地域からのお知らせ(東海)

5Gを活用した『次世代観光ガイドシステム』にて世界遺産白川郷の観光客の滞在時間延長等の効果を確認
~総務省「令和2年度 地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」案件~
<2021年3月10日>

株式会社十六銀行
株式会社十六総合研究所
株式会社NTTドコモ東海支社

株式会社十六銀行(頭取:村瀬 幸雄)のシンクタンク子会社である株式会社十六総合研究所(取締役社長:秋葉 和人、以下「十六総研」といいます。)と株式会社NTTドコモ(代表取締役社長:井伊 基之、以下「ドコモ」といいます。)は、岐阜県白川村と共同で、総務省「令和2年度 地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」において、観光客の滞在時間延長と分散化をテーマに5Gを活用した『次世代観光ガイドシステム』を開発し、令和2年12月15日(火曜)から6日間、世界遺産白川郷の荻町合掌造り集落エリアにて、一般観光客向けに効果検証のための実証実験を行いました。

また、令和3年1月から2月にかけて、観光客受け入れ側の地域住民や一部システム開発に携わった白川郷学園の生徒への報告会やヒアリングなどを実施いたしました。

その結果、5Gを活用した高画質映像やAR技術により、観光客を混雑エリアから周辺部に分散させることについて一定の効果を確認しました。
また、次世代観光ガイドシステムを持ったグループは、持たないグループに対して15分の滞在時間延長効果があること、さらに、リピーターのみに限れば、滞在時間を39分延長する効果があり、統計的にも有意であることを確認しました。この滞在時間延長効果は、白川郷の展望台に上らせる効果(36分)よりも大きい結果となりました。

このように、一定の効果があることが確認できましたので、新型コロナウイルスの影響が収束し、白川郷に全世界から観光客が以前のように押し寄せる状況が再び到来することを見据え、今後は『次世代観光ガイドシステム』が持続可能な形で白川村において活用されるよう、あるいは他の地域や他の領域でも横展開されるような事業化の方法論を模索してまいります。

5Gを活用した『次世代観光ガイドシステム』の概要

地域課題・背景

世界遺産の合掌造り集落を有する岐阜県大野郡白川村では、観光客による混雑やマナーの乱れなど、地域住民の生活や自然環境に負の影響が発生している(オーバーツーリズム)。このオーバーツーリズムを緩和し、持続可能な観光地となるべく、本実証においてはⒶ人材不足の緩和、Ⓑ分散、Ⓒ人材育成、Ⓓマナー啓発、Ⓔ観光消費額向上を5つの重点課題とした。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点や、急減した観光需要喚起等の目的も踏まえ、これらを解決するシステムの開発が求められていた。

課題システム概要

上記課題を解決・緩和するため、同村のキャリア5Gエリア(NTTドコモ)を活用し、観光客に貸し出す5G対応スマートフォンを通じ、旅の時間軸および位置情報に応じて高精細でリアルタイムなコンテンツ配信を行う『次世代観光ガイドシステム』を構築した。(設計・構築協力:株式会社クロノステクノロジー)

  • 本実証における旅の時間軸の定義は以下のとおり
    “旅マエ”・・・「せせらぎ公園駐車場」に到着し、街歩きを開始するまで
    “旅ナカ”・・・徒歩で世界遺産エリアの街歩きをはじめてから、観光を終えもう一度「せせらぎ公園駐車場」に戻ってくるまで
    “旅アト”・・・観光客が街歩きを終えて「せせらぎ公園駐車場」に戻り『次世代観光ガイドシステム』を搭載したスマートフォンを返却するため、所定の上リアに到着した時
課題システムイメージ図
課題システムイメージ図

“旅マエ”においては、観光客の高揚感の醸成や閑散場所への誘導などを目的に、課題実証エリア内2か所に設置した4Kカメラからのライブ映像配信機能を搭載。

“旅ナカ・旅アト”においては、人とおりの少ない方面への分散、歴史文化の理解促進やマナー啓発、観光消費向上などを目的に、観光客の位置情報に応じPUSH通知+高精細動画等の配信を行う機能を搭載した。

(一般観光客向け)実証実験の概要

実施日程

令和2年12月15日(火曜)~令和2年12月20日(日曜) (16日、17日は悪天候により中止)

