報道発表資料
6Gに向けたAI活用無線インターフェースの屋外実証試験に成功
-屋外の実証環境において、スループットを最大2倍に改善-
<2025年11月17日>
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、NTT株式会社(以下、NTT)、Nokia Bell Labs.、SK Telecom Co., Ltd.(以下、SKテレコム)と共同で、第6世代移動通信方式(以下、6G)に向けたAIを活用した無線技術のリアルタイム送受信実証試験(以下、本実験)を実施し、世界で初めて屋外で成功させました。本実証実験は、神奈川県横須賀市内の3か所で行い、同じ環境下でAIを活用しない場合と比較してスループット(通信速度)を最大100%向上し、2倍の速度で通信できることを確認しました。
無線通信では、電波伝搬環境の変化により通信品質が不安定になるという課題があります。これまでドコモはパートナー企業とともに、さまざまなユースケースで安定した通信を可能にするため、AIを用いて伝搬環境に応じて変調・復調方式を最適化し、無線インターフェースの送信側と受信側両方にAIを活用するAI-AI技術(以下、本技術)について、屋内環境での有効性を確認※1してきました。本実験は、本技術の実用化に向け、気温や天候、障害物などの影響で電波状況の変動が激しい屋外環境において、本技術が安定して性能を発揮できるかを実証することを目的として実施しました。
具体的には、遮蔽物の有無、静止状況か移動中かなど、電波伝搬環境が異なる以下3つの屋外試験環境において、本技術を実装した機器を利用し、本技術の適用有無によるスループットの比較評価を行いました。
- コース1:最高時速40kmで走行可能な、緩やかなカーブを含む公道を移動する環境
- コース2:部分的に遮蔽物が存在する環境
- コース3:最高時速60kmで走行可能な、ほとんど遮蔽物がない道路を移動する環境
本実験の結果、どの環境においても本技術を適用することで通信品質の低下を補うことができ、通信速度が向上することを確認しました。特に、最も複雑な電波伝搬状況を有するコース1の環境下において、従来技術を利用した場合と比較してコース全体を通して平均で18%、最大で100%という大幅なスループット改善効果を得ることができました。スループットが改善することで、お客さまはさらに大容量の情報を高速で通信できるようになります。また、通信事業者は周波数帯域あたりの無線伝送効率を向上することができるため、お客さまに高品質な通信サービスを提供できるようになります。
本実験を通じて、本技術が屋内の実験環境だけでなく、さまざまな周辺環境の影響を受ける屋外環境においても有効であることが実証されたことにより、6Gで要求される高い無線伝送効率と、機器の低消費電力化の実利用環境における両立に大きく近づき、本技術の実用化に向けた重要な一歩となります。
今後もドコモは、多様な環境下で本技術のさらなる性能評価と最適化を進め、6Gの実装に向けた研究開発を加速するとともに、国内外の主要ベンダー、海外オペレーターと連携し、6Gの標準化・実用化に貢献してまいります。
なお、2025年11月19日(水曜)~21日(金曜)および2025年11月25日(火曜)~26日(水曜)にNTTが開催する「NTT R&D FORUM 2025」に本技術に関するブースを出展いたします。
詳細は展示会公式サイトをご確認ください。
公式Webサイト:
https://www.rd.ntt/forum/2025/
別紙 実証実験の概要
- 概要
ドコモは、世界的なベンダーや通信会社など全7社とともに、6Gに向けた新たな無線技術の創出をめざし、2022年6月から6Gのさまざまな周波数帯を想定した実証実験を行っています。本実験は、ドコモ、NTT、Nokia Bell Labs.、SKテレコムの4社で連携し、さまざまな電波伝搬環境に合わせてAI技術の活用による送受信処理の最適化を行う実証実験を実施し、世界で初めて屋外で成功しました。 - 実証実験内容
- ドコモR&Dセンタ周辺の公道と敷地内における実験
