オートポリス(大分県日田市)における継続的な電波改善の取組み
-「SUPER GT」に向けて5G対策を年々強化-

九州唯一の国際サーキットであるオートポリスでは、2022年のSUPER GT開催時に通信環境に関する課題が浮き彫りになりました。ドコモは移動基地局車の導入により2023年に快適な観戦体験を提供、2024年には5G環境の整備を通じてより快適な通信環境を構築するなど、地域経済へのさらなる貢献をめざすオートポリスの取組みに協力しています。
2022年のSUPER GTで起きた「つながりにくい問題」
大分県日田市にあるオートポリスは、九州唯一の国際サーキットとして、「SUPER GT」や「SUPER BIKE RACE」「SUPER FORMULA」などのモータースポーツイベントを開催しています。なかでもSUPER GTは、国内最高峰シリーズのひとつで、予選・決勝の2日間で約2万人のモータースポーツファンが全国各地から訪れます。

通信環境の課題が明らかになったのは、2022年10月に開催されたSUPER GT第7戦です。電子チケットに加え、この年からライブ配信アプリが導入されたことで、基地局設備の処理能力を超えるデータ通信量が発生。電子チケットを表示しづらい、ライブ映像を視聴しづらいといった問題が発生しました。
ライブ配信アプリはレースの進行状況をリアルタイムで伝えるもので、観客は常にライブ映像を視聴しながらレースを楽しむことができます。このライブ配信アプリは無料のため多くの観客にご利用いただいた結果、データ通信量が大幅に増加して通信速度が低下するという状況になりました。
オートポリスが実施した来場者アンケートには、「電子チケットが表示できず困った」「仲間と連絡が取れずに困った」「ライブ配信アプリがほとんどつながらなかった」などの不満の声が寄せられました。
2023年は移動基地局車により通信環境を改善
2022年のイベント後、オートポリスさまからの改善要請を受け、ドコモは早急に改善に着手。まず、通信品質悪化の原因を探るためトラヒック分析を行ったところ、オートポリスをカバーする基地局の帯域不足と、特定の基地局に通信が集中していたことが判明しました。


2023年10月のSUPER GTに先立ち、5月の「SUPER FORMULA 2023」では既存基地局のアンテナの角度を調整するといった対策を講じ、通信環境の改善を試みました。しかし、決勝日のメインスタンドで通信が不安定になることがあり、さらに多くの観客が見込まれるSUPER GTでは、既存設備だけで対策することが困難と判断しました。
そこで導入を検討したのが移動基地局車です。移動基地局車をどこに設置するのが効果的かを探るため、現地調査を実施したものの、設置環境の制約やエリアカバーの問題から適切な場所が見つからず、検討は難航しました。しかし、そのような状況のなか、オートポリスさまから、「メインスタンド正面に設置してはどうか」というご提案をいただきました。この場所への設置は想定していなかったものの、データ通信が最も集中するエリアを直接カバーできるため、最終的にメインスタンド正面に移動基地局車を設置することが決定しました。


移動基地局車の導入により、2023年のSUPER GTではメインスタンドを中心に良好な通信環境を実現。ライブ映像を視聴しながらレースを楽しむという観戦スタイルを観客のみなさまにご提供することができました。
2024年の追加対策は、いつでも快適な通信環境実現に向けた第一歩
2024年のSUPER GTでは、より快適な通信環境を提供するため、移動基地局車の運用に加え、オートポリス内の基地局に5Gを導入しました。具体的には、80MHz幅のNR(New Radio)バンドを活用した5G環境を構築することで、大容量のデータ通信に対応できるネットワークを整備。これにより、ライブ映像の常時視聴や動画ファイルの送受信が増加しても快適にご利用いただけるようになりました。



また、このような基地局の強化は、移動基地局車など臨時の対策に頼らない、恒常的に速くて強い通信インフラの整備に向けた一歩でもあります。移動基地局車の第一の目的は災害時に通信を確保することであり、最終的には移動基地局車を運用することなく、常時快適な通信環境を提供することをめざしています。
地域の発展を支える通信インフラ事業者としての使命感と挑戦
オートポリスには年間約10万人が来場し、サーキット周辺には宿泊施設やキャンプ場、温泉などが整備され、レース観戦とともに周辺市町村や阿蘇くじゅう国立公園などの観光を楽しむことができます。地域の雇用創出、産業・文化振興にも貢献しています。株式会社オートポリスの得田浩一氏(営業部部長)は、「私たちはモータースポーツの枠にとどまらない社会的・公共的な存在で、地域全体を盛り上げていく必要があります。この思いに共感する企業との協業を深めていきたい」と話します。
ドコモは、地域経済におけるオートポリスの重要性を踏まえ、より高速・大容量の「瞬速5G」を2025年度までに導入し、周辺地域を含めたさらなる5Gエリア化を図っていく計画です。
■オートポリス
https://autopolis.jp/ap/

-
株式会社ドコモCS九州
大分支店 ネットワーク部奥畑 和俊
-
株式会社ドコモCS九州
大分支店 ネットワーク部園田 花瑠菜