かる。

  • 注意1 セクタアンテナ : セクタ化された基地局において、隣接するセクタ間の干渉を低減するために用いられる指向性を有するアンテナ。
  • 注意2 ダイポールアンテナ : アンテナの中でもっとも簡易なアンテナ。ケーブル(給電点)の先に2本の直線状の導線(エレメント)をつけたアンテナである。
  • 注意3 遅延スプレッド : 移動通信における電波伝搬において、建物などからの反射・回折により遅延して到来するすべての電波の遅延時間の広がり。全到来波の遅延時間について受信電力による重み付け統計処理を行い、求められる標準偏差で定義される。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.15 No.2に、掲載されています。