地域からのお知らせ(中国)

妊産婦の緊急搬送を情報でサポート!
妊産婦の緊急搬送補助システム「iPicss」の実証事業を開始
~効率かつ効果的な患者情報共有システムを構築~

2019年4月16日

国立大学法人岡山大学
株式会社NTTドコモ 中国支社

 国立大学法人岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室(以下 岡山大学)は、2019年5月7日(火曜)より、妊産婦の緊急搬送補助システム「iPicss®(アイピクス、以下iPicss)」の岡山県全域での実証事業を開始します。実証事業開始にあたっては、株式会社NTTドコモ中国支社(以下 ドコモ)が協力を行っています。

 iPicssとは、突如発症する妊産婦の超緊急搬送が必要な状態の際に、迅速搬送と搬送受入施設での情報共有を円滑にすることを目的に開発した、携帯アプリを用いた搬送補助システムです。
 岡山県では、妊産婦の超緊急搬送時の患者情報の共有を、従来型の紹介状などのFAX送付や、受入施設到着後の情報交換により行っていましたが、情報の過不足、FAXの不便性といった問題があり、情報共有のためのシステム構築が求められていました。
 iPicssは、専用の搬送用チェックシートをスマートフォンやタブレットのカメラで撮影し、受入施設に送信できるアプリです。このアプリにより、スマートフォンやタブレットの配備で、搬送元施設、搬送受入施設間の情報共有を円滑に行うことができます。
 また、情報の過不足を防ぐよう、専用の搬送用チェックシートは必要な情報を短時間で記載できるよう工夫しています。
 なお、iPicssは、アプリを岡山大学独自で開発し、セキュリティ対策を行い、且つ、携帯電話のネットワーク網を活用することで、低コストでの開発・運用を実現しています。
 さらに、岡山県内の全分娩取扱い施設へタブレットを配備したことから、災害時の病院施設の状況を把握するために開発したiPicss災害モードとドコモが提供するクラウド型Web会議サービス「sMeeting」による、災害発生時の情報連携の仕組みづくりにも取り組みます。
 岡山大学は、2021年3月まで実証事業を行い、2021年4月以降の全国でのiPicss実用化をめざし、周産期医療連携のモデルケースとして、全国へ情報発信を行う予定です。

「iPicss」イメージ

事業概要

1.目的

 医療機関の機能分化に関しては、特に周産期医療では偏在が顕著な当県において、周産期医療を安心安全に提供するための搬送体制の強化が重要であり、岡山大学で開発した周産期緊急搬送補助システムiPicssを用いて緊急搬送連携体制の推進を図る。
 そして搬送通信・伝達手段を統一させることで超緊急事態となる疾患の発症から治療遂行に至る時間を短縮させる。

  1. 搬送元施設にiPicssApp内蔵のインターネット常時接続端末を配布。
  2. 搬送受入施設の搬送関連部署(周産期センター・手術部・救急部)にiPicss専用のインターネット常時接続端末を配布。
    これにより、搬送元と受入施設間や施設内の各部署間の連携を円滑化し、役割分担を明確化し、必要な病床へ適切に患者を移行し、病床の機能分化・連携・緊急手術の安全な遂行と円滑な情報連携をめざす。また各周産母子センター妊産婦・新生児の受入状況の報受を行う。
  3. 同システムを大規模災害時の弱者となる小児・周産期の情報共有に対し災害対策本部と病院間の情報連携システムとして使用する。
  4. 各医療圏の救急指令本部や救急車(救急救命士)とのiPicssを用いた情報連携の運用にむけたコアミーティングの開催。
  5. 事業期間における県下の全緊急搬送症例を詳細に検討し、搬送体制のさらなる改善点を明確化させていく。また他都道府県での仕様に向け本事業内容の結果を各関連機関向けに発信する。

2.実証内容

 iPicssを用いた搬送情報連携システムの県下全分娩取扱施設の導入にむけ準備を行う。

  1. 県下全分娩取扱施設に常時無線インターネット接続が可能なスマートフォン型タブレット(診療所・助産所・及び一次分娩施設に各々1台(通話が可能)、ならびに高次周産母子センター6施設に各々最大で3台(通話不能)、事業責任者へ2台)と緊急搬送情報共有シートの冊子を配布する。
  2. 運用についての説明会を各保健地域や施設で実施し、当該システムで搬送を実施することを推進する。
  3. 県内で出産される全妊婦に対し、妊娠に関する教育と急変時対応に対する啓発を促すための「お母さんと産まれてくる赤ちゃんのためのもしものために知っておいてほしいこと」の冊子の提供。 各施設での配布促進事業。報道番組からの情報提供の呼びかけ。
  4. 大規模災害時の弱者となる周産期分野の施設間・妊婦・新生児関連の情報共有に対し、災害対策本部と病院との情報連携システムのソフト開発を行う。2019年5月からの導入とする。
  5. 2019年度予算から各施設の通信用のSIMを準備し、4月に購入し、県下全域でのシステム稼働に向け、3-4月を通信テスト期間とし4-5月より本格的に全分娩施設での実施を開始する。
  6. 2019年度に1回もしくは複数回の全県下もしくは各保健区域でのiPicssを用いた災害想定シミュレーションを行う。
  7. インターネット会議等の会合を行うことができる「sMeeting」を用い、各保健区間もしくは病院間で必要時にインターネット会議や個別の患者相談等、災害時の連絡体制の手段としての有用性を検証する。

3.期間

2019年5月7日(火曜)~2021年3月31日(水曜)

4.実施場所

岡山県の全域の分娩取り扱い施設

5.役割分担

  1. 岡山大学の役割
    iPicssの実証、sMeetingの活用検討・実証
  2. ドコモの役割
    iPicss実証支援、sMeeting実証支援
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