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2026年7月 3GPP Release 19標準化特集(1) ―6Gへのステップとなる5G-Advancedの高度化―

3GPP Release 19におけるサステナビリティ向け高度化技術

  • #5GE&6G
  • #3GPP
  • #無線通信
English

七條 太一(しちじょう たいち)
髙橋 優元(たかはし ゆうき)
池内 尚史(いけうち たかし)
小野田 崇伸(おのだ たかのぶ)
平野 椋己(ひらの りお)
6Gテック部

中村  零(なかむら みお)
RAN技術推進室

あらまし

3GPPでは,Rel-16からRel-18にかけて,5G無線ネットワークの高速・大容量化や機能拡張が継続的に進められてきた.Rel-19ではこれらのさらなる高度化に加え,サステナビリティに資する,ネットワーク省電力化や端末省電力化に向けた技術が新たに仕様化された.ネットワーク省電力化ではセル共通信号の送信動作を状況に応じて適応制御する技術が,端末省電力化では低消費電力起床受信機を活用した受信動作の効率化技術が導入されている.本稿では,これらRel-19で仕様化された無線アクセス技術を,その検討背景とともに概説する.

01. まえがき

3GPP(3rd Generation Partnership Project)*1では,第5世代移動通信システム(5G)の技術検討がRelease 18(以下,Rel-18)までに進められてきた.Rel-15においてモバイルブロードバンドの高度化*2を主眼とした基本仕様が策定された後,Rel-16やRel-17では高信頼・低遅延通信や産業連携を促進する拡張技術が規定された.また,5G-Advancedの最初のリリースとなるRel-18では,これらの既存機能に対するさらなる拡張に加え,ネットワーク省電力(NES:Network Energy Saving)を実現する技術が新たに導入された[1].NESではネットワーク側の送受信制御最適化が検討されており,これに対して端末(UE:User Equipment)*3側においても,受信動作に着目した省電力化技術の高度化が検討されてきている.端末省電力化については,Rel-15においてDRX(Discontinuous Reception)*4による基本的な省電力機能が規定されて以降,各リリースで継続的な拡張が図られてきた.
こうした背景の下,Rel-19ではネットワーク側・UE側の双方を対象とした省電力化技術の拡充が図られている.ネットワーク側では,SSB(Synchronization Signal Block)*5やSIB1(System Information Block 1)*6などのセル共通信号をUEの状況に応じてオンデマンドに送信する技術や,セル共通信号の送受信タイミングを動的に適応制御する技術が導入された.UE側では,受信動作に起因する消費電力の削減を目的として,低消費電力起床受信機(LP-WUR:Low Power Wake-Up Receiver)*7を活用した低消費電力起床信号(LP-WUS:Low Power Wake-Up Signal)*8が仕様化された.
本稿では,これらRel-19において導入されたサステナビリティに向けた高度化技術である,NES技術やUE消費電力削減技術について,その検討背景とともに概説する.

  1. 3GPP:移動通信システムの規格策定を行う標準化団体.
  2. モバイルブロードバンドの高度化:高速大容量を必要とする通信の総称.
  3. UE:3GPPに準拠した機能をもつ移動機.
  4. DRX:UEの電力消費の低減を目的とした間欠受信制御.UEは一定周期のスリープ期間と受信監視期間を繰り返すことで不要な受信動作を抑制する.
  5. SSB:基地局が定期的に送信する,通信に必要なセルの周波数と受信タイミングなどの検出を行うための同期信号および主要無線パラメータを通知する報知チャネル.
  6. SIB1:基地局がセル内に一斉同報する最低限のシステム情報.オペレータ識別子(*26参照),セル選択条件,ランダムアクセス手順(*27参照)に必要なパラメータなどを含み,UEがセルにキャンプ(*28参照)可能かを判断するために用いられる.
  7. 低消費電力起床受信機(LP-WUR):MR(*50参照)よりも低消費電力で,LP-WUS(*8参照)や同期・RRM測定(*16参照)に用いる受信機.必要な場合にのみMRを起動し,通常の受信処理へ移行させる.
  8. 低消費電力起床信号(LP-WUS):LP-WURが低消費電力で監視する起床通知用の信号.UEはLP-WUSを検出した場合にのみMR(*50参照)を起床させ,Paging(*15参照)や制御信号の監視など通常の受信処理へ移行することで,不要なMRの起床を抑制する.

02. サステナビリティ向け高度化技術の概要

2.1 ネットワークでの送信方式の改善による省電力化技術

近年の環境問題への関心の高まりに加え,多様なサービスの普及に伴うデータ通信量の急増,さらに無線ネットワークの高度化によるアンテナ数・帯域幅・周波数帯の拡大により,ネットワーク側の電力は増加の一途を辿っており,消費電力削減は通信事業者にとって喫緊の課題となっている.
こうした背景の下,3GPP Rel-18では,ネットワーク側の電力消費を抑制するNES技術が導入された.Rel-18では,RRC(Radio Resource Control)*9 CONNECTED*10(以下,CONNECTED)中のUEやUE個別の信号に対する省電力化を主眼に,データ送信時の空間電力制御やDRXなどの技術が仕様化された.これにより,通信品質を維持しつつ,トラフィック状況や無線チャネル状態に応じて省電力運用が可能となった.
さらに,Rel-19ではNESの適用対象が拡張され,より多様な運用シナリオにおいて省電力効果が得られるようになった.具体的には,SCell(Secondary Cell)*11におけるSSBやPCell(Primary Cell)*12でのSIB1のオンデマンド型の送信制御,セル共通信号の送信間隔の適応制御といった技術が導入された.これらの技術により,基地局は不要な信号送信や待受けを抑制し,より深いスリープ状態を長時間維持できる.結果として,環境負荷の低減と運用コストの最適化を両立する持続可能なネットワークの実現が期待される.

2.2 UEでの抜本的な受信方式の改善による省電力化技術

5Gシステムでは,モバイル通信に加えて多様な産業用途も想定されており,UEのエネルギー効率向上は重要な課題である.特に,IDLE*13/INACTIVE*14状態でのPaging*15監視やRRM(Radio Resource Management)測定*16,ならびにCONNECTED状態での制御信号監視はUEの待受時消費電力に大きく影響する.また,小型の二次電池やコイン電池で動作するセンサやウェアラブル機器ではより長い電池寿命が求められる.
この課題に対し,Rel-18ではLP-WURやLP-WUSが検討され,Rel-19において仕様化された.
Rel-19のLP-WUSは,低消費電力で信号を監視して,必要な場合にのみ通常の受信処理へ移行させる省電力化技術であり,IDLE/INACTIVE状態やCONNECTED状態の信号設計・手順・設定(同期用信号や測定負荷の緩和を含む)が仕様化された.これにより,Pagingや制御信号監視に伴う不要な受信動作を抑え,UEの省電力効果を高め,UE電池寿命の延伸によりユーザ体感の向上が期待される.

