MIMO信号分離の低消費電力化高性能LSI試作に成功
-Super 3Gシステムに向けた取り組み-
<2007年9月13日>
NTTドコモ(以下ドコモ)は、ドコモ独自の技術1 でMIMO多重2 信号の高性能な信号分離を行う、低消費電力のLSI3 の試作に成功しました。本試作により、Super 3G4 の高速信号伝送技術を端末搭載可能なレベルの消費電力で実装できました。
今回試作したLSIは、200Mbpsの伝送速度の信号分離を0.1ワット以下の低消費電力で高精度に処理することができます。
具体的には、4つのアンテナから送信された周波数帯域幅20MHzのOFDM5 信号の復調およびMIMO信号分離処理を行う機能が実装されています。高性能、低消費電力化を実現するために、ドコモが第4世代移動通信システムに向けて開発した受信信号分離技術を適用し、さらに、回路の冗長な部分を省く最適化を実施、LSI化において65nmプロセス6 を適用しました。
ドコモは今後、今回試作したLSIに用いた技術をもとに、引き続きSuper 3Gおよび第4世代移動通信システムの研究開発を推進し、国際標準化にも積極的に協力していきます。
- 1 ドコモ独自の信号分離技術:
MIMO多重された信号から、受信側で、各送信アンテナから送信された信号を分離する技術の中で、最尤(さいゆう)判定とよばれるもっとも高性能な信号分離法をベースとしている。最尤判定では、受信した信号と送信される可能性のある全ての信号の比較を行い、最も確からしい信号を判定する。最も性能の良い信号分離法であるが、大規模な処理量を必要とする。ドコモ独自の信号分離法では、最尤判定と同等の高い性能を維持しつつ、演算処理量を大幅に低減することができる。 - 2 MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)多重:
複数のアンテナから、異なる信号を、同時に同じ周波数を用いて送信する技術。 - 3 LSI:
Large Scale Integrationの略。大規模集積回路。 - 4 Super 3G:
LTE(Long Term Evolution)として標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Program)で現在議論されている移動通信方式。下りリンクにおいて、最大100Mbps以上の伝送速度が実現される。仕様上、最大4送信アンテナ×4受信アンテナのMIMO多重伝送が規定されている。 - 5 OFDM:
Orthogonal Frequency Division Multiplexing(直交周波数分割多重)の略。高速なデータ系列を複数のキャリアに分割して並列伝送する方式。市街地伝搬環境で問題となるマルチパス干渉に強い耐性を有する。 - 6 65nmプロセス:
65nmプロセスとはLSI製造における加工の微細度を示す。nm(ナノ・メートル)は10億分の1メートルを、プロセスには半導体上の集積回路の線幅の意味がある。値が小さいほど半導体加工の微細度が高く、チップの高速化・低消費電力化が図れる。
LSIの写真
LSIパッケージ(内部のチップ本体は4.2mm×8.4mm)
MIMO多重伝送における信号処理イメージ
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