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2022年度「情報処理技術研究開発賞」受賞

2023年6月7日に開催された一般社団法人情報処理学会2023年度定時総会において,クロステック開発部の落合 桂一が2022年度「情報処理技術研究開発賞」を受賞しました(新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため表彰状の発送をもって表彰).

情報処理技術研究開発賞は,情報処理学会において,情報学の主要な分野で,その研究・開発において国際的に顕著な貢献が認められ,今後もその進歩,発展が期待される若手研究者に授与される賞です.2015年度をもって終了した「長尾真記念特別賞」の主旨を引き継ぎ,2018年度に設置されました.

今回,「モバイルデータを対象とした機械学習の応用によるユーザ行動支援と社会課題解決に向けた研究開発」というテーマで受賞しました.受賞の対象は,スマートフォンをはじめとしたモバイルデバイスを通じて蓄積されたデータを活用してユーザの行動支援を行ったり,携帯電話の運用データに基づく人口統計データを社会課題解決に活用したりする一連の研究開発です.本研究では,解きたい現実の問題を機械学習の問題として落とし込み,解きたい問題ごとに機械学習モデルをカスタマイズし,各ドメインのデータで機械学習モデルを学習することで解決します.

受賞理由では,「開発した技術は,トップ国際会議に論文が採録され論文賞を受賞するなど,学術的に高い評価を受けるとともに,多くのユーザに提供されるサービスにおいても実用化されており,産業上の貢献も大きい」と述べられており,新しい技術の開発とその実用化という観点で評価されました[1].今後も,より高度な技術開発と実用化を通じて,社会や産業のさらなる発展をめざします.

「情報処理技術研究開発賞」表彰状

情報通信技術委員会(TTC)2023年度「TTC会長表彰」「功労賞」受賞

2023年6月19日,一般社団法人情報通信技術委員会(TTC:The Telecommunication Technology Committee)による「情報通信技術賞・功労賞」表彰式において,ネットワーク開発部の澤田 政宏†1が「移動通信ネットワークアーキテクチャ関連の標準化活動にかかわる功績」によりTTC会長表彰を,6G-IOWN推進部(現,6Gネットワークイノベーション部)の東山 潤司が「通信装置のEMCに関する標準化活動にかかわる功績」により功労賞を受賞しました.

TTCは,情報通信ネットワークにかかわる「標準」を作成することにより,情報通信分野における標準化に貢献するとともに,その普及を図ることを目的としており,その目的に沿う事業の遂行に多大な貢献をした者に対して毎年表彰が行われています.本年度は,情報通信技術賞総務大臣表彰(1名),情報通信技術賞TTC会長表彰(6名),功労賞(19名)が授与されました.

澤田は,第3世代移動通信システム(3G)において,1995年からTTCのFPLMTS(Future Public Land Mobile Telecommunications Systems)専門委員会を通じて,ネットワークアーキテクチャおよび制御方式のITU-T SG11(International Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector Study Group 11)へのアップストリーム活動に貢献し,1998年の立上げ期から3GPPに参画し,Rel(Release)-99およびRel-4のMAP(Mobile Application Part),CAMEL(Customised Applications for Mobile network Enhanced Logic)などの技術仕様策定に寄与しました.中でも“Global Gateway Location Register(GLR); Stage2”の検討項目(Work Item)のラポータを務め,その技術仕様書TS(Technical Specification)23.119を策定しました.第4世代移動通信システム(4G)においては,SAE(System Architecture Evolution)の立上げに貢献し,またAll-IPネットワークアーキテクチャを提案し,EPC(Evolved Packet Core)の仕様が策定されました.第5世代移動通信システム(5G)においては,2019年のRel-16策定時期から貢献し,Industrial IoTや,エッジコンピューティングとサービスイネーブラの技術検討に貢献しました.また,2016年9月に結成された自動車および通信業界によるグローバル団体「5GAA(5G Automotive Association)」のJapan TF(Task Force)のCo-LeadやTTCの企画戦略委員を担当するなど,長年にわたり国内外の標準化と技術検討にかかわり,多くの関連標準化団体との連携を円滑に行うようにチームを指揮しつつ,各世代における移動通信網技術の国際標準策定に尽力し,移動通信ネットワークおよびサービスの発展に貢献しました.これらの貢献が認められ,今回の受賞となりました.