  1. RRC:無線ネットワークにおける無線リソースを制御するレイヤ3プロトコル.
  2. RRC CONNECTED:UEとネットワークの間で無線接続が確立され,データ送受信や制御信号監視を行う状態.
  3. SCell:CA(*20参照)において複数用いるキャリアの中で,PCell(*12参照)でないコンポーネントキャリアの総称.
  4. PCell:CA(*20参照)においてUE-ネットワーク間の接続性を担保するセル.
  5. IDLE:UEが無線接続を確立していない待受状態.ネットワークからのPaging(*15参照)を受信し,必要に応じて接続を開始する.
  6. INACTIVE:UEコンテキストを保持したまま無線接続を停止している待受状態.IDLEよりも再開が容易であり,必要時には短い手順で接続を再開できる.
  7. Paging:着信時に待受け在圏中のUEを呼び出す手順および信号.
  8. RRM測定:UEがセル選択・再選択,受信品質把握のために行う無線測定.従来は主受信機だけが担っていたが,Rel-19ではLP-SS(*54参照)を用いた低消費電力測定を活用することで,一部の測定頻度緩和や測定処理のLP-WURへのオフロードが可能となった.

03. ネットワーク消費電力削減の技術

前述した検討背景に基づき,サステナビリティ向け高度化技術の実現に向けて,Rel-19では以下の無線技術の検討や仕様化が行われた.

3.1 SCellにおけるオンデマンド型のSSB送信

(1)既存SSBの省電力化観点での課題
SSBはセルが周期的に送信する下りリンク*17の共通信号であり,UEのセル検出および時間・周波数同期*18の確立に用いられるとともに,セル品質やビーム品質の測定にも用いられるNR(New Radio)*19における基本的な信号である.
NRでは,通信容量の向上を目的として,複数の周波数チャネルを同時に利用するCA(Carrier Aggregation)*20が広く用いられる.NRの一般的なCA運用では,UEはPCellでRRC接続を確立した後,RRCシグナリング*21によりSCellが設定され,MAC(Medium Access Control)*22 CE(Control Element)*23による有効化手順を経てSCellを利用できる.
従来,SCellにおいてもSSBは常時周期的に送信されることを前提としていた.これはSCellの有効化時における時間・周波数同期の確立,および有効化後の同期維持・品質測定のためにSSBが必要とされるためである.しかしながら,この前提はSSBを定期的に送信し続ける必要があるため,基地局が送信を停止してスリープ状態に移行できる時間が限られ,省電力化の効果が制限されるという問題があった.Rel-15やRel-18では,SCellを運用する枠組みとして特定の条件下でSSBを送信しない仕組みが導入されたが,この方式はSSBを送信する他のセルを必要とし,かつ,そのセル間で周波数や配置関係に依存する制約が多く,適用可能な構成が限定的であった.
(2)オンデマンドSSB(OD-SSB:On-Demand SSB)のSCell向けの仕様化
Rel-19では,上記の課題を解決する技術として,SSBを常時・周期的に送信するのではなく,ネットワークがUEの状況に応じて必要なタイミングでのみSSB送信を有効化するOD-SSBがSCell向けに仕様化された.これにより,SSB送信が不要な期間は基地局の送信動作を停止することが可能となり,ネットワークの消費電力削減に貢献する.ただし,OD-SSBはCONNECTED状態のUEがCA構成下で利用するSCellのみに適用され,PCellへは適用されず,また同期ラスタ*24上のセル定義SSB*25としても使用されない.これは,UEがあらかじめ規定された20msという一定周期で送信されるセル定義SSBを前提としてセル探索を行うため,OD-SSBのように動的に有効化・無効化されるSSBをセル定義SSBとして使用した場合,既存UEを含むすべてのUEのセル探索動作に影響を及ぼす恐れがあるためである.
(3)OD-SSBの主な役割
OD-SSBが担う主な役割は,①SCell有効化前における測定機会の提供,②SCell有効化手順の成立性確保・高速化,③SCell有効化中における追加的な測定機会の提供の3点である.
①では,SCellがまだ有効化されていない段階において,ネットワークがどのSCellをUEに対して有効化すべきかを判断するために,OD-SSBを送信してUEに当該SCellの品質測定・報告を実施させることが可能である.
②では,SCell有効化に際してUEが時間・周波数同期の確立や受信電力制御を完了する必要があるが,OD-SSBをこのタイミングで集中的に送信することで,有効化手順の所要時間を短縮することができる.
③では,SCellが有効化された後においても,UEは時間・周波数同期の維持やビーム管理のためにSSBを継続的に受信する必要があり,ネットワークはSSBの送信を完全に停止することはできない.さらに,UEの移動や無線品質の変動によりネットワークが詳細な品質情報を必要と判断した場合には,通常の送信周期を上回る頻度でOD-SSBを送信し,UEに追加的な測定・報告を実施させることが可能である.
(4)SCell種別ごとの役割
OD-SSBは,従来の周期的なSSBが送信されないSCellと,周期SSBが送信されるSCellの双方に適用できる.前者は,図1に示すように,必要なタイミングにのみSSBを送信することで不要な送信動作を排除し,NESに直接寄与する.後者は,周期SSBを補完する形でOD-SSBを活用する運用が想定される.周期SSBの送信間隔が長い場合,UEが同期・測定機会を得るまでの待ち時間が増大し,SCell有効化やデータ通信の遅延につながる可能性があるが,OD-SSBを補助的に送信することでこうした遅延を抑制できる.
(5)送信停止
このように,OD-SSBはSCell有効化や測定といった特定の目的を達成するために送信される信号であり,これらの処理が完了した後はSSB送信を継続する必要はない.そのため,OD-SSBは目的に応じて送信を有効化した後,所要の同期・測定が成立した時点で送信を停止する運用が可能である.送信停止の方法には,明示的なMAC CEによる通知と,送信機会の個数をOD-SSB有効化時に通知する方式の2種類がある.後者では指定回数の送信が完了した時点で自動的に停止する.
さらに,送信の有効化・停止に加えて,OD-SSB送信が有効な状態においても,送信周期や送信ビームといった送信特性をダイナミックに変更できる.これらの制御はRRCシグナリングまたはMACシグナリングを通じてネットワークからUEへ通知される.

3.2 UE要求によるオンデマンド型のSIB1送信制御

(1)既存SIB1の省電力化観点での課題
SIB1はオペレータ識別子*26やセル選択条件,およびランダムアクセス手順*27に必要な基本情報を含み,UEがセルにキャンプ*28可能かどうかを判断するために不可欠なシステム情報である.UEがセルに接続する以前やIDLE/INACTIVE状態において参照されることから,従来仕様では基地局から周期的に送信される設計が採られてきた.
一方,NESの観点では,SIB1の周期送信はトラフィック量やUEの在圏状況に依存せず継続されるため,低負荷セルや低トラフィック時間帯においても基地局の送信動作を継続させる要因となる.このことは,基地局が送信を行わない連続した時間区間を確保することを困難にし,セルの深いスリープ状態への遷移を制約する課題につながる.
(2)OD-SIB1の導入
この課題に対処するため,Rel-19では,SIB1の送信を必要な場合に限定し,それ以外の期間では送信を停止するオンデマンドSIB1(OD-SIB1:On-Demand SIB1)が導入された.OD-SIB1では,図1(Pcell#2での動作例)に示すように,UEがSIB1を必要とするタイミングで,ネットワークに対してWUSを用いて送信要求を行い,基地局は当該要求に応答して限られた期間内のみSIB1を送信することで,SIB1の常時送信を回避し,NES効果の向上を図る.
OD-SIB1が適用されるセルはNESセル(Network Energy Saving cell)と呼ばれ,SIB1の常時送信を停止することでNESを実現する.ただし,NESセルの運用にあたっては,従来の周期SIB1送信を行うアンカーセルとの連携を前提とした設計が必要となる.その理由が2点ある.
・第1はSIB1要求のための事前構成情報の取得に関する問題である.UEがNESセルに対してSIB1の送信を要求するためには,要求信号の送信方法や応答の監視条件といった構成情報を事前に取得している必要がある.しかし,IDLE状態のUEがいつNESセルにアクセスするかはネットワーク側からは事前に把握できないため,これらの構成情報をNESセル自身から常時提供しようとすれば,結果として周期的な送信が必要となる.これはSIB1送信を抑制するという省電力の目的と矛盾する.
・第2はレガシーUEへのアクセス保証に関する問題である.OD-SIB1に非対応のレガシーUEはSIB1を取得できないNESセルにキャンプすることができない.ネットワーク運用上,あるエリア内のすべてのUEに対して少なくとも1つのセルがアクセス可能であることを保証する必要があるため,NESセルのみでエリアを構成することは許容されない.