ドコモR&Dセンタ周辺の公道とその敷地内において、電波伝搬環境が刻々と変化するような状況を作り、本技術を活用した無線処理で安定して通信を行えるのかについて、スループット特性を取得して確認しました。
<実験環境>
- コース1:最高時速40kmで走行可能な、緩やかなカーブを含む公道を移動する環境
- コース2:部分的に遮蔽物が存在する環境
<具体的な実験内容>
GPUサーバにAIを活用した送受信のベースバンド処理をソフトウェアで実現し、市販のソフトウェア無線(SDR)用ハードウェア※1を介して4.8GHz帯の無線周波数で実験を実施しました。送信アンテナを測定車に、受信アンテナをドコモR&Dセンタの屋上に設置し、送信アンテナが搭載された測定車を図1や図2に示す経路に沿って移動させながら、受信信号を測定しました。なお、AIの効果を明らかにするために、ベースとして5G NR(New Radio)※2を用いました。<実験結果>
本実験から、緩やかなカーブを有する公道(コース1)や部分的に遮蔽物が存在する環境(コース2)のように、電波伝搬環境が変化し続ける環境下でもあっても、本技術を活用した通信は安定した通信を提供することが可能であり、従来の方式と比較して、コース全体を平均して約18%のスループット特性の改善が確認できました。さらにコース1においては、周辺の木や建物等の影響により従来方式だとスループットが低下する場所でも、本技術を活用した通信では従来方式と比較してスループットが最大100%改善することが確認できました(図1)。これにより、本技術が屋内だけでなく、屋外でも利用可能なことが示され、実利用環境での6G通信への適用の可能性を確認することができました。今後は、市街地等のさらに複雑な環境下での実験を行い、実用化を意識した評価を進めていく予定です。

<図1:コース1の実験状況および実験結果> 
<図2:コース2の実験状況および実験結果> - NTT横須賀研究開発センタ敷地内における実験
NTT横須賀研究開発センタ敷地内において、本技術を活用した無線処理によりどのような移動速度でも安定した通信を提供できることを、スループットを測定して確認しました。
<実験環境>
- コース3:最高時速60kmで走行可能な、ほとんど遮蔽物がない道路を移動する環境
<具体的な実験内容>
送信アンテナは測定車、受信アンテナは約2mの高さのポールに固定し、図3に示す場所に設置しました。本実験では、送信側の移動速度を時速3km、時速30km、時速60kmの異なる移動速度での実験をLOS環境※3、NLOS環境※4それぞれで実施しました。(実験装置については、「(1)ドコモR&Dセンタ周辺の公道と敷地内における実験」と同様の装置を利用。)<実験結果>
これらの実験の結果、どの速度においても本技術によるスループット改善が確認でき、最大で20%改善しました。また、いずれの環境においても本技術の効果が現れ、従来方式に比べて高いスループットを示しました。
これにより、移動速度やLOS環境、NLOS環境などの伝搬環境が変化しても安定した通信ができることが確認でき、本技術のロバスト性を示すことができました。今後は、時速100km以上の速度での実験などを実施し、さらに高速な移動環境における有用性についても検証する予定です。

<図3:コース3の実験状況および実験結果> - ソフトウェア無線を研究開発するためのプラットフォームで、プログラマブルなデバイスを用いて無線信号処理やアルゴリズムの開発や検証が可能なハードウェア
- 一般的に使用される現行の5Gインターフェース
- Line of Sight(LOS)送信点と受信点の間に遮蔽物がない環境
- Non Line of Sight(NLOS)送信点と受信点の間に遮蔽物が存在する環境
<参考>ドコモの6Gの取り組みに関する報道発表
- 国内外の主要ベンダーと6Gの実証実験の協力体制を拡大 -新たにEricsson、キーサイト・テクノロジーとの実験協力に合意-(2023年2月27日 報道発表)
ノキア、ドコモ、NTT3社による2つの技術開発により、6Gが大きく前進(2023年2月15日 報道発表)
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