報道発表資料

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2型糖尿病・糖尿病予備群を対象としたスマホアプリによる臨床研究開始
<2016年3月14日>

国立大学法人東京大学
株式会社NTTドコモ

  1. 発表者
    脇 嘉代(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 健康空間情報学講座/東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻 特任准教授)
    相澤 清晴(東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 教授)
  2. 発表のポイント
    • 2型糖尿病・糖尿病予備群を対象にスマートフォンのアプリケーション(以下、スマホアプリ)を用いた国内初の本格的臨床研究を開始しました。
    • スマホアプリを用いた臨床研究は、ユーザーが参加しやすいため、一般的な臨床研究に比べて規模を大きくして実施できます。対象集団をより詳細に層別化でき、個人レベルで疾病のリスクを予測できる可能性があります。
    • 本研究により、さまざまな測定データと生活習慣に関する情報を継続的に長期間にわたって収集することが可能となり、日常生活と糖尿病の関連性を解明、糖尿病の予後の改善が期待されます。
  3. 発表概要
    このたび、東京大学と株式会社NTTドコモとの社会連携講座として設置された、東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 健康空間情報学講座の脇 嘉代 特任准教授、同大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻の相澤 清晴 教授らは、Apple社ResearchKit1を用いたものとしては国内で初めてとなる2型糖尿病・糖尿病予備群を対象にスマホアプリ「GlucoNote(グルコノート)」による臨床研究を開始しました。健診データに加えて、従来の臨床研究では収集することが難しかった、家庭などで計測した血糖値、血圧、体重、活動量などのデータと、食事や運動、睡眠など生活習慣に関する情報を継続的に収集することによって2型糖尿病患者・糖尿病予備群の健康状態と日常生活の関連性をより多角的に検討することができるようになります。また、ユーザーにスマホを使った自己管理支援を提供することで、東大COI拠点(自分で守る健康社会〜Self-Managing Healthy Society COI拠点〜)が目指す「自分で守る健康社会」への貢献が期待されます。
  4. 発表内容
    糖尿病は世界的にも極めて患者数の多い慢性疾患の一つです。2014年には成人の9%が糖尿病を患い、2012年の糖尿病による死亡は150万人でした(WHO統計)。日本でも糖尿病が疑われる人は約2,050万人に達し、うち4割は十分な治療を受けていないことが明らかとなっており(平成24年国民健康・栄養調査)、国内外で、糖尿病患者の治療体制の整備と、それに向けた医療資源の効果的再配分が課題となっています。
    糖尿病の治療の中心は生活習慣の改善であり、食生活と運動習慣を主とした生活習慣に関する療養指導が行われます。糖尿病の発症予防にも、また合併症の進展予防にも、自己管理を行うことにより健康的な生活習慣を維持することが求められています。近年、自己管理の支援のために情報通信技術(以下、ICT)を用いたシステムが多数開発されヘルスケア領域で健康維持のために用いられています。
    海外では、糖尿病患者を対象に、スマホアプリを用いて自己管理をサポートするシステムの医学的有効性も報告されており、スマホアプリを用いて2型糖尿病患者の自己管理を支援することにより、血糖コントロールの改善効果が期待できると考えられています。一方で、ICTを用いた医療(eHealth/telemedicine)は多くの患者のデータ収集を可能とするものの、得られたデータをどう効率よく分析するか、また、そこで得られた結果をどのように患者にフィードバックしていくかという点では課題が残っています。
    東京大学と株式会社NTTドコモとの社会連携講座である健康空間情報学講座は、時間的・空間的に分散して取得管理された電子的な健康・医療データを、携帯電話や無線LAN端末といったモバイル情報機器と、携帯電話などの情報ネットワークとによって仮想的に統合できる新しい健康情報空間を構築し、その実証研究を行うことを目的に設置されました。2009年9月1日の設置以来、ICT医療の普及を一つのテーマとして、研究から社会実装までを視野に入れてさまざまなプロジェクトに取り組んできました。2型糖尿病患者を対象としたICT自己管理支援システム(DialBetics:ダイアルベティックス)の開発と臨床研究もその一つです。