これら2点の制約を踏まえ,OD-SIB1では,周期的にSIB1を送信するアンカーセルの存在を前提とした設計が採用されている.UEはまずアンカーセルにキャンプし,そこからNESセルへのSIB1要求に必要な構成情報を取得した上で,必要に応じてNESセルのSIB1を要求・取得する.なお,NESセルはOD-SIB1に非対応のレガシーUEに対してはセルへのアクセス禁止(cell barred)として動作するよう設計されている.
以上を踏まえ,UEがOD-SIB1を取得するまでの基本手順は,①アンカーセルからの上りSIB1要求信号(UL WUS:UpLink Wake-Up Signal)構成取得,②NESセルへのUL WUS送信,③ランダムアクセス応答(RAR:Random Access Response)*29受信,④OD-SIB1受信の4段階で構成される.
まず,UEはキャンプ中のアンカーセルからNESセルに対するUL WUS構成を取得する.この構成には,UL WUSとして使用するPRACH(Physical Random Access CHannel)*30リソース,RARの監視条件,およびOD-SIB1受信に関するパラメータが含まれる.次に,UEは取得した構成に従いUL WUSとしてPRACHプリアンブル*31をNESセルへ送信し,SIB1の送信を要求する.NESセルはこの要求を受信するとRARをUEへ返送する.UEはRARを受信することで要求が受理されたことを確認するとともに,後続のOD-SIB1監視の基準タイミングを確定する.これにより,UEが応答を無限定に待ち続けることなくOD-SIB1受信のための開始タイミングと継続時間が一意に定まる.最後に,UEは定義された時間窓内で制御チャネルを監視し,NESセルから送信されるOD-SIB1を受信する.この一連の手順により,SIB1を基地局から常時送信することなくUEが必要時にSIB1を取得できる運用が実現される.

3.3 セル共通信号の状況に応じた適応技術

セル共通チャネルおよび信号は,初期アクセスやシステム情報取得,Pagingなど,UEがセルに接続する以前やIDLE状態において利用される制御情報を提供するものであり,セル内のすべてのUEが共通の前提として参照する必要がある.これらの信号はIDLE状態のUEを含む不特定多数のUEを対象とすることから,従来仕様ではその設定が頻繁に変更されないことを前提とした準静的な設計が採られており,設定の変更にはSIB1の更新またはRRC再設定が必要であった.
一方で,NESの検討を通じて,実際の商用ネットワークでは低負荷状態のセルや時間帯が相当程度存在することが確認されており,その観点から,共通信号の常時送受信動作が改善すべき課題として認識されるようになった.これらの共通信号はトラフィックの有無に関わらず周期的に送受信されるため,基地局が送受信を行わない連続した時間区間を確保しにくく,基地局の深いスリープ状態への遷移を制約する.加えて,設定変更にRRC手続きが必要な準静的な設計では,トラフィック状況に応じた迅速かつ柔軟な制御が困難であった.
こうした背景の下,Rel-19では後方互換性を維持しつつ,状況に応じて共通信号の送受信動作を適応的に制御する拡張が仕様化された.具体的には,SCellにおけるSSB周期の動的変更,PRACH受信機会の動的な提供制御,およびPaging送信機会の時間的集約が導入されており,共通信号に起因する常時送受信動作を抑制することで基地局を深いスリープ状態に遷移させ,NES効果の向上を図る.以下,各技術について説明する.
(1)SSB周期の動的適応
従来仕様において,SCellのSSB周期はRRC再設定によってのみ変更可能なセル共通パラメータとして扱われており,当該セルを利用するすべてのUEへの通知が必要となるため,運用状況に応じてSSB周期を動的に切り替えることはできなかった.
一方,SSB周期に求められる要件は状況によって異なる.SCell有効化を迅速に行う局面では短周期が有利であるのに対し,時間・周波数同期や受信電力制御の維持が主目的の局面では長周期でも十分に成立する場合がある.また,低速移動であるUEが主体となる環境では,短周期SSBを常時送信し続ける必要性が相対的に低い.
この課題に対応するため,Rel-19ではSSBの時間領域適応が導入され,SCellのSSB送信周期をDCI(Downlink Control Information)*32によって動的に切り替えることが可能となった.具体的には,UEはRRCにより複数のSSB周期候補(デフォルト周期に加え,最大2つの追加周期候補)を事前に設定され,ネットワークはDCI format 2-9*33によるグループ共通DCI*34で適用する周期を指示する.SSBはセル共通信号であるため,周期切替の指示は当該セルに接続するすべてのUEに対して効率的に通知する必要があり,グループ共通DCIであるDCI format 2-9がその手段として採用されている.
(2)PRACH機会の動的適応制御
PRACHは,UEがネットワークに対して能動的にアクセス要求を行うための上り共通チャネルであり,セル初期接続,接続再開,ハンドオーバ*35時の上り同期確立などの手続きに用いられる.ネットワークはRO(RACH Occasion)*36を事前に設定し,UEは所定のROにおいてPRACHを送信する.
従来,ROはSIB1またはRRC専用シグナリングにより準静的に提供されており,トラフィック状況に応じた動的な変更には対応していなかった.このため,ROの周期はそのセルにおいて想定されるランダムアクセス試行数と許容遅延を踏まえて設計されるものの,実際のアクセス需要が低い状況でも,ネットワークはROの周期に合わせて受信動作を継続する必要があり,不要なエネルギー消費につながっていた.
Rel-19では,PRACH機会の動的適応として,従来のRO(以下,レガシーRO)に加えて追加ROを導入し,必要に応じて追加ROを動的に有効化できる枠組みが仕様化された(図2).省電力を念頭に置いた運用例として,レガシーROを長周期(例:160ms)で構成した上で,アクセス需要が一時的に高まる局面に限り,追加ROを有効化することが考えられる.このような運用により,需要に応じたPRACH収容容量の拡張と,需要が低い局面での不要な受信動作の抑制を両立できる.追加ROの設定はSIB1で通知され,レガシーROとは独立して時間・周波数リソースの位置や周期を設定できる.また,追加ROの有効化をより細かく制御する手段としてPRACHマスクが導入される.マスクはSIB1で準静的に与えられ,追加ROを一括して有効化するのではなく,必要な期間や範囲に限定して追加ROを間引くことで,不要な基地局の受信機会を抑制しつつROパターンの柔軟性を確保することを目的とする.
本方式は,衝突型ランダムアクセス(CBRA:Contention-Based Random Access)*37と非衝突型ランダムアクセス(CFRA:Contention-Free Random Access)*38の双方に適用可能であり,追加ROの可用性通知は用途に応じて規定されている.
CBRAでは,IDLE UEなどはUE専用プリアンブルを割り当てられず,共有プリアンブルの競合により衝突が生じ得るため,アクセス集中時に追加ROを提供して収容容量を増やし,遅延増大の抑制を狙う.このため,IDLE/INACTIVEを含む広いUE状態に対して一斉に可用性を通知できる手段として,P-RNTI(Paging-Radio Network Temporary Identifier)*39でCRC(Cyclic Redundancy Check)スクランブル*40されたDCI format 1-0*41のshort message*42を拡張し,short message内の1ビットで追加ROの可用性などを通知する.
CFRAでは主としてCONNECTED UEを対象に,より小さい遅延でPRACH送信可能とする観点で追加ROを用いる.ネットワークが特定のCONNECTED UEに対してRACH実行を要求するPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)*43 order*44においては,C-RNTI(Cell-RNTI)*45でCRCスクランブルされたDCI format 1-0に1ビットの新規フィールドを追加し,追加PRACHリソースの可用性を通知する.
(3)Paging機会の時間的集約
Pagingは主にIDLE状態のUEに対して着信や制御情報の存在を通知するための下り共通信号であり,ネットワークからUEへの接続再開を促す役割を担う.Pagingの送信タイミングはPF(Paging Frame)*46とPO(Paging Occasion)*47という2つの時間単位で定義される.PFはPagingが送信され得る無線フレーム*48,POはそのPF内でPagingが送信され得る具体的なタイミングを指す.UEはSIB1で提供されるPagingパラメータと自身のUE IDに基づいて自身に対応するPFやPOを算出し,当該POのみを監視する.UE IDはコアネットワーク*49によって割り当てられる識別子でありUEごとに異なる値をもつ.この既存の設計の狙いは,UE IDが異なれば対応するPF/POも異なるため,多数のUEのPaging監視タイミングが時間軸上で自然に分散し,特定のタイミングへのアクセス集中を回避できる点にある.しかし,この分散配置はNESの観点では逆効果となる.低トラフィック時においてPaging対象のUEがほとんど存在しない場合でも,UEごとに異なるPF/POが時間軸上の広い範囲にわたって出現し続けるため,ネットワークはPagingを送信しない連続した時間区間を確保しにくい.これがセルの長時間スリープを阻害する要因である.
この課題に対し,Rel-19で導入されたPaging機会の時間的集約では,PF間隔を拡張することでPaging送信の平均頻度を低減しつつ,1つのPF内に配置可能なPO数の上限も拡張することで,Paging容量の低下を補償する設計が採用されている.これにより,図2に示すように,Pagingの送信機会を時間軸上に集約し,ネットワークが送信を行わない連続した時間区間を拡大することが可能となる.

