大空へ挑む情熱を、映像でつなぐ。「鳥人間コンテスト」でのライブ配信を支えたドコモの通信対策
夏の琵琶湖を舞台に、人力飛行機が大空への夢を乗せて羽ばたく「鳥人間コンテスト」。多くの人々に感動を与えてきたこの大会は、近年YouTubeでのライブ配信も行われ会場の熱気をリアルタイムで届けています。特に2025年は、機体に搭載したカメラから配信された迫力のある映像が大きな注目を集めました。この賑わいの裏で、ドコモはライブ配信での通信環境を支えるという重要なミッションを担っていました。今回は、大会の成功を通信の力で支えたドコモの挑戦をご紹介します。
48年の歴史が紡ぐ夢舞台と、映像配信を支える通信環境への挑戦
1977年にはじまった「鳥人間コンテスト」は、「空を飛びたい」という人類の根源的な夢に挑む夏の祭典です。以来、ものづくりに情熱を傾ける人々が自らの翼で大空を目指す夢の舞台として、半世紀近くにわたり愛されてきました。会場である滋賀県彦根市の松原水泳場には、毎年多くの観客が詰めかけ、独特の熱気に包まれます。


近年、この歴史ある大会では、会場の感動を世界中に届けるライブ配信が行われています。その配信のなかでも、琵琶湖の上空を飛ぶ機体に搭載されたカメラから安定した映像を届けることは、長年の課題となっていました。パイロットの表情までリアルタイムで伝える機上映像は、ライブ配信全体の成功を左右する最も重要な要素です。この機上からの映像配信を成功させたいという主催者の思いを受け、まずお客さまのご要望に合うカメラ機材や映像配信の仕組みをNTTドコモビジネスで検討し、提案を行いました。同時に、その仕組みを動かすための土台となる安定したエリア構築が必要不可欠と考え、ドコモCS関西エリア品質部へ相談を持ちかけました。主催者合同での協議を重ねながら二人三脚での取組みが進行するなか、湖上からの映像配信についての取組みが本格化したのは、大会が差し迫る5月中旬。ドコモにとっても湖上での通信品質に関するデータは不十分で、すべてが手探り状態という、まさに前例のないミッションです。最大の壁となったのは、琵琶湖上空特有の電波環境。陸地と違って電波を遮るものがない湖上は、さまざまな方向から到来する電波が干渉し、通信品質が低下しやすい環境です。さらに、湖岸周辺で生活されている住民の方々の通信に影響をおよぼすことのないように、繊細な配慮が必要になりました。
チームの連携で挑んだ「ミリ単位」の電波調整
この前例のないミッションを限られた時間で成功させるため、ドコモCS関西エリア品質部と現地の滋賀支店による専門チームが結成されました。ドコモに改善を依頼されたエリアは琵琶湖上10km四方、約100平方kmにもおよびます。まずは現状を把握するため、実際に船をチャーターし2度にわたる徹底的な電波調査を実施。大きな揺れに見舞われながらも敢行した地道な調査によって、通信を不安定にさせている原因が「電波の干渉」にあることを突き止めることができました。時間的制約があるなか、チームが導き出した解決策は2つ。1つは、会場に5G対応の臨時基地局を設置し、コンテスト開催中の観客席周辺の通信容量を増強すること。そして、もう1つが今回の核となる施策、周辺の既存基地局7局のアンテナ角度や電波の向きを精密に調整する「チューニング」です。
[右]琵琶湖での電波調査の様子
これは、ライブ配信に不要な電波が干渉の原因とならないようにアンテナをやや下向きに調整しつつ、目的の湖上へは的確に届けるという、まさにミリ単位の精度が求められる作業でした。この難易度の高いチューニングを短期間で実現できた背景には、部門を横断したチームワークがありました。湖上の電波改善を担うエリア品質部がチューニング案を作成し、地域を熟知した支店が周辺住民に与える影響を多角的に評価する。この効率的な役割分担が、広大なエリアに対する緻密な調整を可能にしたのです。時にはエリア品質部から短期間での確認依頼をすることもありましたが、支店が迅速に対応。地域の事情に精通しているからこそ気づける、重要な施設への影響などを具体的に指摘することで、チューニングの精度を大きく向上させました。この緊密な連携の結果、地域住民への影響を最小限に抑えながら湖上の通信品質を最大化するという、最適なバランスで最終的なチューニングが実施されました。
感動を届け、成功を支えられた喜び
万全の体制で臨んだ大会当日。最大の懸案だった湖上からのライブ配信は、最大6,000名が同時視聴するなかでも映像が乱れることはなく、パイロットの懸命な表情や息づかいまでもリアルタイムで視聴者に届けることができる通信環境を実現することができました。また2日間の大会を通して、来場者や運営関係者から通信に関するトラブルの申告は一件もありませんでした。

[右]機上からの映像をのぞき込む参加チーム

主催者の方からは「本当に実現できるとは思わなかった。きれいな映像でよかった」と、驚きと感謝の言葉をいただきました。リアルタイムで配信を見守っていたドコモ担当者は、その瞬間を「ガッツポーズしかなかった。チームみんなへの感謝がこみ上げてきました」と振り返ります。
パイロットの努力、チームの絆、そして観客の応援。たくさんの思いが交差した鳥人間コンテスト。その一瞬一瞬の感動を、通信の力で支えられたことはドコモにとっても大きな喜びとなりました。ドコモはこれからも、技術と情熱でかけがえのない瞬間をつなぎ、多くの人々の心に残るコミュニケーションを支えていきます。
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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク運営事業部 エリア品質部 主査奥山 加奈
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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク運営事業部 エリア品質部岸田 和也
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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク運営事業部 エリア品質部池田 智隆
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NTTドコモビジネス株式会社
第一ソリューション&マーケティング営業部門長澤 靖
