日々の取組み

コミックマーケットの通信環境を継続的に改善 2024年夏から冬へ、さらに快適な通信体験を実現

INDEX

毎年8月と12月に開催されるコミックマーケットにおいて、2023年8月の会期で通信の課題が顕在化し、改善を続けてきました。2024年8月の会期では全面5G化が完了し、一定の成果を上げることができましたが、4Gの通信速度に課題が残りました。そこで、2024年12月の会期では、会場全体に周波数帯の追加や最新技術を導入し、より混雑に強い環境を構築。さらに4G回線に通信が集中して速度低下が起きることを防ぐため、5G設定をオンにしていただくように広報活動も実施しました。4Gと5Gが効果的に棲みわけされ、どちらの回線でも快適な通信環境を実現しました。

全面5G化という土台を作った2024年夏コミ

コミックマーケット(コミケ)は、東京ビッグサイトで開催される世界最大規模の同人誌即売会。8月(夏コミ)と12月(冬コミ)の年2回、それぞれ2日間の会期中に25万人を超す来場者が詰めかけます。2023年の夏コミにおいて通信速度が低下し、来場者のみなさまから厳しいご意見を多数いただきました。

屋内の混雑の様子。屋外には入場待ちや、人気の出展者に並ぶ行列が延びる

通信速度低下の原因は、主に4G回線の容量不足でした。2023年の夏コミでは5G通信の整備が十分に進んでおらず、5G対応端末をお持ちのお客さまの通信も4Gへ集中してしまったことで容量不足を招きました。
すぐに基地局の5G化に着手しましたが、大規模な工事を伴うため時間を要します。段階的に基地局の5G化を進め、2023年冬コミで対象の約半数、2024年夏コミでは臨時局も含めた全面5G化を完了しました。これにより5G通信を快適にご利用いただけるようになっただけでなく、4G回線への負荷も軽減され、通信環境が大きく改善しました※1
しかし、一部では4G通信の速度に課題が残っていました。4G回線はご利用されているお客さまが多いことに加え、現在5G通信で主流の通信方式(NSA方式)では5G通信でも5Gと4Gの両方の電波を利用する仕組みのため、構造的に負荷がかかりやすくなっています。コミケの通信環境改善の完遂には、4G回線のさらなる負荷の軽減が必要でした。
そして、2024年冬コミを一連の対策の集大成と位置付け、「4Gでも5Gでも最大限つながる」通信環境をめざしました。ほかのイベントと比べ、コミケの待機列では動画の視聴やゲームのプレイなど、比較的容量の大きい通信も頻繁に行われます。お客さまのニーズに余裕を持って応えられるよう、通常の対策よりも高い基準を設けました。

  1. 2024年夏コミまでの取組みについてはこちらでご確認ください。

会場全体で通信容量の増強とアクセス分散を徹底

全面5G化が完了したことで、2024年冬コミからは会場全体に5Gの最新技術を導入できるようになりました。
特に人が密集する東待機列では、2024年夏コミで増設した臨時局にマルチユーザMassive MIMOとSA方式※2を追加導入して5G通信を加速し、4Gへの負荷軽減を促進しました。そのうえで4Gの周波数帯も最大限に追加し、相乗効果によってさらに安定した接続を実現しました。

東待機列の様子。つづら折りで並ぶため、広範囲で密集状態になる

マルチユーザMassive MIMOは、従来よりもはるかに多くのアンテナを用いて、一度に通信できる端末の数を大幅に増やす通信技術です。電波の発射方向を細かく制御し、ユーザーごとに最適な電波を割り当てることで、混雑時でも通信の負荷を効果的に分散し、安定した接続を実現します。

マルチユーザMassive MIMOのアンテナ(右)を搭載した臨時局。
見た目に変化はないが、多数のアンテナを内蔵する

SA(Standalone)方式は、現在5Gで主流の通信方式であるNSA(Non-standalone)方式が4G用の装置を経由するのに対し、5G専用の装置のみで構成されるのが特長です。SA方式を利用可能なお客さまは5G接続までの時間が短縮されるほか、4Gネットワークと完全に切り離されるため、4Gの通信容量に余裕を生み出す効果も期待できます。

NSAとSAの違い

西待機列でも東待機列と同様に4Gの周波数帯を追加し、SA方式にも対応。また、毎回のコミケで測定したデータをもとに基地局のアンテナの高さや向きを調整しており、最適な設定を模索し続けています。
屋内についてもすべての基地局がSA方式に対応。さらに会場全体で3Gの周波数帯の一部をお客さまに影響のない範囲で4Gに転用し、4G回線の容量をさらに確保できるよう調整しています。また、コスプレエリアとして多くの人が集まる西展示棟屋上では、撮影した写真のクラウド保存や動画のライブ配信などのアップロードが頻繁に行われることを踏まえ、新規に電波を割り当て、通信環境の強化を図りました。

  1. 5G SAについて、詳しくはこちらでご確認ください。

最大限の対策を実施して迎えた当日

コミケの通信改善を完遂するため、通信技術の導入以外でも、実施可能な対策はすべて実施して臨みました。
たとえば、東待機列では移動基地局車と数十メートル先の小型基地局をケーブルで接続し、等間隔に臨時基地局を配置する手法を採用。さらにすべての臨時基地局の設備改修を施しました。設備改修にあてられる時間は夏コミと冬コミの間の約4か月のみと、異例のスピード感が求められました。本番直前まで作業が続きましたが、結果として計画どおりの通信環境を実現することができました。
また、4G回線の負荷を軽減し、5G通信の快適さをお客さまに体感していただくため、広報活動を並行して実施。5G対応端末をご利用のお客さまに5G設定をオンにしていただきたいことをお伝えしたほか、SA対応端末をご利用のお客さまへは5G SAオプションの無料キャンペーンをご案内しました(2025年3月現在、終了日未定)。当日は実際に5Gをご利用するお客さまの割合が増加し、通信の分散が促進されました。

状況の変化を見通して対策を続ける

2024年冬コミの2日間の来場者数は約30万人となり、前回の夏コミから約4万人増加しました。それでも会場全体で快適な通信を維持でき、段階的に実施してきた対策の成果が表れました。特にSA方式の接続速度については、お客さまからも好意的なご評価をいただいたほか、現地の測定結果としても効果が確認されています。

〔左上〕SAの測定結果 〔左下〕NSAの測定結果 〔右〕測定地点(コスプレエリア)の様子。
NSAの速度も十分に速いが、SAはさらに速い

2024年冬コミまでの一連の対策※3をもって、「通信改善取組み宣言」※4にも掲げた東京ビッグサイトの設備容量の増強はひと区切りを迎えます。しかし東京ビッグサイトでは2025年1月から大規模改修が始まっており、コミケの人流にも大きな変化が予想されます。今回の結果に満足することなく、潜在的なニーズも含めてお客さまの期待に応えられるよう、測定データの分析を続け、さらなる効果的な対策を講じてまいります。

  1. 2024年夏コミまでの取組みについてはこちらでご確認ください。
  2. 通信改善取組み宣言についてはこちらをご確認ください。
  • 株式会社NTTドコモ 首都圏支社
    ネットワーク部

    古橋 彬

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