  1. 下りリンク:基地局からUE方向への情報の流れ.
  2. 周波数同期:キャリアの中心周波数の認識が基地局とUE間で一致している状態.
  3. NR:5G向けに策定された無線方式規格.4Gと比較して高い周波数帯(例えば,3.7GHz帯や4.5GHz帯,28GHz帯)などを活用した通信の高速・大容量化や,高度化されたIoTの実現を目的とした低遅延・高信頼な通信を可能にする.
  4. CA:1つの基地局でサポートされる複数のキャリアを用いて同時に送受信を行うことにより,高速伝送を実現する技術.
  5. RRCシグナリング:無線ネットワークにおける無線リソースを制御するレイヤ3プロトコル.
  6. MAC:レイヤ2におけるサブレイヤの1つで,無線リソース割当てやHARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)再送制御を行うプロトコル.
  7. MAC CE:MAC層で生成される制御信号.
  8. 同期ラスタ:UEがセル探索の際にSSBを検索する周波数位置の候補セット.
  9. セル定義SSB:SIBの送信と関連付けられたSSB.同期ラスタ上に配置することでPCellを構成することができる.
  10. オペレータ識別子:移動通信ネットワークを一意に識別するための番号であり,国や事業者を示すコードから構成される.UEはこの識別子を基に接続先の事業者ネットワークを認識する.
  11. ランダムアクセス手順:UEが発信時やハンドオーバ(*35参照)などにより,基地局と接続を確立する場合や再同期を行う場合に行う手順.
  12. キャンプ:UEが特定のセルを在圏セルとして選択し,そのセルからのPaging監視が可能な状態に移行すること.
  13. ランダムアクセス応答(RAR):ランダムアクセスにおいて基地局がUEからのプリアンブル(*31参照)送信検出に応答して送信する一時的なUE識別子や,以降のランダムアクセスにおけるリソース割当てなどの情報.
  14. PRACH:UEが初期アクセスやハンドオーバ(*35参照)などによりセルと接続確立を行う場合などに用いる物理チャネル.
  15. プリアンブル:UEが初期接続などのランダムアクセス制御を行う際に,最初に送信する信号.
  16. DCI:下り制御情報.各ユーザがデータを復調するために必要なスケジューリング情報,データ変調,およびチャネル符号化率などを含む下りリンクで送信する制御信号のこと.
  17. DCI format 2-9:グループ共通DCI(*34参照)のフォーマットの1つ.Rel-18のNESに関連する機能を通知するために導入された.
  18. グループ共通DCI:セル内の複数のUEに対して一括して指示を行うDCI.UE個別のRNTIではなく,グループ共通のRNTIによりスクランブルされたPDCCH(*43参照)で送信される.
  19. ハンドオーバ:通信中のUEが移動に伴いセルをまたがる際,通信を継続させながら基地局を切り替える技術.
  20. RO:PRACHの送信向けに設定される物理リソース.
  21. 衝突型ランダムアクセス(CBRA):UEが共有プリアンブルの中からランダムに選択したプリアンブルを用いてランダムアクセスを行う方式.複数のUEが同一プリアンブルを送信した場合に衝突が生じる可能性がある.
  22. 非衝突型ランダムアクセス(CFRA):ネットワークがUEに対して専用のプリアンブルを割当て,そのプリアンブルを用いてランダムアクセスを行う方式.
  23. P-RNTI:主にPagingの送信に用いられるセル共通の無線ネットワーク一時識別子.
  24. CRCスクランブル:PDCCH(*43参照)で送信する制御情報のCRCビットに対して,RNTIの値を用いて符号系列を乗算する処理によるランダム化を施すこと.受信側のUEは自身のRNTIを用いてスクランブルを解除し,CRCが一致した場合に当該PDCCHが自身宛であると判断する.CRCは巡回冗長検査を意味する.
  25. DCI format 1-0:PDSCHのスケジューリングに用いられるDCIフォーマットの1つ.P-RNTIやC-RNTI(*45参照)など複数のRNTIと組み合わせて使用され,Paging通知やUE個別のスケジューリング指示などに用いられる.
  26. short message:P-RNTIでCRCスクランブルされたDCI format 1-0に含まれる短い制御信号.システム情報の変更通知やETWS/CMASなどの緊急通報の存在通知などに用いられる.
  27. PDCCH:下りリンクにおける物理レイヤの制御チャネル.
  28. PDCCH order:ネットワークがCONNECTED状態の特定のUEに対してランダムアクセス手順の実行を指示するDCI.
  29. C-RNTI:CONNECTED状態においてUEに割り当てられるセル内固有の一時識別子.
  30. PF:Paging信号が送信され得る無線フレーム(*48参照).
  31. PO:PF内においてPaging信号が送信され得るPDCCHの機会.
  32. 無線フレーム:無線区間でデータ伝送を行う単位.1個の無線フレームは,時間軸上で複数のスロット(またはサブフレーム)によって構成され,各スロットは時間軸上で複数のシンボルによって構成される.
  33. コアネットワーク:ゲートウェイ装置,位置管理装置,加入者情報管理装置などで構成されるネットワーク.移動通信システムを構成するネットワークのコア部分.UEは無線基地局などで構成される無線アクセスネットワークを経由してコアネットワークとの通信を行う.

