報道発表資料

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AIが人の状況を察し、安心・安全を守りながら適切な対応に自律改善する
「高EQな音声対話技術」を確立
-EQの高い音声対話を実現するための評価指針と共通設計図を記載したホワイトペーパーを公開-
<2026年10月26日>

株式会社NTTドコモ

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、対話型AIが単なる機械的な音声対話ではなく、個々のユーザの状況や文脈に配慮し、共感力の高いコミュニケーションで安心感のある音声対話を実現することをめざし、AIに「EQ(感情指数)※1」の要素を付加するための評価指針「AI EQ+1 Framework」、およびさまざまな対話型AIへ本評価指針を組み込むための共通設計図「EQリファレンスアーキテクチャ」を策定するとともに、EQの高い対話を実現するための4つの要素技術を開発しました。

従来、対話型AIは、正確さや速さといった「IQ(知能指数)※2」の高さがもたらす「機能的価値」を中心に進化してきました。一方で、共感や状況への配慮といった「情緒的価値」を実現・評価する方法がなく、機械的な応答や不適切な迎合が発生する場合があります。今回ドコモが確立した評価指針・共通設計図・4つの要素技術は、既存のAIモデルに付加することで、AIモデル本体を作り直すことなく、声色や話の内容から人の相手の状況を察して安心感のある自然な対話を実現するものです。

具体的には、AIが相手や場に配慮して「どう振る舞ったか」を評価する指針として「AI EQ+1 Framework」を策定しました。AIの応答速度などの基本性能だけでなく、安全性や誠実性、相手への寄り添い方やキャラクタの一貫性といった質的な側面に加え、AIを利用したことによる愛着や継続利用意向など利用者への効果も踏まえてAIの振る舞いを評価します。また、対話型AIにEQの要素を組み込む際に、どのプロセスでこれらの評価を実施するかの共通設計図が「EQリファレンスアーキテクチャ」です。「AI EQ+1 Framework」および「EQリファレンスアーキテクチャ」の2つを活用して対話の結果を評価することで、AIの中核を作り直さずに対話型AIの改善点を明確にし、適切な対応へ迅速に改善することができます。

これらに加えて、ドコモは高EQな対話を実現する4つの要素技術を開発しました。対話型AIの開発において、これらの要素技術を組み込むことで、より自然で安心・安全なAIとの対話を実現することが可能です。
【高EQな対話を実現する4つの要素技術】

  1. ユーザの状態を判断するルールを自動作成する技術
    開発者の指示をもとに、表情や声のトーン、話の内容からユーザの状態を判断する際のルールを自動作成し、ユーザに最適な対応を実現します。
  2. 会話の不自然な「間」をなくすレスポンス高速化技術
    応答の文章生成から音声変換までに発生する不自然な沈黙を解消し、自然なテンポの会話を実現します。
  3. 安全性と共感を両立するEQガードレール技術
    対話の場面やユーザの状況に寄り添い、同調する内容や禁止する内容を的確に判断して適切な応答をすることで、安全性を確保しながら一人一人に寄り添った自然な会話を実現します。
  4. 使えば使うほど対話品質を高めるEQ自律改善技術
    AIとの対話ログを継続的な改善に活用することで、サービスごとに求められる配慮に沿って対話の質を向上します。

今回確立した内容に基づき、EQの要素を取り入れた対話型AIと取り入れていない対話型AIを比較して、ユーザの対話行動や心理面、継続利用に伴う評価にどのような違いが出るかを確認するため、2026年8月~10月に成人約40名を対象とする実証実験を実施しました。その結果、EQの要素を取り入れた対話設計により、利用者の継続利用意向が高まる傾向を確認しました。

あわせて、評価指針の「AI EQ+1 Framework」、共通設計図の「EQリファレンスアーキテクチャ」、および実証実験の詳細をまとめた「AI EQ+1 Framework Whitepaper v1.0※3」を本日公開しました。対話型AIを開発する技術者向けにEQの付加に関する情報を展開することで、対話型AIのさらなる発展と安心・安全に対話型AIを利用できる環境の構築に貢献します。

今後は自社サービスへの適用や社外パートナーとの共創を通じ、カスタマーサポートや介護、教育、エンタメ等の分野で、安心感や信頼感をもたらす対話型AIの社会実装を加速してまいります。

なお、2026年11月18日(水曜)~20日(金曜)、24日(火曜)~25日(水曜)にNTT武蔵野研究センタにて開催予定の「NTT R&D FORUM 2026」にて、本技術に関するブースを出展いたします。
詳細は展示会公式サイト(別ウインドウが開きますhttps://www.rd.ntt/forum/2026/)をご確認ください。

