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ドコモの決済データをもとにした
地域の消費動向を読み解ける決済統計技術

ドコモはこれまで、「dカード」「d払い」「dポイント」から得られるドコモの決済情報とドコモが保有する位置情報*1・ユーザー属性情報を活用した高度な決済統計技術*2を開発しており、2024年度より実証実験を実施しました。地域の活性化を目指す自治体さまや観光協会さま、企業さまのデータ利活用の推進に貢献します。

背景と課題

情報通信技術(ICT)の急速な発展によって多種多様なデータが収集・蓄積されるようになり、自治体や企業においてはこれらデータの活用による様々な社会課題の解決が期待されています。一方で、データの量・質の観点から一般的に広く利用可能なデータや自治体や企業が個別に保有するデータだけを活用して社会課題を効率的に解決することが難しい場合もあり、社会課題の内容に応じて適切な外部データの活用やそれらのデータ加工や異なるデータ同士の連携および多面的な分析が求められています。

決済統計技術とは

ドコモでは、観光消費増大や地域経済活性化に課題を抱える自治体・企業さま向けに地域の消費がマクロ的にわかる決済統計技術*2を開発しています。
決済統計技術*2とは、ドコモが保有する決済情報・位置情報*1・ユーザー属性情報といった多種多様なデータに基づき、そのとき・その場所における消費動向を統計化・分析する技術です。消費動向として、「総消費額」、「1人あたりの消費単価」、「来訪人数」の三つの統計化された指標を算出します。分析結果は、消費に関する現状把握や、消費促進の施策立案に向けた課題抽出、施策実施後の効果検証などに活用することを想定しています。

決済統計技術の概要

本技術の特徴

dカード、d払い、dポイントといった複数の決済手段のデータを活用しており、より広範囲の消費動向の分析が可能となります。また、統計化の際にはドコモの多種多様なデータに基づく消費者属性分析が可能であり、性年代、居住エリアなどの属性情報別の統計化に加え、位置情報*1の活用で宿泊観光客、日帰り観光客別の統計化なども可能となります。さらに、ドコモが保有する各種決済情報からドコモの決済以外も含めた全体の消費を推計しており、より実態に即した消費動向を分析することが可能となります。

経済効果分析への応用

イベントや施設の経済効果の分析として、位置情報*1に基づき特定エリアの来訪有無や来訪前後の移動を分析することで、各種イベントや施設の来訪による消費動向を詳細に分析することも可能となります。従来これらの経済効果はアンケートなどから分析することが一般的でしたが、決済情報と位置情報*1の双方を活用した本技術*2を活用することでデータからより正確な経済効果を推定することができます。

実証実験の内容

1.草津温泉街の観光消費の実態把握

決済統計データのダッシュボードイメージ

  • 背景
    一般社団法人草津温泉観光協会(以下、草津温泉観光協会)では、草津町地域の観光地全体での消費拡大・収益確保を目指し、NTTドコモビジネス株式会社とともに独自の観光プラットフォーム(LGPF)*3を構築し、活用することで、さらなるデジタルマーケティングの推進とデータの利活用による観光事業者の事業運営の高度化に取り組んでいます。草津温泉観光協会は、KGIとして設定した観光客の消費額単価をデータに基づいて定量的に把握し、実態にあった課題設定、ひいては効果的な観光施策の立案に取り組んでいます。
  • 課題
    一方で、これまでのアンケートでのデータ取得では、回答者が特定の属性に偏ることがありました。特に、宿泊温泉施設での回答が多いことから日帰り観光客のデータ数が足りないという問題がありました。それゆえ、本当に実態にあった現状把握ができているのか、適切な課題設定ひいては効果的な施策を立案ができているかわからないという課題がありました。
  • 活用データ・分析機能
    ドコモが開発する決済統計技術は宿泊観光客や日帰り観光客別の消費者属性分析も可能です。そのため本実証実験においては、日帰り観光客のデータ数に起因する問題を低減させた上で、より実態に沿った消費動向を把握できます。
  • 効果
    ドコモの決済統計データを活用することで、観光客の消費を日帰り客と宿泊客のデータの偏りがなく詳細に把握できました。日帰り観光客の消費の時系列変化から、紅葉シーズンに日帰り観光客の消費額単価が拡大するということを把握できました。さらに詳細に分析を進め、居住エリア別×宿泊/日帰り観光客のクロス集計結果から、県内からの日帰り観光客の消費の伸び率が低いことを突き止めました。結果として、県内からの日帰り観光客の紅葉シーズンの消費を促進させることを課題に設定でき、対応する施策の検討を進めることができました。また、本実証実験の公表を通じて、決済統計技術の自治体などにおける観光分野での具体的な活用方法やその特徴を周知するとともに、引き続き技術開発を進めることで、自治体における観光分野のEBPM*4の推進に貢献します。

