100Mbpsの伝送速度を実現するMIMO用低消費電力化復調・復号LSIの試作に成功
-LTEの実用化に向けた取組み-
<2008年12月17日>
NTTドコモ(以下ドコモ)は、LTE1 の要求条件
2 である伝送速度100Mbpsの受信処理を実現する、低消費電力LSIの試作に成功しました。本試作により、現時点で商用化されているHSDPA方式の受信最大通信速度7.2Mbpsの10倍以上に相当する下り100Mbpsの高速信号伝送時において、MIMO
3 信号分離
4 および誤り訂正復号
5 処理を40mW以下の消費電力で実現しました。
ドコモでは2007年9月に、4つのアンテナから送信された信号の復調処理およびMIMO信号分離処理を行う機能を実装し、下り200Mbpsの伝送速度のMIMO信号分離を100mW以下の低消費電力で実現するLSIの試作に成功しています。今回の試作LSIでは、LTEの要求条件に相当する下り100Mbpsの伝送速度における更なる低消費電力化の実現を目的としています。LTE端末の受信処理において大きな処理量を必要とするMIMO信号分離、およびほぼ同等の処理量を要する誤り訂正復号処理を含むLSIを、40mW以下の低消費電力で実現しました。
具体的には、2つのアンテナから送信された周波数帯域幅20MHzのOFDM6 信号の復調処理、受信状態の悪い環境でも高品質な通信を実現できるMIMO信号分離処理および誤り訂正復号処理を行う機能が実装されています。LSI化において65nm(ナノ・メートル)プロセスを適用し、低消費電力化を実現するために、回路の冗長な部分を省く最適化を、特に大きな処理量を必要とするMIMO信号分離処理と誤り訂正復号処理について統合的に実施しました。
ドコモは今後、今回試作したLSIに用いた技術をもとに、引き続きLTEおよびIMT-Advanced7 の研究開発を推進し、国際標準化にも積極的に協力していきます。
1 LTE:
Long Term Evolutionの略。標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)で仕様が作成された移動通信方式。下りリンクにおいて、最大100Mbps以上の伝送速度が実現される。ドコモがSuper 3Gとして提唱したもので『3.9G』と位置づけられる。2 要求条件:
3GPPにおいて合意されたLTEのシステム性能の目標。3 MIMO(Multiple-Input Multiple-Output):
複数のアンテナから、異なる信号を、同時に同じ周波数を用いて送信する技術。4 MIMO信号分離:
複数のアンテナから送信された信号を、受信側で分離する技術。本LSIではMLD(Maximum Likelihood Detection)型のMIMO信号分離法を用いた。最尤判定法とも呼ばれる方法で、受信した信号と送信される可能性のある全ての信号の比較を行い、最も確からしい信号を判定する。最も性能の良い信号分離法であり、電波干渉の影響が大きい場合でも高い受信性能を実現できるが、大規模な処理量を必要とする。5 誤り訂正復号:
マルチパスフェージングにより生じる誤りを訂正するために、本来のデータとは別に冗長なデータを付加し、受信側で誤りを訂正する方法。LTEでは誤り訂正符号として、ターボ符号が採用されており、その復号にはターボ復号が用いられる。ターボ復号は高い誤り訂正能力を有するが、消費電力が大きい問題がある。6 OFDM:
Orthogonal Frequency Division Multiplexing(直交周波数分割多重)の略。高速なデータ系列を複数のキャリアに分割して並列伝送する方式。市街地伝搬環境で問題となるマルチパス干渉に強い耐性を有する。7 IMT-Advanced:
International Mobile Telecommunications-Advancedの略。IMT-2000の後継システムである第4世代移動通信システムのITU-Rにおける名称。
LSIの写真
LSIパッケージ(内部のチップ本体は4.2mm×8.4mm)
MIMO多重伝送における復調・復号処理イメージ
関連情報
MIMO信号分離の低消費電力化高性能LSI試作に成功 -Super 3Gシステムに向けた取り組み- (2007年9月13日)
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