実施場所

岐阜県大野郡白川村 せせらぎ公園駐車場周辺および荻町合掌造り集落エリア

対象

せせらぎ公園駐車場内にて、参加や注意事項に同意いただいた一般観光客93組

実証手法

『次世代観光ガイドシステム』が、課題解決に資するかどうかを実証するため、
A:本システムを搭載した5G対応スマートフォンを貸与して周遊してもらう観光客(実績:54組)
B:本システムを搭載していないスマートフォンを持ち歩き、通常に周遊してもらう観光客(実績:39組)を比較するABテストを採用。

それぞれの位置情報ログデータより、周遊ルートの変化、分散状況や滞在時間等を分析するほか、『次世代観光ガイドシステム』が観光客にもたらす意識変化等も考察するため、それぞれの実証参加者に返却時にアンケートに回答いただいた。

実証風景
実証風景1
実証風景2
(参考) 観光客受け入れ側の観点について

本実証の重点課題のうち、Ⓐ人材不足の緩和、およびⒸ人材育成の観点においては、観光客のみならず、受け入れ側の地域住民側にどのように取組んでもらうか、どのように受け入れられるか、どんな課題が残されるかなどの観点で検証が必要であるため、一般観光客への実証実験とは別に『次世代観光ガイドシステム』の体験等を実施した。

特にⒸ人材育成の観点から、義務教育学校白川村立白川郷学園生徒においては、複数回の授業を経て、『次世代観光ガイドシステム』における“旅ナカ”の歴史・文化の理解を促進するコンテンツ制作に携わってもらい、最後にその成果について発表会を行った。

白川郷学園 成果報告会の様子
白川郷学園 成果報告会の様子1
白川郷学園 成果報告会の様子2

実証実験の結果(速報)

Ⓐ人材不足の緩和について、Ⓑ分散について・・・・結果 〇

  • 行動変容率:「映像に惹かれてそこに行くことにした」と回答した割合

映像による誘導効果はコンテンツによって効果に差がみられたが、ARによる分岐点での行動変容率は88.9%と高く、村の混雑エリアから周辺部に誘導・分散する効果を確認できた。
また、展望台や三連合掌への行き方は、村の観光案内所で最も良く聞かれる質問であり、次世代観光ガイドシステムでの誘導による省力化が可能であると確認できた。

Ⓓマナー啓発・・・結果 △

マナー啓発コンテンツを実装したが、次世代観光ガイド端末によるマナー啓発効果なのか、もともとの日本人のマナーの良さなのかを見分けることは難しいと解釈。

豊かな観光体験の効果

豊かな観光体験が与えられたかの代理変数として「再訪(リピート)意向」を調査
再訪意向は、平均値で0.3ポイントA群のほうが高い結果。
また、A群はすべての回答者が7点以上をつけた点で、B群よりも底上げする結果となった。

Ⓔ観光消費額向上・・・結果 △~〇

結果だけを見れば、A群3,189円、B群2,607円と、A群のほうが平均消費額が高いように見える。
だが、A群の事前期待4,565円⇒実績3,189円であるのに対し、B群の事前期待3,188円⇒実績2,607円という結果。
A群はもともと事前期待が大きいことが要因。
⇒観光消費額を喚起できたという結果は残念ながら確認できなかった。

滞在時間延長効果

全体の滞在時間延長効果

次世代観光ガイドシステムを持ったことにより、持たない人に比べて、滞在時間が15分延長する効果を見出した。
だが統計的には有意ではない結果に。(ばらつきが大きいため)

リピーター旅行者の滞在時間延長効果

次世代観光ガイドシステムを持ったことにより、持たない人に比べて、滞在時間が39分延長する効果を見出した。
かつ、統計的にも有意であり、展望台効果(36分)よりも大きい結果に。

観光消費額に関しては統計的に有意な結果は見出すことができなかった。

課題

滞在時間延長や満足度向上という点では、次世代観光ガイドシステムの有効性を確認できた。しかし一方で、「有料であっても使いたい」というユーザーは30%にすぎず、ユーザーに直接課金するというビジネスモデルが成立するかどうかについて、本実証では有力な確証は得られなかった。

また、「ARの矢印と画像のガイドがもっとたくさんあれば、地図が読めない人にもわかりやすい」「もっと情報がほしかった」など、観光ガイドシステムとしては、もっと多くの情報を収載することが求められることが、アンケートの意見から得られた。
また、アンケートの自由記述欄において、本ガイドシステムが天候に左右されやすい点について指摘があり、課題が残った。


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