04. UE消費電力削減の技術

前述した検討背景に基づき,UEの消費電力削減の実現に向けて,Rel-19では以下の無線技術の検討や仕様化が行われた.

4.1 LP-WUSを用いたUE省電力化の設計方針

(1)設計方針と前提条件
UEのIDLE/INACTIVE状態やCONNECTED状態における消費電力を抜本的に削減するため,Rel-19では,LP-WURと,それが受信するLP-WUSを導入する設計が採用された.LP-WURは主受信機(MR:Main Radio)*50と比較して消費電力が大幅に小さい受信機であり,これを低消費電力で監視し,検出した場合にのみMRを起床させ,通常の受信処理へ移行させる.これにより,IDLE/INACTIVE状態やRRC接続維持におけるUE消費電力の削減を図る.
LP-WURの回路構成を簡素化し低消費電力動作を実現するため,LP-WUSではOOK(On-Off Keying)*51を基本波形として適用している(図3).OOKベースLP-WURでは,包絡線*52検波によりLP-WUSを検出するため,SSBのようなOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)*53信号を直接受信することはできない.このため,時間・周波数同期を低消費電力で実現する手段として,低消費電力同期信号(LP-SS:Low-Power Synchronization Signal)*54が導入された.
LP-WURがLP-WUSを監視している間,MRはスリープ状態へ遷移可能となる.これにより,Paging監視や制御信号監視に起因する不要なMRの起床を抑制し,UEのIDLE/INACTIVE時やCONNECTED状態における消費電力を削減することができる.
さらに,検出性能の向上を目的として,相関検出*55によりLP-WUSを検出するOFDMベースLP-WURも想定されている.この場合,包絡線検波による受信よりも早期に受信動作を終了できることを想定して,相関検出に適した重畳OFDM*56系列をLP-WUSやLP-SSに適用することもできる.
LP-WUSはIDLE/INACTIVEやCONNECTEDの両状態で共通に適用可能な設計である.特にIDLE/INACTIVEでは,LP-WUR方式(OOKベース/OFDMベース)の違いによらず,同一の情報がUEに伝達されることを前提としている.
また,LP-WUSやLP-SSは,UEが低消費電力で信号を検出できることを前提とした信号であると同時に,Paging用途や測定用途において十分な到達性を確保する必要がある.そのため,Rel-19では,LP-WUS/LP-SSが初期アクセス手順においてUEから基地局へ送信されるメッセージ3 PUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)*57と同等のカバレッジ性能*58を有することを信号設計上の目標としている.
(2)LP-WUSの信号設計
LP-WUSはOOKを基本波形とし,限られた送信機会で効率的に情報を伝達するため,1つのOFDMシンボル*59を複数のチップに分割するチップレート(M値)を導入している(図3).M値はデータレートと同期・検出性能とのトレードオフを考慮して複数候補が定義されており,周波数帯やサブキャリア間隔(SCS:SubCarrier Spacing)*60,RRC状態に応じて使用可能な値が規定されている(M=1,2,4).この設計により,運用シナリオに応じた柔軟な信号構成が可能となっている.
本稿では,LP-WUSのOOK構成としてOOK-1およびOOK-4という2つの構成を扱う.OOK-1は,1つのOFDMシンボル全体を1つのON/OFF単位として扱う方式であり,サブキャリアのON/OFFにより1ビットを表現する.一方,OOK-4は,1つのOFDMシンボルを1,2,4のいずれかのチップに分割してON/OFF系列を構成する方式であり,時間領域で生成した信号をDFT(Discrete Fourier Transform)/LS(Least Squares)*61により変換して波形を生成する点がOOK-1と異なる.ただし,OOK-4においてM=1の場合は,1つのOFDMシンボル全体を1つのON/OFF単位として扱うため,DFT/LSの有無を除けばOOK-1と同等の構成となる.このため,OOK-1は,OOK-4におけるM=1の場合の特殊ケースとみなすことができる.
LP-WUSはUEの起床対象を識別するための情報をコードポイントとして伝達し,コードポイントはUEのサブグループID*62に対応付けられる.UEは,自身が属するサブグループに対応するコードポイントのみを検出対象とすることで,不要な起床を抑制する.コードポイント数は最大32であり,1回のLP-WUS送信で最大5ビット相当の情報を伝達できる.
LP-WUSでは,図4に示すように,チャネル符号化は冗長性確保のためにReed-Muller符号化*63やレートマッチング*64を適用し,さらにマンチェスター符号化*65を付加する.マンチェスター符号化は電力密度の平準化とOOKベースLP-WURにおける包絡線検波に適した信号遷移特性の確保を目的としている.一方で,LP-WUSにはCRCは適用されない.
重畳OFDMでは,情報ビット列を複数の部分に分割し,それぞれをOOKの各ONチップにおいて選択される系列に対応付けることで情報を表現する.1つのONチップで選択可能な系列数に応じて表現可能なビット数の整数倍とならない場合は,先頭側に0を補ってビット列を整形する.図5に重畳OFDMによる情報マッピング例を示す.
このように,重畳OFDMを用いることで,OOKのON/OFFパターンのみで表現する場合と比較して,ONチップ上で選択する系列によってより多くの情報を表現することができる.OFDMベースLP-WURにおいては相関検出を用いることで,受信動作の早期終了を可能とする点に特徴がある.
重畳OFDMに用いる候補系列数は,M値やRRC状態に応じて上限が定められており,候補系列はZC(Zadoff-Chu)系列*66を基に生成される.同一ルート*67からはサイクリックシフト*68により複数の系列を構成でき,さらに,ルートを切り替えることで異なる系列群を構成することができる.このように,重畳OFDMでは,低消費電力受信を前提としつつ,情報表現能力と検出性能の両立を図るための信号設計が採用されている.
(3)LP-SSの信号設計
LP-SSは,LP-WURにおいて同期やRRM測定を実施するために導入された低消費電力同期信号であり,OOKのON/OFFパターンをセルごとに設定する設計となっている.LP-SSは,LP-WUSと同様に低消費電力で検出可能であることを前提としつつ,必要な同期精度や測定精度をUEが確保できるよう設計されている.
LP-SSのチップレート(M値)は同期性能の確保とLP-WUSの信号設計との整合が考慮されており,FR1(Frequency Range 1)*69/FR2*70の双方において複数の候補(M=1,2,4)が定義されている.また,LP-SSの2値系列長*71や送信周期についても,同期性能向上とオーバヘッド抑制とのトレードオフに基づき複数の候補がサポートされている.
さらに,LP-SSは必要に応じてOFDM系列の重畳を可能としており,OOKベースLP-WURやOFDMベースLP-WURのいずれにおいても受信可能な設計となっている.図6にLP-SS系列構造例を示す.
LP-SSを用いたRRM測定では,LP-RSRP(LP-Reference Signal Received Power)*72,LP-RSRQ(LP-Reference Signal Received Quality)*73,LP-RSSI(LP-Received Signal Strength Indicator)*74といった低消費電力測定指標が定義されている.これらの指標はIDLE/INACTIVE状態に適用され,MRによる従来の測定を補完する役割を担う.具体的には,LP-SSによる測定結果を活用することで,MRによる測定頻度の緩和や一部測定処理のLP-WURへのオフロードが可能となり,IDLE/INACTIVE状態におけるUE消費電力の削減に寄与する.図7に測定指標の概念を示す.
(4)時間・周波数リソース配置
周波数領域*75において,LP-WUS/LP-SSは11PRB(Physical Resource Block)*76の帯域を基本とし,キャリア境界*77を基準とした開始RBインデックスを指定する(0~263)(図8).CONNECTED状態では,基本機能としてアクティブDL BWP(DownLink BandWidth Part)*78*79内での配置を前提とするが,UEの能力に応じて,同一キャリア内でアクティブDL BWP外への配置も可能である.IDLE/INACTIVE状態では,Pagingを受信する初期DL BWP外への配置は許容されるが,いずれの場合も同一キャリア内に限定される.
時間領域において,LP-WUSは複数スロット*80にまたがる非連続なOFDMシンボル配置を取り得る一方,LP-SSは短いシンボル数で周期的に送信される設計である.
また,CONNECTED状態では,LP-WUSのSCSはアクティブDL BWPと同一とする.IDLE/INACTIVE状態では,関連付けられたセル定義SSBと初期DL BWPが同一キャリア上にあり,かつ同一SCSである場合に限り,LP-WUS/LP-SSは関連セル定義SSBと同一のSCSを用いる.関連セル定義SSBと初期DL BWPのSCSが異なる場合にはLP-WUSは適用できない.

