コラム:イノベーション創発への挑戦

VB・大企業連携で活力

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2015年1月22日、「新事業創造カンファレンス&Connect!」という、1000人以上が参加したイベントが東京都内のホテルで開催された。安倍晋三首相、宮沢洋一経済産業相が出席し、首相自ら「第1回日本ベンチャー大賞」という総理大臣賞を起業家に授与した。ここで言う「ベンチャー」とは、スタートアップ企業のことだ。

さて、記念となる第1回のベンチャー大賞は、藻の一種であるミドリムシを食料・エネルギー源として大量生産することに成功したユーグレナの出雲充社長が受賞した。

大賞に準ずる賞として、ベンチャー企業・大企業等連携賞は介護・医療・生産現場で人を支援する装着型ロボットを作るサイバーダインの山海嘉之社長と、それをサポートした大和ハウス工業の樋口武男会長が受賞した。

共通点として、しっかりとした技術開発をベースとした商業的成功が見えている。このイベントに参加して、ようやくスタートアップ企業の活動が産業活性化の鍵として認知されるようになったとの感慨を持った。

審査・表彰は経済産業省が2014年9月に創設したベンチャー創造協議会の事業として実施している。狙いは「若者などのロールモデルとなるようなインパクトのある事業を創出した起業家やスタートアップ企業を表彰することにより、社会全体のチャレンジ精神の高揚を図る」とのこと。逆説的に言うと、日本の社会全体のチャレンジ精神がまだ弱いということだ。

2014年末の日本の時価総額トップ12社の多くは自動車、通信、金融会社で占められている。その合計時価総額は104兆円。一方で、1995年以降に創業した米国の代表的な12社(グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムなど)の時価総額合計は125兆円で、日本の上位12社合計をしのぐ。

これは米産業社会の新陳代謝が活発なことを意味している。安倍首相が授賞式で「経済・産業の変革の担い手となるのがスタートアップであり、日本が起業大国になることを願う」とあいさつしたのも当然だ。

  • 大企業がスタートアップと連携する意義

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    サイバーダインと大和ハウスが受賞したベンチャー企業・大企業連携賞には、主催者からの明快なメッセージがあった。大和ハウスはサイバーダインに創業期から出資し介護・福祉向けロボット事業として立ち上げようとしている。これこそ大企業とスタートアップ企業の連携モデルの例だ。

    主催者側の1人でありConnect!という活動を行っている剣持忠氏の持論を紹介したい。それは「大手企業とベンチャーキャピタル、スタートアップが集い、業務提携、資本提携、M&A(合併・買収)などの連携(Connect!)することにより産業が活性化される」だ。同感である。出資からM&Aまでがシームレスにつながった活動をしたい。

    1999年度のマッキンゼー賞を受賞した論文「アンバンドリング 大企業が解体されるとき」は、企業活動は顧客管理、インフラ管理、イノベーションの3つに分解されると言っている。イノベーションには確実性よりもスピードが大事だ。巧遅は拙速に如かず。それにはリスクを伴う。

    一方で顧客とインフラ管理は信用、安心・安全が第一だ。巧遅でよい。拙速なスタートアップと巧遅の大企業のベストな組み合わせをこれまで以上に意識すべきだ。

    受賞した起業家5人が最後に挨拶をした。今後、世界が必要とする技術・サービスを作り上げること、これまでの努力と今後の課題を明確に語った。まさにビジョンとハードワーク!このキーワード2点に集約される壇上の彼らの姿がまぶしかった。

ドコモのイノベーション創発を牽引してきた栄藤による2015年3月12日の日経産業新聞「Smart Times」を翻案したものです。

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