  1. EQ:Emotional Quotientの略称。感情指数。人間が自己や他者の感情を認識し状況に合わせて適切に行動する能力のこと。ドコモではAIにおける「ユーザの状況や文脈を汲み取り適切な対話を選択・実行する能力」として再解釈しています。
  2. IQ:Intelligent Quotientの略称。知能指数。
  3. 「AI EQ+1 Framework Whitepaper v1.0」の詳細は以下URLからご確認ください。
    https://www.docomo.ne.jp/corporate/technology/whitepaper_aieq/

別紙1 高EQな音声対話を実現する評価指針と共通設計図の概要

  1. 概要

    「AI EQ+1 Framework」は、AIが相手や場に配慮して「どう振る舞ったか」を評価する指針、「EQリファレンスアーキテクチャ」は対話型AIにEQの要素を組み込む際に、「どのプロセスで実現するか」を定める共通設計図です。たとえば、「EQガードレール」で安全性・誠実性(第2層)を評価し、「EQ入力」「EQコントローラ」「EQ出力」で体験の質(第3層)を評価した上で、「EQ自律改善」が各層の観点で対話の結果を採点して改善案を作ります。これにより、評価結果から改善すべき部分が分かり、AIの中核を作り直すことなく、素早く改善できます。

    図1-1 「AI EQ+1 Framework」とEQリファレンスアーキテクチャの関係性 図1-1 「AI EQ+1 Framework」とEQリファレンスアーキテクチャの関係性
  2. 「AI EQ+1 Framework」

    AIが相手や場に配慮して「どう振る舞ったか」を評価する指針で、タスク解決を目的とせず正解が一つに定まらない雑談や相談の場面でも、対話型AIの対応を評価できます。本指針は、①基本性能(応答速度など)、②安全性・誠実性(合否で判定)、③体験の質(相手への寄り添い、場への適応、キャラクタの一貫性)、④利用による成果(愛着や継続利用)の4つの層で構成しています。
    特に③体験の質の評価においては、相手への寄り添いと場への適応に加えて、場面や機器が変わっても同じ相手であり続けるキャラクタの一貫性というドコモ独自の軸を設けています。周囲の「場」への配慮から、会話を重ねて得た記憶の正確さや活かし方といった関係性の積み重ねまで評価できます。

  3. 「EQリファレンスアーキテクチャ」

    AIの中核となる大規模言語モデル(LLM)の外側に、状況を読み取る「EQ入力」、振る舞いを判断する「EQコントローラ」、応答時に口調や声で表現する「EQ出力」、不適切な応答を防ぐ「EQガードレール」、評価をもとに応答の質を高め続ける「EQ自律改善」を配置した設計図です。AIの中核であるLLMを作り直すことなく、場面に合わせて迅速に対応を改善できます。

    図1-2 EQリファレンスアーキテクチャ 図1-2 EQリファレンスアーキテクチャ

別紙2 高EQな対話を実現する4つの要素技術

  1. 概要

    高EQな対話に必要な機能を整理した共通設計図である「EQリファレンスアーキテクチャ」を、実際の音声対話で実現させるためには、具体的な技術が必要です。ドコモは、「EQリファレンスアーキテクチャ」における「EQ入力」「EQ出力」「EQガードレール」「EQ自律改善」で利用可能な4つの要素技術を開発しました。
    これらの要素技術を組み込むことにより、専門知識がなくても、ユーザの状況に配慮して自然なテンポで応答できる、安心・安全で高EQな音声対話型AIを迅速に構築可能です。

