京都競馬場と周辺の通信環境の整備 2024年菊花賞での取組み

2024年10月20日(日)、京都競馬場においてGⅠレース「菊花賞」が開催されました。2023年の京都競馬場リニューアル以降、特に多くの観客が訪れるGⅠレースにおける通信環境の改善を重ねてきましたが、今回は関西エリアでは初の構成となる移動基地局車を配備することで、安定した通信環境を実現しました。
エンターテインメントにも安全にも欠かせない通信
京都競馬場は2023年4月にリニューアルされましたが、直後のGⅠレース天皇賞(春)で通信環境の課題が明らかになりました。リニューアルの前後でスマートフォンの使われ方が変化したことが主な理由です。レースの予想や馬券の購入だけでなく、レース映像のライブ配信などをスマートフォンで視聴する楽しみ方が普及。また、電子チケット型入場券が導入されたことで、想定を上回るデータ通信量が発生するようになりました。結果として、観客の多いGⅠレース開催日になると、人が密集する入場ゲート付近、出走馬の下見をするパドックやゴール前などの場所で通信が不安定になる状況が発生していました。お客さまに快適な通信環境を提供するため、JRAさまと連携し、早急に対策に乗り出しました。

また、2023年11月のエリザベス女王杯では、救護班の連絡手段にドコモのスマートフォンが使われていたこともあり、来場者のみなさまの楽しみだけでなく安全に対する責任を担っていることも再認識しました。
菊花賞は、京都競馬場で開催されるGⅠレースのなかでも、特に多くの観客が見込まれます。そこで、2024年の菊花賞ではこれまで以上の対策を実施することを決定。5G対応の移動基地局車を2か所に配備し、特に混雑するパドックやゴール付近へは大容量化を実現するため、関西エリアでは初の試みとして「マルチユーザMassive MIMO※1」と「マルチビームアンテナ※2」を組み合わせ、通信環境を改善しました。
- 多数のアンテナ搭載した専用の装置を用いることで、一人ひとりに高品質なエリアと専用の周波数リソースを提供することができ、混雑時でも快適な通信環境を実現しやすくなります。
- 1台のアンテナで複数の方向に電波を発射できるアンテナです。マルチビームアンテナ1台で通常のアンテナの最大5台分の働きをすることができるようになり、より安定した通信を提供することができます。
移動基地局車導入における設置スペースのハードル
移動基地局車の配備にあたっては、競馬場の限られた敷地内で、駐車可能かつ電波を効果的に届けられるスペースを確保できるかが焦点となりました。なかでも「マルチビームアンテナ」は重量の都合上、移動基地局車の支柱には取付けられないため、高所作業車であるバケット車が追加で必要になります。広いスペースを確保するために電波を届けたい場所から距離が離れたため、高さの確保を目的にすべてのアンテナをバケット車に装備しました。これにより、設置スペースを確保しつつ、ねらった場所に電波を届けることができました。


また、移動基地局車の配備後は電波干渉の対策が必要になります。京都競馬場内には複数の既存基地局があり、移動基地局車からの電波とぶつかりあうことで、かえって通信が不安定になる場合があるためです。入場ゲート、パドック、ゴール前などスポットごとに受信する電波のバランスを細かく調整することで、干渉を防止しました。
競馬場外の通信環境も整備
今回の対策では競馬場外の通信環境の整備も行いました。京都競馬場は住宅地に隣接しており、これまでも大きなレースがあると周辺住民の方から電波がつながりにくくなるというお声をいただいていたためです。また、最寄りの淀駅の混雑を想定して既存の基地局のアンテナ角度を微調整するなど、場外においてもスポットごとに通信環境の改善対策を実施しました。
快適な通信環境の提供にむけて
当日の会場全体の通信速度を計測した結果、2023年の菊花賞から会場平均スループット(ダウンロード)は約2.2倍※3、ゴール前スタンドは3.1Mbps→57.4Mbpsへと向上。現地で迫力あるパドックやレースを見るだけでなく、スマートフォンで馬券の購入やライブ配信の視聴もするという、競馬場ならではの新しい楽しみ方を満喫していただける通信環境をご提供することができました。
- 最繁時間帯、5G端末利用時の自社調べとなります。
2025年の大阪万博をはじめ、関西においてはさまざまなイベントが控えています。お客さまの楽しみと安心を支え続けられるよう、今回のような臨時の対策だけでなく、恒常的な設備増強も含めて快適な通信環境を構築していきます。

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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク運営事業部 アクセス・リンク運営部
アクセス運営担当山本 修平
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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク建設事業部 ネットワーク建設推進部
置局 置局設計(関西)永田 未来
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株式会社ドコモCS関西
ネットワーク運営事業部 エリア品質部
エリア品質技術担当竹下 創
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株式会社NTTドコモ 関西支社
ネットワーク部
ネットワーク計画 移動無線計画担当山口 慎太郎