日々の取組み

日本三名山のひとつ「白山」エリアの通信品質改善
登山者のあんしん・安全を支えるドコモの挑戦

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石川県白山市にある日本三名山のひとつ「白山」。その山頂付近に広がる「白山室堂」エリアと「南竜ヶ馬場」エリアは、登山者のための宿泊地であると同時に、噴火などの自然災害時の一時避難場所に指定されている重要な拠点です。ドコモは、コロナ禍による登山人気の高まりや、登山中の通信需要の高まりを背景に、2025年登山シーズン中(5~10月)に、白山(室堂/南竜ヶ馬場)エリアに対して、衛星回線活用による通信エリア化を実施することを目標に掲げて対策に着手。今回はそのプロジェクトの内容をご紹介します。

過酷な環境で挑んだ、山岳エリアの電波強化

白山での通信整備の取組みが本格化したのは2023年。当時、コロナ禍の三密を避けられるレジャーとして登山が注目され、山での通信需要が増えていました。さらに、白山室堂ビジターセンターと南竜山荘は避難促進施設にも指定されていたことから、石川県からは通信品質の改善に向けた強い要望が寄せられていました。
当時の白山エリアの通信状況は、白山室堂ビジターセンターでは通話がたびたび途切れ、Webページの読み込みやメッセージ送信にも時間がかかる状態。南竜ヶ馬場では、全く通信ができない「圏外」でした。
とはいえ、山岳エリアは光回線や電源などのインフラが整っておらず、基地局の整備は簡単ではありません。そこでまずは、既存の基地局を最大限活用するため、2023年夏に3つの対策を実施しました。

登山人気の高まりとともに、山岳地帯での通信需要が増えた

最初に行ったのは、「電波の届き方」の調整です。山麓にある最寄りの基地局から出る電波の角度を、より適切な方向に変えることで、山頂部まで届きやすくしました。
次に取組んだのは、山頂付近と平野部での「電波の棲み分けです。たとえば、複数の音が同じ大きさに聞こえると聞き取りづらいように、電波が同じレベルで複数受信すると“干渉”といって通信が不安定になります。そこで、平野部は別の基地局との通信を優先させるなどして、干渉を避け、山でも安定してつながるよう調整しました。
さらに、白山室堂ビジターセンターや南竜山荘の屋内に設置された電波を増幅する装置の「設定の最適化」を行いました。これにより、売店でのQRコード決済や食堂でのネット利用もスムーズに行えるようになりました。
これらの対策によって、白山室堂ではテキスト通信やブラウジングが可能になり、一部の通信不能だったエリアでも通信ができるようになりました。
こうした暫定対策によって一定の改善は見られたものの、通信速度や音声通話の品質には依然として課題が残っていました。そこで、より安定した通信環境の実現をめざし、ドコモは抜本的な対策に乗り出しました。

  • QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
山岳地帯での対策は、さまざまな制約があるため、非常に難易度が高い

新たな基地局とStarlinkが実現した快適な山岳通信

白山室堂・南竜エリアにおける通信品質を根本的に改善するため、新たな基地局の建設を決断。準備期間を経て、2025年にその建設が実行に移されました。この場所では光回線の敷設が極めて困難なため、最終的に選ばれたのが、衛星通信サービス「Starlink」を用いたインフラ整備でした。Starlinkは、光回線が通せない山間部や離島などでも柔軟に通信を可能にするのが特徴です。しかし、Starlinkのアンテナ設置には、大きな課題がありました。一つ目の課題は、Starlinkには空を遮る屋根や障害物を避けて、衛星との「見通し」を確保できる場所にアンテナを設置する必要があるという点です。そのため、設置場所の選定には事前の綿密な計画に加え、現地で実際の環境を見定めながら、何度も調整を繰り返す必要がありました。二つ目の課題は、現地へのアクセスの困難さです。山小屋が位置する白山室堂までは、車で行ける地点からさらに4〜5時間の登山が必要であり、重量のある機材の運搬にはヘリコプターの利用が不可欠でした。さらに、山小屋の営業期間が限られていたこともあり、設置作業はその短い期間内に完了させなければなりませんでした。こうした複数の過酷な条件を乗り越えて、今回の通信インフラ整備は実現しました。

  • StarlinkはSpaceX社の商標です。
さまざまな対策の結果、施設内でも実用に十分な通信速度が確認された

この抜本的な対策により、かつてはテキスト通信やブラウジングが精一杯だったエリアでも、動画視聴が可能なほど快適な通信が実現しました。
実際に現地でのテストでも、「山にいることを忘れるほど快適な通信ができる」と実感できました。南竜ヶ馬場でも、2025年8月にサービスが開始され、登山者がおおむねストレスなく通信できるようになりました。この成果により、長年の課題だった山でのつながりやすさが大きく改善され、登山中にSNSで写真を共有できるなど、目に見える形で通信品質が向上。2025年度のドコモの通信改善 取組み宣言における重要な目標を達成しました。

  • 「2025年度 ドコモの通信改善 取組み宣言」についてはこちらをご確認ください。

山岳エリアでの経験を次の課題解決へとつなげる

白山エリアでの通信環境改善という挑戦は、目に見える形で成果を上げました。新設した2つの基地局は、これまで通信が困難だったエリアをカバーするだけでなく、通信量の多くなる登山シーズンでもつながりやすい通信環境を実現。登山客が快適にモバイル通信を楽しめるエリアへと進化しました。サービス開始後も、基地局のパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、遠隔による調整作業を継続しています。
今回のプロジェクトで得られた技術やノウハウは、白山エリアに限らず、他の山岳地域や光回線の敷設が困難な地域、さらには災害時の一時的な通信手段の確保といった、さまざまなシーンで活用できるものです。
プロジェクトに携わったメンバーは、自ら構築した基地局を通じて、登山客がSNSで写真を共有する様子や、山小屋で快適にネットが使われている光景を目の当たりにし、「通信キャリアとしての使命を果たせた」という大きなやりがいと誇りを感じています。
ドコモはこれからも、新たな挑戦で得た経験を次の現場に活かし、通信が届かない空白地帯をひとつでも減らしていけるよう、挑戦を続けていきます。

  • 株式会社NTTドコモ 北陸支社
    ネットワーク部エリア推進担当

    浅井 勝芳

  • 株式会社NTTドコモ 関西支社
    ネットワーク部ネットワーク計画 移動無線計画 主査

    本多 勇佑斗

  • 株式会社NTTドコモ 関西支社
    ネットワーク部ネットワーク計画 移動無線計画

    西村 亮祐

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