日々の取組み

インテックス大阪の通信環境を強化
大規模ライブでも常時安定した通信を実現

INDEX

国内屈指の規模を誇る国際展示場であるインテックス大阪では、2019年のG20開催にあわせて通信設備が増強されました。しかし、2023年の年末に開催された大型ライブで通信設備の容量や配分のバランスに課題があることが判明。翌年の年末のライブまでに改善を完了させるため、スピード感を持って通信基地局の工事に着手しました。基地局のリソース配分やアンテナの配置を見直すことで通信容量が向上し、2024年の年末のライブでは快適な通信環境が実現しました。

国際会議レベルの通信設備でも、わずか数年で通信容量不足に

インテックス大阪は、大阪府のコスモスクエアにある国際展示場で、西日本最大、全国でも3位の床面積を誇ります。年間を通して、規模やジャンルの異なる展示会やイベントが数多く開催されています。こうした中、2023年、年末恒例の大型音楽ライブで物販スペースでの電子決済やSNSの閲覧などに遅延が発生し、通信の課題が浮き彫りになりました。遅延した最大の要因は、コロナ禍の時期を境に電子チケットや電子決済が新たに導入されたことにくわえ、Webによる会場案内の情報配信などもあり、会場全体の通信頻度や通信量が大幅に増加したことです。
インテックス大阪では2019年のG20開催に向けて基地局を増設しており、年末のライブでも臨時基地局なしで終始安定した通信環境を維持できていました。2020年には5Gも導入され、大阪府内でも特に充実した通信環境を持つ場所となっていましたが、G20から5年もしないうちに通信容量不足となってしまうほど、通信の需要は想定以上のペースで伸びていきました。

スピード感を持って迅速に対応、次の開催に向けて準備を開始

2023年の年末のライブで通信の問題が明らかになった直後から振り返りを行い、改善に向けた対応を開始しました。イベントの通信対策としては、一時的に膨大な通信需要に対応するため、移動基地局車など臨時設備を導入する方法が一般的です。しかし、インテックス大阪のライブは屋内がメインであるため、適切な場所に移動基地局車を設置することが困難でした。
そこで臨時の対策に頼ることなく、常設基地局を改良することでライブ時の通信需要に対応できる環境を整える方針を決定。会場内の人口密度が最も高くなる年末のライブを基準に対策を実施することにし、2024年の年末のライブに間に合わせるため、翌月には次回開催に向けた基地局設計の見直しを開始しました。

対策の柱は通信容量の増加と通信の分散

対策にあたっては通信容量の向上は当然必要となりますが、人が密集する大規模イベント会場では、通信の負荷を適切に分散させる制御(ロードバランス)も非常に重要となります。例えば、容量対策として周波数帯を追加したとしても、特定の基地局や周波数帯に接続が偏ってしまうと「空いている周波数帯があるのに通信速度が低下する」という現象が発生する場合があるためです。
インテックス大阪では、まず各基地局がカバーする4Gおよび5Gエリアをより細かく分割しました。分割されたエリア(セクタ)ごとに独立した通信が行われることで、全体の通信容量が増加するとともに、特定のエリアにリソースを重点的に割り当てる柔軟な運用が可能になります。これにより、混雑が予想される場所への対応を強化し、より効率的に快適な通信環境を実現できるようになりました。

セクタ分割のイメージ。柔軟な運用ができる分、制御は複雑に

続いて各周波数帯の使用状況を分析し、通信の負荷を分散できるよう一部の周波数帯を調整しました。これにより、特定の周波数帯に接続が集中することを防ぎ、より安定した通信が可能になります。さらに、アンテナの配置も見直し、屋内の高密度なイベントに適した機器にアップグレードすることで、会場全体に効率的に電波を届けられる環境を整備しました。
設備は導入して終わりではなく、その後に細かい調整作業が不可欠です。野外のライブイベントのように広大な敷地を大まかにエリア分けするのとは異なり、インテックス大阪では隣接する複数の展示ホールにステージや物販スペースが設けられるため、より精密なエリア設計が求められます。そこで、各基地局のエリア分けを従来よりも細かく設定し、それぞれの展示ホールに最適な電波を届けつつ、電波干渉を防ぐための調整作業をライブ開催の直前まで続けました。
3日間のライブには約6万人が来場し、多くのお客さまが電子決済やSNSをご利用されました。ライブ期間中は継続して測定を実施し、その結果、スマートフォンで想定される通信は数値・体感ともに安定していることを確認しました。さらなる快適な通信環境を実現するため、2025年の年末のライブ開催に向けては、5G SA方式の導入や周波数帯の追加、より高度なセクタの細分化などの対策を検討していきます。

会場でデータを測定し、次回以降の改善に活かす
  • 5G SAについて、詳しくはこちらでご確認ください。

主催者や施設と連携し、イベントの成功を支える

工事は非常にタイトなスケジュールでしたが、ライブ主催者やインテックス大阪のご理解とご協力により、計画通り完了することができました。ライブ主催者とは、夏フェスの通信環境構築でも協業した実績があり、そのときの経験を生かして年末のライブでもスムーズな連携が実現しました。また、ライブ当日の通信測定にもご協力いただいたことで、2025年開催に向けた振り返りや対策の検討を迅速に進めることができています。工事の進行においても、インテックス大阪のご協力のもと、工期を調整しながら進めることができました。
通信の重要性は年々高まり、求められる基準も大きく向上しています。技術力や課題解決力を磨くことに加え、ステークホルダーの皆さまと連携しながら、いつでもどこでも快適な通信環境をご提供できるよう努めてまいります。

  • 株式会社ドコモCS関西
    ネットワーク運営事業部
    エリア品質部 大阪エリア品質担当

    吉田 有花

  • 株式会社ドコモCS関西
    ネットワーク運営事業部
    エリア品質部 品質技術担当

    池田 智隆

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