2.スポーツイベントに関連した地域消費の実態と影響把握

  • 背景
    近年、スタジアム・アリーナなどの大型スポーツ施設は、単にスポーツをする場、観戦する場としての機能に留まらず、まちづくりや地域活性化の核としての役割が期待されています。
  • 課題
    自治体などによる大型スポーツ施設の経済効果の推計は、当該地域人口や消費に関する既存の統計データや既存施設来場者および地域住民へのアンケート結果に基づいて行われる一方で、実態としてどの程度の経済効果を及ぼしたかは正確に検証することが難しく、地域の人流や消費に関するデータを用いた詳細な分析が求められています。
  • 活用データ・分析機能
    本実証実験では、ドコモと株式会社インテージ(以下、インテージ)が共同で、株式会社日本経済研究所および株式会社川崎フロンターレの協力のもと「Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu」周辺におけるスポーツイベントの経済効果を分析しました。決済統計技術を応用した経済効果推定技術を活用して分析したデータを提供し、インテージは、これらのデータを活用した分析設計および統合的なデータ解析を実施することで、本実証において地域への影響を可視化しました。
  • 効果
    両社の連携により、従来の調査手法では困難であった、スタジアム来場推定有無やイベント前後におけるスタジアム周辺の滞留有無、推定利用駅などの違いによる消費行動の差が明らかになりました。これは、広域なホームタウンを有するクラブチームや施設整備を検討する自治体にとって、施設の効果が広域のステークホルダーに及ぶ可能性を示すものです。

位置情報と決済情報をかけ合わせた分析結果

本分析結果の詳細については、レポートとして日本経済研究所のWEBページにて公開されています。
https://www.jeri.or.jp/survey/202508-09_06/別ウインドウが開きます
また、本調査結果の公表を通じて、ビッグデータの具体的な活用方法やその特徴を周知するとともに、必要なデータ提供を行うことで、より精緻なスポーツ産業の地域への効果推計、効果検証、そして改善策の立案支援に貢献し、スポーツが持つ可能性をさらに引き出すことをめざします。

今後の展望

ドコモの決済統計技術とこの技術を応用した経済効果推定技術は、本実証実験以外の幅広い社会課題の解決に適用でき、今後もさまざまなステークホルダーの期待に応じてさらなる技術開発を進めることで、観光分野や都市計画などさまざまな側面から地域の活性化につなげることを目指していきます。

  • 位置情報については、利用に関する同意をいただいているお客さまのデータのみ使用します。同意の状態はパーソナルデータダッシュボードでご確認いただけます。また、パーソナルデータの分析にあたっては、プライバシーポリシーに定める利用目的の範囲内でパーソナルデータの分析を実施し、お客さまの利益になるか、社会への貢献になるかを意識し、お客さまの信頼を損なうような利用は行いません。
    パーソナルデータ(個人情報など)について:https://www.docomo.ne.jp/utility/personal_data/
    NTTドコモ プライバシーポリシー:https://www.docomo.ne.jp/utility/privacy
  • 本決済統計技術および経済効果推定技術で扱う統計情報は、特定の時期・エリアにおける来訪・決済を行った対象者に関する統計情報です。また分析集団の人数が規定値以上になるよう秘匿処理を実施しているため、分析結果でお客さま個人を特定することはできません。さらに、決済情報については、上記の人数に関する観点に加え、お客さまが利用された店舗の数についても同様に秘匿処理を実施しているため、分析結果から加盟店毎の利用状況を特定することもできません。
  • LGPFとは、NTTドコモビジネス株式会社が提供する地域アプリLocal Government Platformで、地域住民・観光客が、自身の自身の好みにあったおすすめスポットのレコメンド情報を、リアルタイムに入手できる「地域ポータルアプリ」と、地域住民・観光客のデータを自動で収集・蓄積・分析できるダッシュボードから構成されています。
  • EBPMとは、Evidence-based Policy Makingの略で、証拠に基づく政策立案を意味します。
  1. 本ページに記載の内容は研究開発中の技術となります
  • 決済統計技術および草津温泉街の観光消費の実態把握について:

問い合わせ先

クロステック開発部 複合価値創出担当
R&D戦略部 社会実装推進担当
docomo_pay_statistics_info@ml.nttdocomo.com
  • 経済効果推定技術およびスポーツイベントに関連した地域消費の実態と影響把握について:

問い合わせ先

クロステック開発部 モビリティデータ活用技術開発担当
R&D戦略部 社会実装推進担当
xt-md-hamon-ml@ml.nttdocomo.com
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