フェムトセル用超小型基地局装置の開発〜4.フェムトBTSの特徴
4.1 基本仕様
フェムトBTSとピコBTSの基本仕様を表1に示す。どちらの装置も屋内専用装置であり、2GHz帯の1キャリアに対応した装置である。ピコBTSがカバーするセル半径は数十メートルから数百メートルであるのに対し、フェムトBTSがカバーするセル半径は数十メートルと小さくなっている。セル半径が小さくなったことにより、最大送信出力を小さくすることができるため、さらなる低消費電力化が実現可能となる。また、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定される無線特性(表2)として、屋内BTSを想定して策定されたLocal Area BS1の規格が、国内法制度の整備により適用可能となったことを受け、フェムトBTSにおいて初めて採用した[5]。Local Area BSの場合、受信感度や周波数安定度などの条件が緩和されるため、Wide Area BS
2の規格を満たすものに比べて、水晶発振器などの内部回路について低価格なものを用いることが可能となる。さらに、最大同時接続数を4ユーザに限定するなど家庭内への設置を想定して仕様値を最適化することにより、回路規模の削減を図っている。このような回路規模およびアンテナの削減を行った結果として、フェムトBTSはピコBTSに比べ、小型化(約1/3)、軽量化(約1/5)、低消費電力化(約1/8)および低価格化(約1/6)を実現している。
表1 フェムトBTSとピコBTSの基本仕様 | ||
フェムトBTS | ピコBTS | |
周波数帯域 | 2GHz帯 | |
キャリア数 | 1キャリア | |
送信出力 | 20mW | 100mW |
最大同時接続数 | 4ユーザ | 32ユーザ |
大きさ | W135×H184×D40mm | W320×H240×D45mm |
重量 | 約0.6kg | 約3kg |
消費電力 | 12W以下 | 100W以下 |
表2 3GPPで規定されるLocal Area BSとWide Area BSの比較 | |||
規格 | Local Area BS | Wide Area BS | |
送信系 | 最大送信電力 | +24dBm以下 | 規定なし |
周波数安定度 | ±0.1ppm以内 | ±0.05ppm以内 | |
受信系 | 受信機の感度 | −106.3dBm | −120.3dBm |
隣接チャネル選択度 | −38dBm | −52dBm | |
スプリアスレスポンス | −30dBm | −40dBm | |
相互変調特性 | −38dBm | −48dBm |
1 Local Area BS:3GPPで規定される無線特性規格であり、屋内向けBTSを想定して策定されたBTS classificationである。
2 Wide Area BS:3GPPで規定される無線特性規格であり、屋外向けBTSを想定して策定されたBTS classificationである。
本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.16 No.2に、掲載されています。