    (参考:別ウインドウが開きますDialBetics説明動画
    DialBeticsを用いた臨床研究では2型糖尿病患者を対象に3か月間のランダム化比較試験を実施しました。試験前後でのHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー2)の変化を調べたところ、DialBeticsを使用した群では有意に改善し、DialBeticsを使用しない群では変化しないことが確認されました。また、患者にとってより利便性の高いシステムを開発するため、本学情報理工学系研究科電子情報学専攻の相澤研究室と共同研究を行い、画像処理・認識技術を取り入れて食事画像から食事評価を行い、より健康的な食事を摂ってもらうようアドバイスを行う仕組みを開発し、パイロット試験によって利便性の向上を確認しました。このDialBeticsの研究内容をベースに、今回は2型糖尿病・糖尿病予備群のスマホユーザーを対象に、アプリを用いた臨床研究の実施と、アプリを用いた自己管理支援の実現を目指して新たなプロジェクトを立ち上げました。
    本研究では、株式会社NTTドコモ、日本電信電話株式会社メディアインテリジェンス研究所の協力を得て、健康空間情報学講座が相澤研究室との共同研究として、Apple社が提供するResearchKitを用いたものとしては国内では初めてとなる2型糖尿病・糖尿病予備群を対象とする自己管理支援スマホアプリ(GlucoNote)を開発し、そのアプリを活用した臨床研究を実施します。スマホを活用して生活習慣が改善するように自己管理を支援し、同時に生活習慣(食事、運動、睡眠)と在宅測定データ(血糖値、血圧、体重、活動量)の関係を明らかにし、更に適切な自己管理支援につなげることを目指します。本臨床研究は研究参加に同意した2型糖尿病あるいは糖尿病予備群と診断された20歳以上の日本在住の方が対象で、参加期間は最長5年間です。参加者はGlucoNoteを用いて食事や運動などの生活習慣、体重、血圧、血糖値などの測定データを記録し(参考資料図1参照)、いくつかの質問に回答していただきます。またヘルスケアアプリを経由して計測された歩数を記録します。測定とデータの記録は参加者の任意です。本研究は東京大学大学院医学系研究科・医学部 倫理委員会の承認を得て実施しています。
    (参考:GlucoNoteはiPhone・iPod touch利用者対象のアプリ3です。2016年3月14日配信開始。URL:apple.co/1TO2fVl、QRコードは4を参照)
    従来の臨床研究に比べて、規模の大きい対象者から長期間にわたって各種データと生活習慣に関連した情報を収集することによって、日常生活と糖尿病の関連性を明らかにすることが可能となります。
    現在、病院の電子カルテから得られた情報をもとに、糖尿病患者の血糖管理状況、治療状況、合併症の有病率などを解析し、現在の日本における糖尿病患者の実態を明らかにすべく電子カルテ情報活用型多施設症例データベースを利用した糖尿病に関する臨床情報収集に関する研究(診療録直結型全国糖尿病データベース事業、J-DREAMS)が国立国際医療研究センターと日本糖尿病学会との合同で進行中です。J-DREAMSで得られたカルテ情報の解析結果とGlucoNoteで得られた日常生活情報の解析結果を統合的に用いることができれば、2型糖尿病患者の状況をより多面的に把握することが可能となります。
    2型糖尿病患者や糖尿病予備群患者の状況を、日常生活という観点から詳細に検討できれば、より効果的な自己管理支援を患者に提供できるようになり、現在、東京大学COI拠点が目指す「「自分で守る健康社会」の実現」への一助ともなり得ます。
  1. ResearchKit:医学研究をサポートする目的でAppleによって開発されたオープンソース・フレームワークのこと。(別ウインドウが開きますhttp://www.apple.com/jp/researchkit/
  2. HbA1c:赤血球中に含まれるヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの。採血時から過去1〜2か月間の平均血糖値を反映し、糖尿病の診断に用いられるとともに、血糖コントロール状態の指標となる。(日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド)
  3. GlucoNoteはiOS 8.0以降の方がご利用になれます。

参考資料

PDF参考資料(PDF形式:257KB)


  • iPhoneはApple Inc.の商標です。
  • iPhone商標は、別ウインドウが開きますアイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。
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