東山は,伝送網・電磁環境専門委員会の情報通信装置のEMC(ElectroMagnetic Compatibility)・ソフトエラーサブワーキンググループ(SWG)において,ITU-T SG(Study Group)5 WP(Working Party)1へのアップストリーム活動を行い,日本提案のITU-T補足文書(K.Suppl.20:地中埋設型基地局からのRFばく露評価)への反映に貢献しました.特に,5Gワイヤレスネットワークの電磁界(EMF:ElectroMagnetic Field)適合性評価に関する多大な貢献が認められ,今回の受賞となりました.

†1 現在,ドコモ・テクノロジ株式会社

「情報通信技術賞・功労賞」表彰式の模様と表彰状

第34回電波功績賞「電波産業会会長表彰」受賞

2023年6月26日に第34回電波功績賞表彰式が開催され,移動機開発部(現,デバイステック開発部)の小岩 正明,ドコモ・テクノロジ 携帯事業部の奥村 幸彦が日本電信電話株式会社の内田 大誠氏とともに「60GHz帯ミリ波大容量無線伝送の高速移動体適用技術の研究開発」の功績により,また,無線アクセス開発部(現,無線アクセスデザイン部)の井上 祐樹が国立大学法人横浜国立大学の新井 宏之氏,日本電業工作株式会社の水村 慎氏,富士通株式会社の車古 英治氏とともに「ミリ波帯での高効率なエリア化を実現する5Gマルチセクタアンテナ屋内基地局に関する研究開発」の功績により,それぞれ「電波産業会会長表彰」を受賞しました.

電波功績賞は,一般社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)により,電波の有効利用に関する調査,研究,開発において画期的かつ具体的な成果をあげた者,あるいは電波を有効利用した新しい電波利用システムの実用化に著しく貢献した者に対して授与されるものです.今回の表彰では総務大臣表彰2件,電波産業会会長表彰が6件授与されました.

「60GHz帯ミリ波大容量無線伝送の高速移動体適用技術の研究開発」では,WiGig(Wireless Gigabit)などの端末局が同時に複数の基地局と接続し無瞬断で基地局を切り替えることができる技術や,基地局と接続しながらほかの基地局を観測する機能の無い非移動体無線通信においても,高速移動体に対して適切な基地局選択により無瞬断の大容量無線伝送を実現する技術を開発し,鈴鹿サーキットにおいて実システムに近い構成で実証するなど,電波の有効利用に大きく貢献したことが評価されました.

「ミリ波帯での高効率なエリア化を実現する5Gマルチセクタアンテナ屋内基地局に関する研究開発」では,電波のビーム形成にアナログのアンテナ技術を組み合わせ,回路規模を従来の1/10に削減しつつ,360度全方向を1つの基地局でカバーし,3GPP採用のビーム制御方式の適用が可能であり,また大規模な平面アレーアンテナと同等のアンテナ利得を達成した基地局を開発し,2023年1月には28GHz帯で5Gを用いた無線ビーム制御を行った実証実験に世界で初めて成功するなど,電波の有効利用に大きく貢献したことが評価されました.

第34回電波功績賞「電波産業会会長表彰」受賞

2023年「日本ITU協会賞」受賞

2023年5月17日に開催された「第55回世界情報社会・電気通信日のつどい」において,電波企画室/料金企画室の大槻 芽美子が日本ITU協会賞「功績賞」を,無線アクセス開発部(現,無線アクセスデザイン部)の安藤 桂,6G-IOWN推進部(現,6Gネットワークイノベーション部)の鈴木 悠司,松村 祐輝,電波企画室の立木 将義,が日本ITU協会賞「奨励賞」を受賞しました.

日本ITU協会賞は,電気通信/ICTと放送分野に関する国際標準化や国際協力の諸活動において,これまでに優れた功績を遂げられた者ならびに今後の貢献が期待される者に贈呈されるものです.功績賞は,世界情報社会サミットにおける基本宣言および行動計画の実現および国際標準化,国際協力に関するITU(International Telecommunication Union)などの活動または我が国のITUなどに関連する諸活動に貢献し,その他情報通信および放送の発展に寄与し,その功績が著しい者に贈られます.また,奨励賞は,功績賞に該当する諸活動にすでに参加し,今後これらの領域において継続して寄与することが期待される者に贈られます.

大槻は,ITU,APT(Asia-Pacific Telecommunity)など多数の会合に日本国代表団の一員として継続参加し,重要文書の作成に積極的に貢献しました.また,ITU-T,DセクターやAPT準備会合では副議長,ラポータ,WG(Working Group)議長などの役職を務め,会合の効果的なマネジメントと日本国のプレゼンス向上に大きく貢献したことが評価されました.

