地域からのお知らせ(北陸)
「シェアリングオペレーション最適化システム」の全国展開に向けて、
金沢市でAIを活用した再配置最適化の実証実験を開始
~金沢市公共シェアサイクル「まちのり」をより便利に使いやすく~
2024年10月31日
株式会社ドコモ・バイクシェア
株式会社日本海コンサルタント
株式会社NTTドコモ
株式会社ドコモ・バイクシェア(以下、ドコモ・バイクシェア)、株式会社日本海コンサルタント(以下、日本海コンサルタント)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、ドコモが開発した「シェアリングオペレーション最適化システム」(以下:本システム)の全国展開をめざし、2024年10月31日(木曜)から、金沢市公共シェアサイクル「まちのり」※1において、AIを活用した再配置最適化の実証実験を開始します。
本システムは、自転車の再配置とバッテリー交換作業を同時に最適化するもので、AIが貸し出し・返却の履歴といった実績データや気象データ、曜日や時間帯などのさまざまなデータから需要を予測し、再配置用のトラックに積載されている自転車台数・バッテリー数やトラックごとの最大積載可能台数、ポート間の移動距離なども考慮して、再配置作業を行うポートの順序と各ポートでの自転車の回収・配置台数やバッテリー交換台数を最適化した再配置ルートを生成します。
本実証実験では、「まちのり」におけるAIを活用した再配置最適化の有効性を、ポートの自転車不足やバッテリー切れによる機会損失の減少やサービス品質の向上といった観点で検証します。なお、本実証実験は金沢市交通政策課の協力のもと実施します。


「まちのり」は2020年3月よりドコモ・バイクシェアと連携し、金沢市公共シェアサイクルとして現在運用しています。近年は利用が大きく増加していく一方で、各ポートの自転車配置数やバッテリー状態を適正に保つ「再配置業務」の適正化が運用上の大きな課題となっています。 再配置業務はこれまで運営事業者の経験則に頼ってきましたが、ドコモが開発した本システムを活用することで、作業員はAIにより生成された再配置ルートを専用のタブレット端末などで確認しながら、再配置およびバッテリー交換作業を容易に実施できるため、経験の浅い作業員でもノウハウを持つ経験者と同様に作業を行えるようになります。

本システムはドコモ・バイクシェアの運営する一部エリア(東京広域連携エリア)で2023年から活用されており、機会損失の回避やポートの溢れの緩和といった効果が実証されていますが、本システムの全国展開をめざし、ドコモはエリアごとのシェアサイクルの特色や課題に合わせて需要予測や再配置最適化を低コストで高精度にチューニングするための技術を開発しました。今回「まちのり」に試験導入するにあたり、石川県金沢市におけるシェアサイクルサービスの特色にあわせた最適化を実現し、ポートの自転車不足解消や再配置業務の効率化といった効果が得られるか検証します。
3社は今回の実証実験を通じて、「まちのり」における再配置精度の向上を図るとともに、さらなるサービスの品質向上・利用促進をめざします。また、本システムを活用することで、全国のシェアサイクル再配置業務を人の知見に頼らず実施できるような仕組みづくりをめざします。
※1.金沢市公共シェアサイクル「まちのり」は、複数のサイクルポートのどこでも借りられて、どこでも返せる公共シェアサイクルサービスです。サイクルポートは、中心市街地はもちろん、周辺エリアも含めて計70か所以上に設置。金沢の歴史的な街並みにも映えるライムグリーンの電動アシスト自転車で、日常の移動や観光移動を支えています。 「まちのり」ホームページ:https://www.machi-nori.jp/
別紙1
AIシェアサイクル再配置最適化の実証実験概要
1. 実験の概要
ドコモの開発した「シェアリングオペレーション最適化システム」を「まちのり」の再配置業務に試験導入し、「まちのり」におけるAIを活用した再配置最適化の有効性を検証するため下記の実験を行う。
・本システムを活用して再配置業務を行う
・ポートの自転車不足やバッテリー切れが解消されたか、効率的に作業を実施できたかという観点で有効性を検証する。
2.実験の場所
金沢市公共シェアサイクル「まちのり」提供エリア全域
3.実験の期間
2024年10月31日(木曜)〜2025年3月31日(月曜)
4.各社の役割
ドコモ・バイクシェア | ・各種データの収集・提供 |
日本海コンサルタント | ・AIを活用した再配置業務の実施 |
ドコモ |
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別紙2
「シェアリングオペレーション最適化システム」の概要
1.シェアリングオペレーション最適化システムを構成する技術
シェアリングオペレーション最適化システムは、需要予測技術、再配置計画技術の2つによって構成されています。
① 需要予測技術
需要予測技術は、各ポートにおける車両の貸し出し台数、返却台数を24時間先まで1時間ごとに予測する技術です。シェアリングサービスの利用に関するリアルタイムデータおよび統計データに加え、気象予報データや曜日や時間帯など、さまざまなデータを用いて機械学習を行うことで、日々変化する利用需要の高精度な予測が可能となります。

② 再配置計画技術
再配置計画技術は、シミュレーション結果をもとに、車両の回収・配置作業とバッテリー交換作業を同時最適化※1する再配置ルートの計画を一定時間先まで生成する技術です。作業を行うポートの順序だけでなく、各ポートにおける車両の回収・配置台数やバッテリー交換台数についても最適な値を求めることができます。将来の需要予測結果も考慮されるため、利用される可能性の高いポートでのバッテリー交換を優先したり、返却需要が急増することが見込まれるポートからは事前に車両を回収したりと、将来生じ得る問題に前もって対応できる再配置計画を生成することができ、経験の浅い作業者のサポートや新エリアでの効率的な作業ルート開拓に役立ちます。

2.全国展開に向けた新たな技術
シェアリングオペレーション最適化システムの全国展開に向けて、新たに以下の技術を開発しました。
① 低コスト・高精度な需要予測技術
需要予測の品質を保ち続けるためには、定期的に需要予測モデルを再学習する必要があります。全国展開後もそれぞれのエリアの需要予測モデルを再学習させるためには、学習コストが低く、また精度も高いモデルを新たに開発しました。
② 深層学習を用いた再配置計画技術
エリアごとに異なるサービス特性や運用上の課題にあわせたより柔軟な再配置最適化を実現するため、深層学習を用いた再配置計画技術を新たに開発しました。従来技術はルールベースで再配置計画を決定しており、新たなエリアに導入する際には人がルールも設定する必要がありましたが、深層学習を用いた再配置計画技術を用いることで人の介入をおさえてエリアの特性にあわせた再配置最適化が可能となりました。

※1.同時最適化とは、システムにより制御可能な機能について適切な動作を繰り返し実行させることで、複数の相異なる指標の組み合わせから算出される評価値を最大化あるいは最小化するための計算処理のこと。