令和6年台風10号の災害復旧対応。
「日頃の備え」と「チーム力」で、どこよりも早い通信復旧を実現

2024年8月末、極めて勢力の強い台風10号が九州地方を襲い、甚大な被害をもたらしました。ドコモではこうした事態を常に想定し、全国規模での災害対策訓練や地域特性に合わせた独自の対応計画の策定など、日頃から万一の事態に備えています。今回の復旧対応にも地道な「日々の備え」が活かされ、早期復旧につながっています。今回は、この災害に対してドコモが日頃の備えをどう活かし、多くの関係者と連携して立ち向かったのか、具体的な取組み内容をご紹介します。
台風に先手をうつ、「空振り」を恐れない先行配置
2024年の夏に九州を襲った台風10号は、中心気圧が低く、暴風・波浪・高潮の特別警報が2年ぶりに発表されるほど大型の台風でした。記録的な大雨と暴風は各地に甚大な被害をもたらし、九州の広範囲で停電が発生。ドコモの通信設備も、307の基地局がサービスを中断し、60の市町村でエリア影響が出るなど大きな被害を受けました。ドコモでは災害情報を入手した後、すぐさま台風の進路をもとに基地局被災を予測、通信への影響を少しでも食い止めるための行動のひとつとして「先行配置」を実施しています。

台風が接近すると、船や飛行機といった交通手段は途絶えてしまいます。そうなれば、基地局が被災しても、復旧に向かうことができません。そこでドコモは、台風の進路予測に基づき必要と判断した離島へ、あらかじめ発電機などの復旧機材を持参した復旧班を送り込んでいます。復旧班は、現地で嵐が過ぎ去るのを待ち、被災が確認され次第、即座に活動できるよう備えます。もちろん、台風の進路は変わることもあります。しかし、ドコモの基本方針は「空振りを恐れずに実行する」こと。特に災害時においては、限られた人員や機材を最大限に活かし、一日も早い復旧を実現するための最善策だと考えているからです。
迅速な復旧をめざす、ドコモの技術力と連携の力
本格的な復旧活動が始まるのは、台風の暴風域が過ぎ二次災害の危険がない状況を確認してからです。九州支社の災害対策室が司令塔となり、全国の支社や通信建設会社より集結した最大64班もの支援隊が、被災地での復旧活動を開始しました。停電が続く基地局に可搬型発電機を33台投入し、電力の救済にあたりました。さらに今回の復旧活動では、能登半島地震を機に導入された「Starlink」を、九州ではじめて災害対策に活用。本格的な導入の前に台風10号が到来したため、訓練を実施できないままでの実践投入になりました。はじめて扱う機材の設定に苦慮する場面もありましたが、有識者と連携し無事に設営を成功、迅速な通信環境の確保につながりました。


〔右〕情報の収集・共有を行う、国土交通省に派遣したリエゾン
これらの迅速な復旧はドコモだけで成し遂げたものではありません。平時から築き上げてきた外部機関とのパートナーシップが復旧活動の支えとなりました。その要となるのが、国土交通省や県の災害対策本部へ派遣した「リエゾン」と呼ばれる連絡員です。リエゾンは組織間の調整・連絡を行う、まさしく「動く司令塔」。それぞれの専門性を活かして情報を収集、迅速に共有することで復旧活動に役立てています。今回、高速道路の通行止め区間緊急通行申請の際にも、このリエゾンが大きな役割を果たしました。鹿児島県に派遣されたリエゾンが、対象の高速道路は通行止めになっているものの道路に大きな損傷はなく、安全確認を行っている状況だという重要な情報を入手。それを即座に共有したことで、緊急通行の申請がスムーズに進み、復旧班は現場へいち早く駆けつけることができました。
また、イオンとの災害時における連携協定も復旧活動を加速させた要因のひとつです。「イオンモール鹿児島」の駐車場を災害対策の拠点として借用。全国から集結した20台近くの災害対策車両や発電機の拠点として活用しました。こうしたスムーズな連携は、日頃からお互いの訓練に参加するなど、協力体制を構築してきたからこそ可能になったのです。
お客さまの「あんしん」につながる通信を守り抜くために
こうしたドコモグループの総力と組織を越えた連携の結果、復旧対応をはじめてから約5日後、影響の出ていたすべてのエリアで通信サービスを復旧。他の通信事業者に先駆けて、お客さまの通信環境を確保することができました。しかし、これはあくまで移動基地局車や発電機などによる応急的な復旧に過ぎません。すべての通信設備が本来の姿を取り戻す「本復旧」に向けて、すぐに次の計画を始動させました。

モバイル通信は、重要なライフライン。復旧作業中にお客さまから寄せられる「早く復旧してほしい」という切実な声は、「つながる」ことへの責任を深く認識させるものです。その声に応えるためにも、一日でも早い復旧で「あんしん」を届けられるように全力で取組んでいきます。また日頃の備えとして、Starlinkのような最新機器なども、いざというときにすぐ活用できるように、自社内勉強会や定期的な実働訓練などを具体的な改善活動として取組んでいます。いつ、どんな災害が起きても、お客さまの「あんしん」につながる通信を守り抜くことがドコモの使命。これからも日々の備えを怠ることなく、万一の際を想定したさまざまな対策に力を入れていきます。
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株式会社ドコモ九州支社
ネットワーク部 災害対策室 担当課長松尾 徹
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株式会社ドコモ九州支社
ネットワーク部 災害対策室 主査山崎 芳典
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株式会社ドコモ九州支社
ネットワーク部 災害対策室西 祐樹
