北海道庁周辺エリアの通信品質改善
北海道ならではの課題を解決するエリア設計

北海道庁周辺はオフィスが立ち並び、もともと通信量が多いエリアですが、基地局の新設が難しいために特定の屋外基地局へアクセスが集中していました。コロナ禍で減った人流の回復とともに通信量も増えつつあることから、抜本的な対策に着手。屋外基地局を強化しつつ、周辺ビルに屋内用基地局を設置してビル内の通信需要を吸収する対策を実施。その結果、ビル内の通信環境が向上するとともに、周辺の屋外基地局への負担が軽減され通信容量にも余裕が生まれました。
複合的な要因で生じた通信速度の低下
北海道庁周辺は、札幌市内でも主要なビジネスエリアのひとつです。もともと通信量が多く、たびたび通信基地局の設備増強を行ってきました。しかし、2021年頃から、通信を利用する人が集中する昼休みの時間帯になると通信基地局の容量に余裕がなくなり、通信速度の低下が見られることが計測結果により判明しました。
原因のひとつは、基地局の新設が遅れたため、特定の基地局にアクセスが集中しやすい環境であったことです。北海道庁周辺には多くのビルが立ち並んでいますが、その多くは建設時期が古く基地局を設置するのに十分な耐久性を備えていませんでした。過去に積雪に対するビルの耐久性能の基準引上げがあったことから、雪国ならではの積雪に加えて新たに基地局設備を設置できる余力のあるビルが少ない状況となっています。そのため基地局の新設ではなく、既存基地局設備の強化でカバーしてきました。また、北海道の建物は断熱性を高めるために壁を厚くし、窓を二重や三重にしたり、電波の透過しづらいLow-Eガラスなど使用することが一般的です。そのため、屋外の基地局からの電波が届きにくいという課題もありました。

もうひとつの要因は、人流と通信量の増加です。テレワークからオフィス勤務に戻る人が増えはじめ、コロナ禍で減った人流が回復傾向にあったことに加え、Web会議の定着により通信の利用シーンが増えました。さらに近年は、大容量の定額通信プランが普及し、動画視聴やゲームのプレイなど大容量のコンテンツを、料金を気にせずにWi-Fiではなくキャリア回線で利用する人が増えたことも通信量の増加に拍車をかけています。人流・通信量はさらに増えることが予見され、通信環境の見直しに乗り出しました。
建物のなかに基地局を置くことで、屋内をエリア化
北海道庁周辺を支えていた屋外の基地局については、2024年4月に周波数を追加し、通信容量を増加。技術的・法的に搭載可能な周波数をすべて備えました。これ以上の屋外の基地局の強化は難しかったため、さらなる強化に向けて、北海道庁周辺エリアの対策の主眼を屋内に置くこととしました。具体的には、特に通信の需要が高いオフィスビルや商業ビルにおいて、ビル内部で無線通信の処理を完結できる屋内用基地局設備を導入。この対策により、ビル内の通信品質が向上するだけでなく、屋外の基地局の通信容量の負荷を減らす効果も期待できます。

対策を実施したビルは道庁周辺で通信需要の高い3棟。屋外の基地局から電波を受信し、屋内に電波を増幅してエリア化していたビルでは、ビル内に屋内用基地局を設置することで、ビル内の設備だけで通信を処理できるようになりました。また、これまでビル屋内の電波対策をしていなかったビルや地下の電波が届きづらい場所の対策だけにとどまっていたビルでは、地下を含めた全フロアに屋内用基地局設備を導入し、フロアごとにアンテナを設置することで、どのフロアでも快適な通信環境を構築しました。さらに、5Gの電波をより多くのお客さまが補足しやすくなるよう調整を行い、通信品質のさらなる向上を実現しました。
お客さまのご不便を最小限に抑えて工事を完遂
一刻も早い通信環境改善をめざす一方で、ビル内の工事はお客さまの業務に影響を及ぼす可能性がありました。そのため、改善のスピードとお客さまへの影響を最小限に抑えることの両立が大きな課題となりました。例えば、停電が必要な作業は、もともとビルの停電が予定されている日に合わせて実施し、それ以外の作業は土日や夜間を活用しながら少しずつ進めました。また、ビル全体を一挙に改良するのではなく、工程はフロア単位で進行。3棟のビルで40近いフロアの改良を並行して進めたため、工程管理は複雑になりましたが、ビルの担当者さまと何度も調整を重ねることで、円滑に進めることができました。
工事をしている場所では基地局の運用を一時的に停止することから電波が弱くなってしまうケースもあるため、周辺基地局のアンテナ角度を変更し電波の到来範囲を調整することで、エリアに穴をあけないよう対策を行いました。また、屋内に機器を設置するにあたり、ケーブルを通すためのスペース確保のほか、廃熱や耐火などの処理も考慮する必要があり、これらの対応が工程の複雑化につながりました。

それでも、お客さまへの影響を極力抑えるため、部門間の連携を密にしながら工事を進め、2024年10月までに一連の対策が完了しました。
人流を予測して、通信速度の低下を未然に防ぐ
すべての対策が完了した結果、かつてWeb閲覧にも支障があった場所でも快適に動画が視聴できるなど、大幅な通信品質の向上が実現しました。対策前と比べて通信速度が5倍前後向上した場所もあり、昼休みの時間帯でも基地局へのアクセス集中が緩和され、容量に余裕が生まれました。

今回の対策は、通信改善取組み宣言※にも掲げた、札幌駅~大通周辺の対策の一環として実施され、目標は達成したものの、ピンポイントでの改善は継続していきます。北海道庁周辺で対策を実施したビルでは電波の割り当てを細かく調整し、2025年度早期の完了をめざしてさらなる改善を進めています。
また、北海道全体では、インバウンドの増加や新規施設の開業により、人流が大きく変化しています。こうした変化を先取りし、通信の課題を未然に防ぐための取組みを引き続き強化していきます。
- 通信改善取組み宣言についてはこちらをご確認ください。
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株式会社ドコモCS北海道
北海道東支店 ネットワーク部
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株式会社ドコモCS北海道
エリア品質部
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