Starlinkを活用した船上基地局訓練。災害時こそ「つながるあんしん」を
いち早く届ける。

ドコモが設立当初より推進してきた、災害に強い通信サービスを提供するための取組みは、2011年の東日本大震災を契機に既存の通信設備の強化にとどまらない対策へと進化しています。2022年には沖縄水産高校の協力のもと、災害時に陸からの通信復旧支援が困難な状況を想定した「船上基地局」導入のための検証訓練を開始しました。この訓練は、海からの迅速な復旧をめざす重要な取組みです。今回は2024年に実施した沖縄水産高校の実習船を活用した訓練の内容と、ドコモの災害対策に込めた思いをご紹介します。
沖縄水産高校の思いも乗せた、船上基地局訓練
ドコモでは、大規模災害の際に早期復旧が難しいと判断される基地局エリアに対する代替策として、移動基地局車や人工衛星を利用した復旧などさまざまな訓練を行っており、あらゆる手段を用いて通信を復旧する方法を模索しています。
四方を海に囲まれた沖縄においても、災害時の通信復旧手段の確立は最重要課題のひとつです。陸地での復旧対応が困難となった場合、想定されるのは海上からの通信支援です。これを実際の災害時でも有効的な通信手段とするために、ドコモでは海から陸へ電波発射することができる、船上基地局の開設に向けた訓練に取組んできました。

沖縄で船上基地局の訓練を実施するために、まず沖縄県と連携。その上で訓練に必要となる船を保有する沖縄水産高校に協力を依頼しました。学校側も、以前から災害や有事の際に実習船を役立てたいと考えていたことから両者の思いが一致。災害支援に対する思いでつながったドコモと沖縄水産高校は、2022年3月「実習船『海邦丸』の多目的利用推進に関する連携協定」を締結、ドコモが持つ災害に強いネットワーク構築のノウハウを活かした、新しい通信復旧手段の確立をめざします。最終的な目標は、船上基地局から発射された電波によって、通信障害が発生した地域のエリア復旧を支援することと、災害時における通信を確保することです。
初導入された「Starlink」で挑む、海からの通信支援
沖縄では実習船を利用した船上基地局訓練は初の試みであり、確立されたスキームのない取組みでした。必要な人員の数から訓練にかかる想定時間に至るまで、すべて手探りの状態だったため、訓練は検証を重ね、段階的に進められました。2022年の1回目は機器積み込みの訓練、2023年の2回目は広範囲に衛星通信サービスを提供する「J-SAT」を使用した岸壁での電波照射訓練を実施。そして2024年、3回目の訓練では初の「Starlink」を運用した船上基地局から陸に向けた電波発射訓練に踏み出します。StarlinkとはSpaceX社より提供されている低軌道衛星を活用した通信サービスです。上空から通信サービスを提供するため、地上インフラの影響を受けにくく、災害に強いという特徴があります。ドコモでは、土砂崩れによる光回線の断線など深刻な被害をもたらした能登半島地震を契機にStarlinkの導入を加速し、地震後の復旧活動や2024年の台風10号、奥能登豪雨など、さまざまな災害対応での活用を進めています。

Starlink最大のメリットは、「小型で設置が早い」こと。装置の小型化により小回りがきく船への設置も可能になり、陸地に近づきやすくなるため運用エリアの拡大が期待されます。装置構成も複数の機器が必要だったものがコンパクトに一体化され、積み込みや設置にかかる時間が大幅に削減できました。実際、今回の訓練では、従来の装置構成と比較して設置にかかる時間を約1時間45分短縮、訓練の開始から約3時間後には電波発射に成功しました。一刻を争う災害時において、より速やかに通信を復旧させることは極めて重要です。この約2時間の時間短縮を実現したことで、命を救える可能性が高まったという手応えを実感することができました。

肝心の電波についても、船上基地局から3km離れた測定ポイントで、陸上基地局と遜色なく快適に使用できることを確認しました。海上という環境で通信を確保できたことは大きな成果となりました。
「つながるあんしん」のために、新しいチャレンジをしつづける
今回の訓練は、Starlink初導入でありながら設置の時間短縮や安定した通信の提供に成功しました。しかし実際に船の揺れがある状況下での作業は想定以上に難しく、装置へ波がかぶるなど、海上という特有の環境への対策が今後の課題となりました。この課題を解決するべく、ドコモは2025年度も船上基地局の訓練に取組んでいきます。さらに、より高速で広帯域な通信を可能にするための機器構成の検討や、船のサイズ変更による運用エリアの拡大など、新しい領域への取組みも計画中です。

そしてこの取組みは、地元の学校である沖縄水産高校の協力で成り立っていることも重要な要素です。ドコモが地元の海で、地元の船で、災害対策を行っているということは、地域にとって万一の際のあんしんにつながります。これからも実習船を活用した取組みに力をいれながら、より強固な連携で地域を支えていきたいと考えています。災害時において、通信は命にかかわる重要なライフラインです。だからこそ大災害が起きた場合、陸海空のあらゆる復旧手段を活用し、少しでも早く「つながるあんしん」を提供できる通信インフラを構築することがドコモの役割。これからも地域や自治体と連携しながら、一丸となって災害対策を進めていきます。
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株式会社ドコモCS九州 沖縄支店
ネットワーク部安永 佳史
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株式会社ドコモCS九州 沖縄支店
ネットワーク部 担当課長玉那覇 兼弥
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株式会社ドコモCS九州 沖縄支店
ネットワーク部 担当部長寺園 隆伸
