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量子コンピューティング基盤を活用した
新たなネットワーク最適化手法を商用導入
~世界初!位置登録信号とページング信号の同時最適化手法を開発~

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概要

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、量子アニーリング技術を活用した量子コンピューティング基盤*1で、新たなネットワーク最適化手法「TA-List最適化アルゴリズム」(以下、本技術)を世界で初めて開発*2し、商用の基地局で導入しました。本技術は、ネットワークでお客さまがご使用の端末(以下、端末)の位置を把握するために端末からネットワークに送信する位置登録信号と、着信時にネットワークから端末に送信するページング信号の両方を同時に最小化するものです。本技術の適用により、最大で位置登録信号65.3%、ページング信号7.0%を同時に削減することに成功しました。

ページング信号による着信の仕組み

ページング信号による端末の現在位置の把握方法

本最適化技術の意義を理解するために、まずは移動通信ネットワークにおける基本的な位置把握の仕組みについて説明します。
携帯電話がネットワークに接続しいつでも着信できる状態を維持するためには、ネットワークが端末の現在位置を把握する仕組みが不可欠です。この仕組みは主に、「TA(トラッキングエリア)」と「TA-List」いう二つのエリア概念によって管理されています。
TAは複数の基地局からなるグループで、電話やメッセージを端末に着信させる必要がある場合、ネットワークは最後に端末が通信したTA内の基地局に対し一斉に呼び出し信号を送信します。この呼び出し信号をページング信号と呼びます。

TA-Listは複数のTAからなるさらに大きいグループで、端末が最後の通信の後、別のTAに移動している場合、最後に端末が通信したTAにページング信号を送信しても端末は応答することができません。この場合、そのTAを含むTA-List内の全基地局にページング信号を再送することで端末からの応答を待ちます。

着信時のページング信号による端末の現在位置の把握方法

TA最適化によるページング信号数の削減

端末が多く移動する基地局群を同じTAとし、TA単位でページングを行うことで、より少ないページング信号数で端末を発見することができます。このTA-List内のTAの割り当てを最適化する仕組みをTA最適化と呼んでいます。

TA最適化の概要

TA-List間移動時の端末の在圏位置把握の仕組み

端末がTA-Listの外に出た場合は、端末自らが位置登録信号を発し、別のTA-Listに移動したことを通知することでネットワークが端末の位置を把握します。
従来のネットワーク運用における課題は、この位置登録信号とページング信号の量がトレードオフの関係にあることです。TA-Listを小さくすると位置登録信号が頻繁に発生し、大きくすると着信時のページング信号が広範囲に及びます。TA-Listを小さく設定すれば位置登録信号が頻繁に発生し、大きく設定すればページング信号が広範囲に及び、いずれもネットワーク負荷増大の原因となっていました。

TA-Listと位置登録処理

TA-List割当における課題と最適化手法

この課題を解決するためには、端末の移動データや着信履歴などの膨大な統計データに基づき、位置登録信号数とページング信号数を最小化する最適な基地局グループ(TAおよびTA-List)を決定する必要があります。
ドコモは、2024年にTA-List内のTAの配置を最適化するTA最適化アルゴリズムを開発しました*1。TA最適化アルゴリズムはページング信号の削減を可能とするものの、TA-Listを変更しないため、位置登録信号の最適化を行うことができませんでした。
両信号によるネットワーク負荷が最小になるように最適なTAやTA-Listを構成するには、TA及びTA-Listと基地局の組み合わせを網羅的に計算する必要がありますが、その組み合わせ数は指数的に増大するため、従来のコンピューターでは計算が困難でした。

ドコモでは、この課題を解決するため、量子アニーリング技術を活用し、ページング信号と位置登録信号を同時に最適化する「TA-List最適化アルゴリズム」を開発しました。これにより、トレードオフの関係にある両信号について最適なバランスを調整することが可能になりました。この最適なバランスとは、着信時のページング信号を抑えつつ、かつ人が多く移動する動線沿いなどでは位置登録信号を抑制する最適なTAおよびTA-Listを自動的に設計できることを意味します。エリア特性や端末の移動状況により、位置登録信号とページング信号のどちらを優先して削減すべきかが異なるため、これらのバランスを考えた最適化が重要になります。
TA-List最適化では、組み合わせ最適化において課題となる両信号数を最小化する問題を定式化し、アニーリング型量子コンピューターで解くことができるQUBO形式*3に変換したのち、量子アニーリング技術による求解を行いました。その結果、膨大な計算量を要する最適解の探索が、わずか5分程度という短時間で可能になりました。さらに、ネットワーク運用上の制約(例:下図の鉄道などの重要動線にTA-Listの境目を置かない)も問題設定に組み込むことで、鉄道の動線に沿ってTA-Listが形成され、同時に発生する位置登録信号が減少し、ネットワークへの負荷を抑制することができます。

TA-List最適化の概要

本技術の導入結果

本技術は全国への適用が進んでいますが、特定エリアに本アルゴリズムを適用した結果、顕著な改善が見られました。特に、端末がTA-Listを跨いで移動する際に発生する位置登録信号数が、1日のピーク時の値がネットワーク適用後に65.3%削減するという大きな効果を確認しました。同時に、着信時に基地局から端末に送信されるページング信号数(基地局平均)についても、1日のピーク時の信号数が7.0%削減されることを確認しました。通常、位置登録信号を削減するとページング信号が増加する関係にありますが、本技術の最適化の効果により両方の信号を同時に削減することができました。これらの制御信号の削減によって空いた無線リソースをお客様の通信に利用することにより、通信速度の向上が期待できます。

本技術を商用ネットワークに導入した際の位置登録信号数の削減効果

本技術を商用ネットワークに導入した際のページング信号数の削減効果

まとめ

今回量子コンピューティングが、ネットワークの運用に大きな貢献をすることが確認できました。今後も、量子コンピューティング基盤の研究開発に取り組み、社会のさまざまな課題解決に取り組んでまいります。

担当者

福田 修之
FUKUDA SHUICHI
R&D戦略部 社会実装推進担当
xt2_quantum-pj@ml.nttdocomo.com

担当者

髙橋 実宏
TAKAHASHI MITSUHIRO
R&D戦略部 社会実装推進担当
xt2_quantum-pj@ml.nttdocomo.com
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