4.2 IDLE/INACTIVE状態のUE消費電力削減

IDLE/INACTIVE状態では,UEはPagingの監視やRRM測定をそれぞれ定期的に行う必要があり,これらの動作を行うためにUEは定期的にスリープ状態を解除する必要がある.このことがIDLE/INACTIVE状態におけるUEの消費電力の主な要因となっている.
UEの消費電力を改善するための従来の技術としては,eDRX(extended Discontinuous Reception)やPEI(Paging Early Indication)が仕様化されている.LTEで仕様化されたeDRXはPaging cycle*81を大幅に延長することでUEのスリープ時間を増やす技術であるが,Paging受信の遅延増大が課題となる.また,Rel-17で導入されたPEIはPagingの直前に監視の要否を通知する方式であるが,PEI自体を受信するためにUEはスリープ状態を解除する必要があるため,UEの省電力効果には限界がある.さらに,これらの方式では依然として定期的にRRM測定を行う必要があるため,測定に伴うスリープ解除を完全に抑制することはできない.
これらの課題に対し,有効な手段となるのがLP-WUSやLP-WURの機能である.MRよりも大幅に消費電力が小さいLP-WURが,Paging受信の必要性を通知するLP-WUSの監視やRRMの測定を代替することにより,MRのスリープ時間を大幅に長くすることができる.また,LP-WUSはPaging cycle自体を変更することなく省電力化を実現するため,eDRXと比較してPaging受信の遅延を抑制できることが利点である.
(1)Paging監視におけるUE観点動作
LP-WUSによってUEへPaging受信の必要性を通知するために,図9のようにLP-WUSはPagingの前に送信される.UEはLP-WURでLP-WUSを監視し,自分宛のLP-WUSを検出しなかった場合,その後のPagingを監視する必要がなく,MRのスリープ状態を継続できる.自分宛のLP-WUSを検出した場合,MRを起床させ,その後のPagingを受信する.
前述のLP-WUSによるPagingの早期通知はUEのサブグループごとに行われる.サブグループはコアネットワークによる割当て,もしくはUE IDによる割当てで行われる.サブグループは前述のコードポイントと呼ばれる情報と紐づいていて,UEは受信したLP-WUSに自分が属するサブグループと紐づくコードポイントが含まれている場合,自分宛に通知が来たと判断し,その後のPaging受信を行う.
(2)IDLE/INACTIVE時のPagingにおけるネットワーク動作とサブグループ
IDLE状態またはINACTIVE状態のUEに対してPagingを行う際,基地局は受け取ったPagingに含まれる情報に基づいて,LP-WUSを送信する必要があるか否か,およびUEに対応するサブグループを判断する.IDLE状態のUEに対しては,AMF(Access and Mobility Management Function)*82から基地局へPagingが送られる.INACTIVE状態のUEに対しては,最後にUEが在圏した基地局配下でUEからPagingに対する応答がない場合,隣接基地局へRAN Paging*83が送られる.
サブグループがコアネットワークにおいて割り当てられる場合,PagingまたはRAN Pagingに,その割り当てられたサブグループを含めることで,AMFはこれを基地局へ通知する.サブグループがUE IDに基づいて割り当てられる場合,Pagingに含まれる既存の5G-S-TMSI(5G-S-Temporary Mobile Subscription Identifier)*84,または,RAN Pagingに含まれる5G-S-TMSIの桁数を削減して縮めたIDがUE IDとして使用される.
また,UEが初めにAMFに接続する際,AMFはNAS(Non-Access Stratum)*85メッセージでLP-WUSの無効化をUEへ指示することができる.この指示がない場合,IDLE状態またはINACTIVE状態のUEは自動的にLP-WUSを有効化し,使用可能な状況においては報知情報*86に基づき自動的に省電力状態へ遷移する.以降で,サブグループ方法について具体的に解説する.
(a)サブグループの役割と種類
前述のとおり,サブグループはLP-WUSによって起床するUEを示すコードポイントに対応するものである.LP-WUSを実際にPaging対象となっているUEのみに送ることができれば,必要があるUEのみを起床させることができるが,UEを識別するためのIDはLP-WUSに乗せて送信するには情報量が大きすぎるため難しい.UEをいくつかのグループに分けグループごとに起床させることで,LP-WUSで送信する情報量を減らしつつ,必要のないUEを起床させてしまう確率をできる限り低減させることがサブグループを定義する目的である.
サブグループはコアネットワークによって割り当てられるもの,UE IDに基づいてUE・基地局それぞれで計算されるもの,すべてのUEを一斉に起床させるために定義された特別なコードポイント(共通コードポイントと呼ばれる)に対応するものの3種類に分類される.この3種類のサブグループがどのように割り当てられても,サブグループの最大数は常に32個以下である.このサブグループの最大数はPEIにおける8個よりも増加しているが,これはLP-WUS信号設計が改善したことで,より多くの情報を早期通知で送ることができるようになったためである.
IDLE/INACTIVE時のUEはSIB1にて報知される,そのセルのLP-WUS対応可否と使用可能なサブグループの総数,UE IDに基づく割当てで使用できるサブグループの総数,POとLO(LP-WUS Occasion)*87の対応関係(PO-to-LO mapping*88)に基づき,自身に対応するサブグループを決定する.なお,LP-WUSをサポートするUEは,少なくともUE IDに基づくサブグループと,共通コードポイントに対応する必要があり,コアネットワークによるサブグループの割当てはオプショナル機能である.
(b)コアネットワークによるサブグループの割当て
あるUEに対するサブグループについては,初めにUEがコアネットワークへ接続した際にAMFがUEに対して割り当てる.AMFは事前に,そのネットワークで使用可能なサブグループの総数を考慮しつつ,その範囲内でUEの特性に基づきサブグループの割当てを行う.
(c)UE IDに基づくサブグループの割当て
あるUEに対するサブグループは,前述したUE IDと,そのセルでUE IDに基づく割当てに使用可能なサブグループの総数を用いて,UEとネットワークのそれぞれで算出される.使用可能なUE IDに基づくサブグループの総数でUE IDを剰余演算したものがそのUEのサブグループとなるため,これはランダムにUEに割り当てられるサブグループであるといえる.また,PEIなどにおける他のUEのグルーピングと完全に直交した形でLP-WUSのためのsubgroup IDを割り当てることができるため,他のUE消費電力削減機能と併用した場合であっても,サブグルーピングによる不必要な起床の確率を低減することができる.ただし,コアネットワークによりサブグループがUEに割り当てられており,かつそのセルがコアネットワークによりサブグループに対応している場合,UE IDに基づくサブグループはそのUEに対して使用されない.
(3)RRM measurementの緩和およびRRM measurementのオフロード
IDLE/INACTIVE状態では,Paging受信やセル選択・再選択を目的として,UEは継続的に無線環境の監視や測定(RRM measurement)を実施している.これらの測定処理はMRを用いて行われるため,IDLE/INACTIVE状態においてもMRの起床が頻発し,UE消費電力の増大に寄与してしまう要因となっていた.
この課題に対処するために,Rel-19では,LP-SSを用いた低消費電力測定結果を活用するRRM measurement relaxationやRRM measurement offloadingが導入された.これらはIDLE/INACTIVE状態におけるMRの起床頻度を低減し,UE消費電力の削減を図ることを目的としている.
RRM measurement relaxationは,LP-SSによる低消費電力測定結果を従来のMRによる測定結果と組み合わせて活用することで,MRによる高精度測定の実施頻度を低減する考え方である.例えば,セル品質が安定している場合には,MR測定の周期を延ばすことが可能となり,IDLE/INACTIVE状態におけるMRの起床頻度を抑制できる.
一方,RRM measurement offloadingは,Serving cell*89に対するRRM測定を対象として,従来MRが担っていた測定処理の一部をLP-WUR側に委ねる考え方である.LP-SSを用いた同期や受信品質測定により,Serving cellの基本的な品質把握を低消費電力で実施し,MRはセル再選択など,より高精度な測定や判断が必要な場面でのみ起床する.このように,測定処理を段階的に分担することで,IDLE/INACTIVE状態におけるRRM測定の電力効率が向上する.
これらのRRM measurement relaxationおよびoffloadingは従来のRRM動作を置き換えるものではなく,低消費電力測定と従来測定を補完的に組み合わせる枠組みとして設計されている.その結果,無線環境の変化に適切に対応しつつ,IDLE/INACTIVE状態におけるUE消費電力の削減と通信品質の維持を両立できる.