安藤は,ITUで定義されたIMT(International Mobile Telecommunications)-Advanced(4G),ならびにIMT-2020(5G)を実現するために,3GPPにおいて端末装置にかかわる無線性能やバンド策定に貢献しました.特に,ITU-Rで特定された帯域のLTEバンド74やNR(New Radio)バンドn77/n78/n79/n257の策定を主導,標準化することでグローバルエコシステム実現に貢献したことが評価されました.

鈴木は,ITUで定義されたIMT-2020(5G)を実現するために,3GPPにおいてNetwork as a Serviceの利用を想定した機能であるRel-18 SNAAPP(Application Enablement Aspects for Subscriber-aware Northbound API Access)のラポータとして議論を牽引,技術報告書およびStage2仕様の策定に貢献し,加えてMEC(Multi-access Edge Computing)などで用いられるサービスイネーブラへ方式などを積極的に提案・寄与したことが評価されました.

松村は,ITUで定義されたIMT-Advanced(4G),ならびにIMT-2020(5G)を実現するために,3GPP標準化において,5G NRのマルチアンテナ技術(MIMO:Multi Input Multi Output)などの標準仕様策定のための技術議論の主導,5Gの高速大容量化を実現する標準仕様策定へ貢献したことが評価されました.

立木は,IMT用周波数や技術推進に関する国際標準化活動に従事し,ITU-R WP(Working Party)5D会合における関係各国との共同提案などの調整や,WP4A会合においてIMTシステムと衛星システムの共用検討を行い,WRC-19(World Radiocommunication Conference 2019)にて既存IMTシステムの保護,WRC-23会期でのBeyond5G技術レポートの策定に貢献したことが評価されました.

「日本ITU協会賞」受賞式の模様

世界最高峰のデータ分析競技会「KDD CUP 2023」で入賞

2023年8月9日に,クロステック開発部の落合 桂一,サービスイノベーション部の福島悠介,橋本 雅人,前沖 翔,DOCOMO Innovations, Inc.の井上 義隆によるチーム(NTT-DOCOMO-LABS-RED),クロステック開発部の鈴木 明作,國本 裕哉,古山 凌,石黒 慎,無線アクセス開発部の今田 舜也†1によるチーム(NTT-DOCOMO-LABS-BLUE)の計10名がデータ分析競技会であるKDD CUP 2023にてそれぞれ世界第6位,第9位に入賞しました.

KDD CUPは国際計算機学会(ACM:Association for Computing Machinery)が主催するデータマイニング関連の国際会議KDD(Knowledge Discovery and Data Mining)で開かれるデータ分析競技会で,1997年,まだビッグデータやデータサイエンティストという言葉が無い時代から続く世界最高峰かつ最も歴史のあるデータ分析競技会です.

2023年の競技会は3つの部門に分かれ,今回第6位,第9位に入賞した部門は,オンラインショップのセッション予測問題で,ユーザが閲覧した商品履歴に対して次に閲覧する商品のタイトルを予測する精度を競うものでした.日本語,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語の6言語を対象とし,商品名,商品の説明文,ブランド名など商品に関する複数の文を利用し予測を行う点が特徴でした.

落合らのチームはユーザの閲覧履歴の最後の商品タイトルから不要な単語を削除することで次に閲覧する商品タイトルを予測するAIを開発しました.これは,データを観察したところユーザは類似した商品を連続して閲覧する傾向があり,次に閲覧する商品名は最後に閲覧した商品と類似している,一方,特定の商品にしか出現しない特異な単語は,次の商品名にはなりにくいという知見に基づき開発した手法です.データ分析から得た知見を取り入れることで,高い予測精度を達成しました.

また,鈴木らのチームは落合らのチームと同様の手法に加えて,商品タイトルの前半に商品を本質的に表す重要な単語がくることから,商品タイトルの単語数に応じて,商品タイトルの後半にある単語を削除するルールベースでの手法を開発し,予測制度を向上させることに成功しました.

ドコモは2016年からKDD CUPへの参加を続け,今回は2022年の第9位入賞につづく,5回目の入賞となります.ドコモでは多数のデータサイエンティストを擁し,日頃からパートナー企業との共創の中で,AI・ビッグデータを有効活用し,さまざまな課題の解決に取り組んできたことが,今回の受賞に繋がりました.本大会で評価された世界最高レベルのAI・ビッグデータ分析技術を活用し,AI・ビッグデータ活用ビジネスの拡大とともに社会課題解決の取組みを促進していきます.

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†1 現在,NTTコミュニケーションズに出向中

「KDD CUP 2023」入賞者
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