ブロードバンド無線アクセスにおけるMIMO多重法を用いた2.5Gbit/s超高速パケット信号伝送屋外実験〜2.技術的特長

2.2 QRM-MLDにおける信頼度情報に基づく適応生き残りシンボル候補選択法

MIMO多重法では、実際に実現できるスループットは複数の送信アンテナからの送信信号を受信側で分離する信号分離アルゴリズムに大きく影響される。本実験では、著者らがこれまでに提案した最尤検出(MLD : MaximumLikelihood Detection)注意1法をベースにした演算処理量削減型のQR分解注意2およびMアルゴリズム注意3を適用したMLD法(以下、QRM−MLD(complexity−reduced MLD with QRdecomposition and M−algorithm)注意4法)[5]に基づくシンボル候補注意5の信頼度情報を用いる適応生き残りシンボル候補選択(ASESS:Adaptive SElection of Surviving Symbol replicacandidates based on maximum reliability)法[6]を適用した。ASESS法を用いるQRM−MLD法では、象限検出を用いた簡易なシンボルランキングにより得られるシンボルごとの信頼度情報に基づき、信号分離に必要なユークリッド距離の計算回数を削減することにより、スループットをほとんど劣化させずに演算処理量を大幅に低減する。2.5Gbit/sの伝送レートを実現する無線パラメータである、送受信アンテナ数6、64QAM、チャネル符号化率8/9の場合、演算処理量の削減を行わないMLD法の約1/290,000,000に、オリジナルのQRM−MLD法と比較しても約1/15に低減できる。

  • 注意1 最尤検出 : MIMO多重法における信号分離法の1 つ。全受信アンテナブランチの受信信号を用いて、各送信アンテナブランチのデジタル変調(本稿では64QAM)における送信信号点すべての候補の中から、もっとも確からしい信号点の組合せを選択する方法。
  • 注意2 QR分解 : 任意のm行×n列複素行列Hを、m行×n列のユニタリ行列Qとn行×n列の上三角行列Rの積、H=QRに分解する数学的手法。QRM−MLD法では、受信信号の直交化に用いている。
  • 注意3 Mアルゴリズム : 各ステージ(送信アンテナ)において、N個のシンボル候補(注意5参照)の中からM(≦N)個のシンボル候補を選択することにより、順次シンボル候補の絞込みを行う方法。
  • 注意4 QRM−MLD : MLDと同様、各送信アンテナの送信信号点すべての候補の中から、もっとも確からしい信号点の組合せを選択する方法で、QR分解およびMアルゴリズムを適用したもの。演算処理量を大幅に削減できる。
  • 注意5 シンボル候補 : 各送信アンテナのデジタル変調(本稿では64QAM)における送信信号点候補。

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.14 No.1に、掲載されています。