4.3 CONNECTED状態のUE消費電力削減

CONNECTED状態においては,DCIを受信するためのPDCCH監視がUE消費電力に大きく影響する.従来はDRX動作に基づき,UEが一定周期でMRを起床させてPDCCHを監視する方式が採用されてきたが,制御情報が存在しない場合でも監視が行われるため,消費電力の観点では非効率な動作となる場合があった.
この課題に対し3GPP Rel-19では,LP-WUSを用いることでPDCCH監視の必要性を事前に通知し,必要な場合にのみMRを起床させる新たな枠組みとして以下の2つの方式が仕様化された.
(1)LP-WUSとDRXを併用したCONNECTED状態の省電力化方式
1つ目の方式では,UEに設定されるDRXに基づくPDCCH監視期間に対して,PDCCH監視の必要性を事前に通知する新たな枠組みを提供する.図10に示すように,ネットワークはLP-WUSを用いて,次に到来するDRX周期におけるPDCCH監視期間において特定のUEまたはUEサブグループに対する制御情報の有無を通知する.UEはLP-WURによりLP-WUSを低消費電力で監視し,通知を受信した場合にのみ,当該PDCCH監視期間においてMRを起床させてPDCCH監視を実施する.一方,LP-WUSが受信されない場合には,当該期間であってもMRの起床を抑制しPDCCH監視を省略することができる.
従来のDRXでは,MRによる監視を前提としていたのに対しLP-WUSを用いることで,監視動作の段階化と低消費電力化が実現される.これにより,CONNECTED状態においても,通信品質を維持しつつUE消費電力をさらに削減できる.
(2)LP-WUSのみを用いたCONNECTED状態の省電力化方式
2つ目の方式では,UEに設定されるDRXに紐づくPDCCH監視期間とは別に,新たにLP-WUS用のPDCCH監視期間が設定される.基本的な設定やコンセプトは1つ目の方式と同じで,図11に示すようにLP-WUS用の新たなPDCCH監視期間における制御情報の有無が事前にLP-WUSによって通知される.UEはLP-WUSの情報に基づき,その後のPDCCH監視の実施有無を判断できる.
1つ目の方式との違いとしては,LP-WUSの送信周期がDRXの周期に依存しない点が挙げられる.1つ目の方式では,設計上DRXに紐づくPDCCH監視期間の周期とLP-WUSの周期が同じになるが,2つ目の方式では,LP-WUSの周期は新たなPDCCH監視期間の周期と同じになる(図11)ため,DRXの設定に依存しない周期の設定が可能となる.これにより,LP-WUSの長周期化による消費電力のさらなる削減や短周期化による制御信号受信の遅延低減など,UEのユースケースに合わせた運用が可能となる.一方で,1つ目の方式は既存のDRXの設定を利用できるため,追加で必要な設定が少なく,ネットワーク側およびUE側の実装や運用がより簡単になる.