  2. 4つの要素技術の内容

    1. ユーザ状態の判断ルールを自動作成する技術
      ユーザの状態を読み取るには、表情や声のトーン、話の内容をどう解釈するかを決めたルールが必要で、従来は専門家が個別に作り込んでいました。本技術では、「相手が戸惑っているようなら、ゆっくり分かりやすく言い直してほしい」など、開発者が普段の言葉で書いた指示から、ユーザの状態の判断ルールをLLMが自動で作成できるため、専門的なプログラミングを行うことなく高EQな対話型AIを構築可能です。なお、各種エンジンにはNTT株式会社(以下、NTT)の技術を活用しており、音声認識には「VoiceOmnia®※1」、表情や声のトーンの認識などには、「MediaGnosis®※2」を搭載したNTTテクノクロス株式会社のAPIサーバ「SpeechRec®※3」を採用しています。
      図2-1 ユーザ状態の判断ルールの自動作成 図2-1 ユーザ状態の判断ルールの自動作成
    2. 会話の不自然な「間」をなくすレスポンス高速化技術
      LLMを用いた音声対話では、応答の文章を生成してから音声に変換するため、ユーザが話し終えてからAIが話し始めるまでに沈黙が生じます。本技術では、ユーザが話している間からユーザの様子に合わせて応答の準備を進めておくことで、沈黙をほとんど挟まずに自然なテンポで応答できます。なお、音声合成にはNTTの音声合成技術を活用しています。また、LLMによる処理には、NTT版大規模言語モデル「tsuzumi®※4」を活用しています。
      図2-2 会話の不自然な「間」をなくすレスポンス高速化技術 図2-2 会話の不自然な「間」をなくすレスポンス高速化技術
    3. 安全と共感を両立するEQガードレール技術
      AIはユーザに寄り添うほど、ユーザの要求に同調しやすくなる傾向があります。また、控えてほしい話題は人によって異なるため、話題を一律に禁止する方法では、ユーザが話したいことを話すことができません。本技術は、音声対話の場面やユーザの状況に合わせて応答を適切に保つことで、寄り添いと安全性の両立を図ります。
      図2-3 EQガードレールによる応答の例 図2-3 EQガードレールによる応答の例
    4. 使えば使うほど対話品質を高めるEQ自律改善技術
      あらかじめ設定した応答ルールだけでは期待どおりの配慮を提供しきれない場合があり、サービスごとに求められる配慮も異なるため、対話型AIの運用においては手動での評価・調整を続ける必要があるという課題がありました。本技術では、蓄積された対話ログを継続的な改善に活用することで、サービスごとに求められる配慮に沿って応答の質を高めることができます。
      図2-4 EQ自律改善技術による品質向上の流れ 図2-4 EQ自律改善技術による品質向上の流れ
  1. 「VoiceOmnia」は、NTTが開発した音声処理技術です。
  2. 「MediaGnosis」は、NTTが開発したマルチモーダルメディア処理AI技術です。(別ウインドウが開きますhttps://www.rd.ntt/mediagnosis/)
  3. 「SpeechRec」は、NTTテクノクロスが開発したマルチメディアAI処理APIサーバで、MediaGnosisを搭載しています。
    (別ウインドウが開きますhttps://www.ntt-tx.co.jp/products/speechrec/)
  4. 「tsuzumi」は、NTTが開発した日本語性能が高い大規模言語モデルです。
    (別ウインドウが開きますhttps://www.rd.ntt/research/LLM_tsuzumi.html)
  1. 「VoiceOmnia®」「MediaGnosis®」「tsuzumi®」はNTT株式会社の登録商標です。
  2. 「SpeechRec®」はNTTテクノクロス株式会社の登録商標です。

別紙3 高EQな対話の効果を確認した実証実験の概要

  1. 概要

    「AI EQ+1 Framework」に基づき、EQの要素を取り入れた対話型AI(以下、EQあり)と、EQの要素を取り入れていない対話型AI(以下、EQなし)を比較し、ユーザの対話行動や心理面、継続利用意向に関する評価にどのような違いが出るかを確認するため、約20名の成人を対象に2種類の実証実験を実施しました。

    • いずれの実験も、参加者の同意を得たうえで、個人が特定されない統計データのみを用いています。
  2. 実証実験の詳細

    1. 実験1:初対面・単発の体験におけるEQの有無の比較
      実験参加者が1回数分間の音声対話をEQあり・EQなしの両方で体験したところ、EQありでは、AIの発話が短めにもかかわらず参加者の発話量が1回あたり約58字から約83字へ約1.4倍に増え、自分のことを自発的に話す傾向が見られました。また、体験直後のアンケートでは、4つの観点(受け止め・また話したい・会話の自然さ・会話の楽しさ)のすべてにおいてEQありの方が「より良かった」と回答した人が多く、特に「受け止め(共感)」においては14名がEQありの方がより良かったと回答しました。
      図3-1 実験1:EQの有無による比較(初対面・単発の体験) 図3-1 実験1:EQの有無による比較(初対面・単発の体験)
    2. 実験2:10日間の継続利用に伴う評価の推移
      実験参加者をEQあり・EQなしの2グループに分け、1日1回5~10分の日記形式の音声対話を10日間続け、1日目・5日目・10日目に同じアンケート(5段階評価)を実施しました。EQありでは「また話したい」「受け止めてもらえた」など親しみや受容の評価が利用を重ねるにつれて上昇する一方で、EQなしでは「また話したい」の評価が低下し、10日目にはEQありの評価がEQなしを上回りました。
      図3-2 実験2:10日間の継続利用に伴う評価の推移(5段階評価の平均点) 図3-2 実験2:10日間の継続利用に伴う評価の推移(5段階評価の平均点)

報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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