電波の安全性について
電波による人体への影響と、安全利用のための基準・制度
電波って人体に影響があるの?
日本をはじめ世界では、電波を安全に利用するための基準や制度が設けられており、その基準値以下を満足する強さの電波であれば人体に影響はないとの調査結果が得られています。ここでは、電波の人体への影響と、安全利用のための日本の基準や制度について解説します。
人体への影響 −「刺激作用」、「熱作用」とは−
電波の人体への影響については、これまで50年以上にわたり世界各国で研究が行われています。その結果、電波の人体への影響として「刺激作用」と「熱作用」があることが明らかになっています。
刺激作用
主に約10MHz以下の低い周波数の強い電波が人体に当ったときに、人体に発生した誘導電流によって神経などが「ビリビリ」「チクチク」と刺激される作用のことです。携帯電話の周波数では刺激作用は起こりません。
熱作用
約100kHz以上の周波数の強い電波が人体に当たったときに、そのエネルギーの一部が人体に吸収されて、温度上昇を起こす作用のことです。熱作用により人体への影響がおきないように、日本の電波防護指針(後述)では電波の強さの基準値が定められています。携帯電話端末や基地局からの電波は、電波防護指針の基準値以下であるため、熱作用を起こすことはありません。
日本における電波の安全利用のための基準や制度
電波防護指針
電波を安全に使用するために、1990年に郵政省(現在の総務省)は過去40年にわたる国内外の研究結果にもとづいて電波の人体に対する安全性の基準を「電波防護指針」として定めました。その後、1997年および2011年には、携帯電話端末などの安全性の基準となる「局所吸収指針」の追加と周波数の拡張が行われています。さらに、2015年には低周波領域の改定、2018年には高周波領域の改定が行われました。この電波防護指針の基準値は世界保健機関(WHO)が推奨する国際的な指針と同等であり、この基準値以下であることを満足していればすべての人々の健康への安全性が確保されるというのが、WHOをはじめ国際的な考えとなっています。国はこの電波防護指針に基づいた法令を定めています。
電波防護に関する法規制
我が国では、電波防護指針をもとに、関係法令が制定されています。ドコモを含む電波を使用する事業者などは、これら法令を順守することが義務付けられています。ドコモの携帯電話は、法令を順守してサービスを提供しております。
(携帯電話基地局・端末などに適用される電波防護のための制度)
- 電波防護の基準値を超える場所(基地局アンテナに極めて近い場所など)には、一般の人が容易に立入りすることができないよう、柵などを設けること。
- 携帯電話端末から側頭部及び人体(側頭部及び両手を除く)にばく露される電波について、電波防護の基準値以下であること。
電波防護のための基準値
電波防護指針ならびに関係法令における電波の強さの基準値は、電波の「熱作用」により体温が上昇し、人体に影響が出る可能性があるとされる値に十分な安全率(10倍~50倍)を設けた値です。以下に、携帯電話で用いられている周波数での基準値の例を示します。
携帯電話基地局
- 日本の電波防護指針に定められた電波の強さ(平均時間6分間)の基準値(一般環境)。
- 出典:総務省パンフレット「電波と安心な暮らし」(2014年2月)。デジタル携帯電話基地局のアンテナから発射される電波の地上での電力密度の例。
携帯電話端末
携帯電話端末の電波について、6GHz以下では比吸収率(局所SAR、2W/kg、四肢においては4W/kg)、6GHz超では入射電力密度(4cm2あたり2mW)の基準値以下であることを満足すること。詳細については携帯電話の電波防護への適合性についてをご覧ください。
携帯電話基地局の電波の強さはどのくらい?
電波の強さは、携帯電話基地局から距離が離れると急激に弱くなります。実際には、距離だけでなく基地局アンテナの特性などの要素も考慮する必要がありますが、それらを考慮しても一般の環境における電波の強さは電波防護指針の基準値の数十分の1から数万分の1です。
電波の強さの計算例
携帯電話基地局のアンテナから発射される電波は、基地局に近い場所から遠い場所まで、お客さまに快適な通信サービスをご利用いただけるように電波の届き方を考えて設計されています。そのため、アンテナからの距離が近い場所において必ずしも電波が強いわけではありません(図の例ではアンテナから200m先の地点の値が最大ですが、あくまで一例です)。いずれの場所においても、その電波の強さは電波防護指針の基準値以下となっています。
出典:総務省パンフレット「電波と安心な暮らし」(2014年2月)。デジタル携帯電話基地局のアンテナから発射される電波の地上での電力密度の例。