仙台駅と周辺の通信環境を抜本的に改善 さらなる速度向上まで見すえた取組み

アフターコロナの人流回復に伴い、JR仙台駅内で通信容量がひっ迫し、電子決済などお客さまの通信に影響がおよびました。仙台駅からもご相談をいただく状況となり、根本的な解決のため駅構内に小型の通信設備(IMCS)の導入を決定。2024年12月に駅全体のカバーを完了しました。駅構内の通信環境が改善しただけでなく周囲の基地局にも余力が生まれ、駅周辺エリアの通信環境も向上しています。
アフターコロナで通信環境の課題が顕在化
JR仙台駅(JR東日本 東北本部管轄。以下仙台駅)は、在来線・新幹線あわせて一日約11万4千人(2023年度)が利用する、東北地方で最大規模のターミナル駅です。通信環境の課題が明らかになったのは、コロナ禍が明けて人流が回復してきた2022年後半。データ通信量が大幅に増加し、「駅構内でつながりにくい」というお客さまの声とともに、仙台駅からもご相談をいただくようになりました。
また、仙台駅や併設された駅ビルのなかには、「東北の玄関口」にふさわしく土産物店や飲食店など多数のテナントが入居しています。各店舗で電子決済が普及しはじめたことで、容量ひっ迫によるお客さまへの影響はさらに顕在化していきました。
通信環境悪化のもうひとつの要因として、
仙台駅周辺の街並み変化により、希望とする基地局設備による対策が進められなかったこともあげられます。再開発により電波環境の変化が頻繁にあり、基地局の新設や増強による対策効果が得にくい環境となっていました。このような状況でも、以前の仙台駅であれば平常時に支障が出ない通信環境を維持できていましたが、コロナ禍後のデータ通信量の急増を受けて抜本的な対策が必要となりました。
JR東日本と課題を共有、連携して解決へ
通信容量のひっ迫は仙台駅をご利用されるお客さまだけでなく、駅係員が使用する業務用の端末などにも影響をおよぼしはじめました。お客さまに快適で安心なご移動をご提供するためには、構内の通信対策が最優先事項であることがドコモ東北支社と仙台駅との間での共通認識になりました。さらに現場や支社のレベルにとどまらず、ドコモの本社とJR東日本の本社との間でも状況を共有するなど連携を強化。2023年12月に協議の場が設けられ、翌2024年1月から仙台駅構内の通信環境改善に向けた計画を実行していきました。
協議の結果、仙台駅への導入が決まったのはIMCS(インクス、Inbuilding Mobile Communication Systemの略)というシステムです。屋外でキャッチした電波を施設内で増幅し、天井に取り付けた子機を通して屋内に電波を供給します。子機は非常に小型のアンテナなので施設内の景観を損ねることもなく、ビル内や地下街において多くの設置実績があります。

仙台駅の場合、電波改善のために基地局を増設しようとしても周辺の再開発に影響されてしまうほか、仮に増設されても、広く複雑な駅内ではその恩恵を受けにくい箇所が発生する可能性もあります。IMCSであれば、施設内にケーブルさえ通せれば外部の環境や施設の形状を考える必要がなく、これまで仙台駅の通信環境が抱えてきた構造的な課題を解決できると期待されました。
段階的に駅内の通信環境を改善
「ケーブルさえ通せれば」というIMCSですが、それが仙台駅にとって大きな壁でした。屋内のアンテナ一つひとつの有効範囲は半径20m前後。駅全体をカバーするためには相当数の装置を設置する必要があるだけでなく、駅に張り巡らされているあらゆる配管がすでに多数のケーブルでいっぱいになっており、IMCSのスペースを確保するためには地道に整理していくほかない状況だったのです。さらに、駅の利用者がいる間は作業できないため、終電から始発までの限られた時間で現地調査や工事を進めなくてはなりません。
はじめは一挙に駅全体の改良工事を進める案もありましたが、お客さまの駅の利用状況なども踏まえて段階的に工事を実施することに決定。まずはエリアごとに安定した通信を確保、その上で速度アップをしていく計画とし、フェーズ1として改札外エリアを、フェーズ2として改札内エリアにIMCSを導入していきました。

工事を一気に進める形ではなくなりましたが、お客様のために1日でも早く快適な通信環境を提供したいという思いは変わりません。仙台駅にも多大なご協力をいただき、各工程に要する時間を大幅に短縮していきました。結果として、通常は5か月ほどかかる規模だったフェーズ1の工事を3か月程度に縮めることに成功し、2024年8月に完了。そしてフェーズ2の工事も12月に終え、仙台駅全体でのIMCS導入が完了しました。

駅の通信環境改善が周辺エリアにも波及
IMCSの導入により、仙台駅内で問題となっていた場所の通信環境は大幅に改善しました。電子決済などの通信サービスも快適に使いやすくなり、フェーズ1完了後の2か月間では、仙台駅内の通信に関してお客さまからドコモへ寄せられたお声は大幅に減少しました。駅係員の業務においても、「みどりの窓口」などで通信が改善していることをご確認いただいています。

また、仙台駅内だけでなく駅の周辺エリアでも通信品質が向上しています。これまで仙台駅周辺の基地局は一定の容量を駅構内に対して割かなければいけなかったのですが、IMCSの導入によって大きく緩和されました。各基地局を改めて調整・最適化していったことで、周辺エリアにおいてもIMCS導入前と比べてお客さまから通信に関してご意見をいただく機会は減少しています。
「通信の高速化」に向けて取組みを継続
仙台駅の通信改善は、今後も継続して行っていきます。東北支社における通信改善取組み宣言※のひとつである「2025年3月末までに、仙台駅周辺の設備容量を最大2倍に増強」の達成に向け、フェーズ3としてさらなる改良が進行中です。この工事が完了すれば、仙台駅内と周辺の通信はさらに速度が向上する見込みです。
快適な通信環境をご提供できるよう、掲げた目標の完遂を引き続きめざしてまいります。
- 通信改善取組み宣言についてはこちらをご確認ください。
- 駅の通信に関するお問い合わせは、ドコモお客様サポートまでお願いいたします。
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https://www.docomo.ne.jp/support/inquiry/feedback/
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株式会社NTTドコモ東北支社
ネットワーク部
移動無線計画担当 主査畠 崇
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株式会社ドコモCS東北 ネットワーク建設事業部
アクセスリンク建設部 建設推進
主査永岡 豊
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株式会社ドコモCS東北 ネットワーク建設事業部
ネットワーク建設推進部 東北置局設計
主査伊東 慶太郎