  1. 主受信機(MR):通常のNR信号やチャネル(SSB,PDCCH,PDSCHなど)の送受信を担う主受信機/主無線部を指す.LP-WURがLP-WUSを低消費電力で監視することで,MRは必要時のみ起床して通常の受信処理を行う.
  2. OOK:信号の有無(ON/OFF)で情報を表す変調方式.受信側では位相や周波数の厳密な復調を行わず,受信電力の大小を検出するエンベロープ検波で受信できるため,低消費電力受信機に適した方式である.OOK-1/OOK-4という2つの構成方法がある.
  3. 包絡線:高周波無線信号の振幅変動を表す曲線.
  4. OFDM:デジタル変調方式の1つで,情報を複数の直交する搬送波に分割して並列伝送する方式.高い周波数利用効率での伝送が可能.
  5. 低消費電力同期信号(LP-SS):LP-WUSを受信するUEが,低消費電力で時間・周波数同期を取得または補助するために用いる同期信号.LP-WUS監視前の同期精度を確保し,メイン受信機の起動を抑えながらLP-WUSの検出を可能にする.
  6. 相関検出:受信信号と既知の参照系列との類似度を計算し,所定のしきい値を超えた場合に信号を検出する方式.LP-SSやLP-WUSでは,あらかじめ定義された系列またはON/OFFパターンとの相関を用いることで,低消費電力受信機でも信号の有無やタイミングを判定しやすくする.
  7. 重畳OFDM:LP-WUSやLP-SSにおいて,OOKのONチップ上にOFDM系列を重ねて送信する方式.OOKのON/OFFパターンに加えて,ONチップ上で選択する系列によって追加の情報を表現できる.また,OFDMベースLP-WURでは,相関検出を用いた効率的な受信や早期終了に活用できる.
  8. メッセージ3 PUSCH:ランダムアクセス手順(4ステップ型)における第3のメッセージ(メッセージ3)として送信される上りリンクデータ共有チャネル.UEはMsg2(RAR)で受信したスケジューリング情報に基づきMsg3 PUSCHを送信し,RRC接続要求などの制御情報をネットワークへ通知する.
  9. カバレッジ性能:所定の受信品質で通信可能なエリアの広さや到達性を表す指標.
  10. OFDMシンボル:伝送するデータの単位であり,OFDMの場合は複数のサブキャリアから構成される.各シンボルの先頭にはCP(Cyclic Prefix)が挿入される.
  11. サブキャリア間隔(SCS):OFDMなどのマルチキャリア伝送において信号を伝送する個々の搬送波の間隔.
  12. DFT/LS:DFTは離散フーリエ変換,LSは最小二乗法を指す.本稿では,OOK-4で時間領域に生成したON/OFF系列から送信用の周波数領域波形を得るための処理方法を表している.
  13. サブグループID:LP-WUSにより起床対象となるUE群を識別するための情報.IDLE/INACTIVE状態では,UEを複数のサブグループに分け,LP-WUS情報により特定のサブグループに属するUEだけを起床させることで,不要なPaging監視やメイン受信機の起動を抑制する.
  14. Reed-Muller符号化:LP-WUSで送信される少量の起床情報ビットに冗長性を付加し,低SNR(Signal-to-Noise Ratio)環境でも誤りに強く検出できるようにするためのチャネル符号化方式.LP-WUSでは情報量が小さい一方,低消費電力受信機で確実に起床判定を行う必要があるため,短い制御情報に適したブロック符号化として用いられる.
  15. レートマッチング:符号化後のビット列を,実際にLP-WUSで送信可能なビット数やリソース量に合わせて調整する処理.LP-WUSでは,OOK変調や系列変調などの送信方式に応じて,符号化ビットを所定の長さ・構造に整え,無線リソースへ適切に割り当てる.
  16. マンチェスター符号化:情報ビットをON/OFFの遷移を含む符号系列に変換するライン符号化方式.LP-WUSでは,低消費電力受信機がOOK信号の有無やタイミングを簡易に判定しやすくするため,符号化後のビット列を送信波形に適したON/OFFパターンへ変換する処理として用いられる.
  17. ZC系列:無線通信で用いられる特殊な系列であり,自己相関特性に優れるため,同期や信号の識別に適している.本稿でいうルート(*67参照)とは,この系列を生成する際の基準となる値を指し,異なるルートを用いることで異なる系列群を構成できる.
  18. ルート:ZC系列を生成する際の系列番号(root index)に相当する値.異なるルート値を選ぶと異なる元系列が得られ,同一ルートからはサイクリックシフト(*68参照)により複数の候補系列を構成できる.
  19. サイクリックシフト:系列の並びを循環的に一定量ずらす操作.例えば,末尾にある要素を先頭側へ回し込むように並び替えることで,同じ基準系列から異なる系列を生成できる.本稿の重畳OFDMでは,同一ルートから複数の候補系列を構成するために用いられ,利用可能な候補系列数はM値やRRC状態に応じた上限の範囲内で設定される.
  20. FR1:周波数レンジの1つ.410~7,125MHzを指す.
  21. FR2:周波数レンジの1つ.24,250~71,000MHzを指す.
  22. 2値系列長:0と1の2値で構成される系列の長さ.LP-SSではON/OFFパターンを表すバイナリ系列の長さを指し,系列長は識別性や検出性能に影響する.
  23. LP-RSRP:LP-WURがLP-SSを用いて行う低消費電力RRM測定の指標.LP-RSRPは,LP-SSのOOK ONシンボルを送信しているリソースエレメントにおける受信電力を線形平均した指標.
  24. LP-RSRQ:LP-RSRPをLP-RSSI(*74参照)で除した品質指標であり,分子と分母は同一の周波数資源上で測定される.
  25. LP-RSSI:LP-SSが占有する同一の周波数資源上で,OOK ONシンボルおよびOOK OFFシンボルの双方において観測される総受信電力を線形平均した指標であり,Serving cell(*89参照)およびNon-serving cellからの同一チャネル干渉,隣接チャネル干渉,熱雑音などを含む.
  26. 周波数領域:信号などの解析において,その信号が各周波数においてどのくらいの成分をもっているかを示すのに用いられる.周波数領域の信号を逆フーリエ変換することで時間領域の信号に変換することができる.
  27. PRB:NRにおける周波数領域の基本的な無線リソース単位であり,1PRBは12個の連続するサブキャリアから構成される.LP-WUS/LP-SSでは,送信に用いる周波数リソースや開始PRB位置を指定する際に用いられる.
  28. キャリア境界:無線キャリアの周波数範囲の端点または基準となる境界.LP-WUS/LP-SSでは,アクティブBWP(*79参照)またはDL initial BWPのキャリア境界を基準として,offsetToCarrierにより開始PRB位置を指定する.
  29. アクティブDL BWP:UEが現在使用している下りBWP(*79参照).UEは複数のDL BWPを設定されることがあるが,実際に信号の受信・測定に用いるのはアクティブDL BWPのみである.
  30. BWP:サービングセルとUEとの通信に用いる帯域幅およびSCSの設定単位.
  31. スロット:データのスケジューリング単位.複数のOFDMシンボルから構成される.
  32. Paging cycle:UEがPagingを確認するために,起床をする時間の間隔.
  33. AMF:5Gコアネットワークにおいて,基地局を収容し,モビリティ制御などを提供する論理ノード.
  34. RAN Paging:着信時にINACTIVE状態で在圏中のUEを呼び出すための情報.
  35. 5G-S-TMSI:同一ネットワーク内でユーザを一意に意識するための一時的な番号.AMFにより払い出される.
  36. NAS:UEとコアネットワークとの間のプロトコルスタックにおける機能レイヤ.
  37. 報知情報:UEがセルへの接続手順を実施するために必要となる規制情報,共通チャネル情報,ランダムアクセスチャネル情報などを含み,セルごとに一斉同報される.
  38. LO:LP-WUSを受信する無線リソース.
  39. PO-to-LO mapping:1つのLOに対応するPOの数.1,2,4のいずれかから選択できる.例えば1つのPOが1つのLOに対応する場合,POごとに1つのLOが必要となるため,より多くの無線リソースをLOのために使用する必要がある一方,最大32個のサブグループをすべて使用することができるため,UEが不必要に起床させられる確率を低減できる.4つのPOが1つのLOに対応する場合,4つのPOごとに1つのLOしか必要ないため,LOのために必要な無線リソースを削減することができるが,4つのPOに対応するUEすべてで最大32個のサブグループを等分しなければならないため,使用可能なサブグループ数が最大8個に減少する.
  40. Serving cell:UEがCAを設定されているときの,PCellとSCellのことを指す.UEがCAを設定されていないときは,PCellのことを指す.

05. あとがき

本稿では,3GPP Rel-19において導入されたサステナビリティ向け高度化技術である,NES技術やUE省電力化を実現するLP-WUSについて,その検討背景とともに概説した.ドコモは5Gのさらなる発展と6G時代を見据えた標準化活動を通じて,環境負荷の低減と通信ネットワークの高度化の両立に引き続き貢献していく.

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