ブロードバンド無線アクセスにおけるMIMO多重法を用いた2.5Gbit/s超高速パケット信号伝送屋外実験〜2.技術的特長
2.1 伝送レート2.5/sを実現するアンテナ数・変換方式・チャンネル符号化率
理想的な伝送レートは、チャネル帯域幅をBW(=100MHz)、送信アンテナ数をNTX、1シンボル1で送ることができるビット数をM、チャネル符号化率をR とした場合、次式で表される。
伝送レート(Mbit/s)=BW×NTX×M×R×(1−LOH)
ここで、LOHはパイロットシンボル2およびサイクリックプレフィックス(CP:Cyclic Prefix)
3など、伝送レートの向上に寄与しないオーバーヘッドがパケットフレーム全体に占める割合を示す。NTX=5,6,7,8の場合の、2.5Gbit/s以上の伝送レートを実現するためのRおよび伝送レートの一例を表1に示す。
表1 2.5Gbit/sを実現するアンテナ数、変調方式、チャネル符号化率の一例 | |||
アンテナ数(NTX×NRX) | 変調方式(M:ビット数) | チャネル符号化率(R) | 伝送レート |
5×7 | 64QAM(M=6) | 1 | 2.367Gbit/s |
6×6 | 64QAM(M=6) | 8/9 | 2.525Gbit/s |
7×5 | 64QAM(M=6) | 4/5 | 2.651Gbit/s |
8×4 | 64QAM(M=6) | 2/3 | 2.525Gbit/s |
LOH=21.1%とした。表から、6以上の送信アンテナ数が必要なことが分かる。理想的な伝送レートは、送信アンテナ数で決まるものの、実際の環境で誤りなく受信できるスループットは受信アンテナ数にも大きく依存する。これは、受信側で複数の送信信号を高精度に分離するには受信ダイバーシチ効果が必要なためである。したがって、実際に実現できる伝送レートは、おおむね送受信合計のアンテナ数で決まり、計算機シミュレーション結果から伝送レート2.5Gbit/sを実現するために必要な合計のアンテナ数は、およそ12となる。理論的には、送受信アンテナ数が同じ場合がもっとも効率が良いため、本実験では送受信アンテナ数を6とし、64QAM、チャネル符号化率はR=8/9により2.5Gbit/sの伝送レートを実現した。ただし、実際のシステムでは下りリンクを想定すると、基地局側の送信アンテナ数と比較して、移動端末側の受信アンテナ数が小さいことが望ましく、これらの条件を考慮した最適な送受信アンテナ数の構成は現在検討中である。
1 シンボル : 本稿では、誤り訂正符号化およびデータ変調マッピングを行った後の信号単位。
2 パイロットシンボル : 移動通信システムにおいて、送信側および受信側ともに既知のシンボル。受信側におけるシンボル同期、無線伝搬路(チャネル)での振幅変動、位相変動量の推定および受信した信号電力、干渉電力や雑音電力の推定などに用いられる。
3 サイクリックプレフィックス : OFDMにおいて、マルチパスの遅延時間に応じて発生するシンボル間干渉および隣接サブキャリアへのサブキャリア間干渉を取り除くために、OFDMシンボル間に設けられるガード区間。
2.2.QRM-MLDにおける信頼度情報に基づく適応生き残りシンボル候補選択法へ
本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.14 No.1に、掲載されています。