報道発表資料
6G時代の多様なサービスの効率的実現をめざし、
コンピューティングとモバイルネットワークの融合に成功
-ネットワークで計算処理を支援することで端末側の負担を軽減可能に-
<2024年2月21日>
日本電信電話株式会社
株式会社NTTドコモ
日本電信電話株式会社(以下、NTT)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、NTTが6G/IOWN時代のコアネットワークとして提案する「インクルーシブコア※1」構想をもとに3GPP標準準拠のモバイルコアを拡張することで6Gの特徴の一つであるコンピューティング機能を具備したモバイルネットワークを構築し、共同で実証しました。
具体的には、モバイル端末の特性や通信状態に応じ、ネットワーク内に専用コンピューティング機能を構築し、高性能なアプリケーションを低遅延で利用できることを世界で初めて※2実証しました。これにより、端末側にも高性能な処理能力が要求される6G/IOWN時代のサービスにおいて、端末の性能に依存せずに利用することができることが期待されます。
本成果は、Nokia社のクラウド型モバイルコアサービスCoreSaaSと連携して実証実験を実施し、2024年2月26日(月曜)~29日(木曜)に開催されるGSMA主催のMobile World Congress Barcelonaで次世代のアーキテクチャとしてNokia社ブースにて展示します。
1. 背景・目的
従来のモバイルネットワークは、端末とクラウドでのデータ処理とは独立して、データの転送を担ってきました。この固定的な機能分担により、端末とクラウドのサービスは密接に連携した処理ができませんでした。一方で、6Gではサイバーフィジカル融合※3などによる先進的なサービスの実現に向けて、端末とクラウドのサービスが密接に連携することが求められます。
図1 従来のネットワークの機能分担
図2 モバイルネットワークとコンピューティングの融合
NTT、ドコモでは、インクルーシブコアネットワークにおいてGPUなどのアクセラレータを含むコンピューティング機能の具備と端末とサーバーを仲介するISAP(In-network Service Acceleration Platform)※4の活用により、端末とクラウドの連携処理といった課題の解決をめざしています。
これにより、端末やクラウドで担っていた処理をネットワーク内で高速処理しながら、低遅延・大容量な6Gネットワークによって端末とクラウドのサービス情報処理の連携を加速できます。端末サービスを簡素化やクラウドサービスとの低遅延なインタラクションが期待でき、たとえば、3Dの描画で高機能なデバイスを必要とするメタバースなどにおいて、スマートグラスのように端末機能を簡素化しながら高度なサービスを低遅延に提供することが可能となります。
2. 新たなコンピューティングとモバイルネットワーク連携機能(ISAP)の提案
ISAPでは、コンピューティング機能を融合したモバイルネットワークアーキテクチャを構成する技術要素として以下を実現する技術です。
- 端末のモバイルネットワーク接続状態に合わせたモバイル回線への計算サービス設定
- クラウド側のサービスの利用状態の変化に合わせたモバイル回線への計算サービス設定
- モバイルネットワークやクラウド側のサービスの状態や特徴・特性に適した計算サービスに用いるコンピューティング機能の制御
3. 実証実験概要・結果
実証実験では、Nokia社の3GPP標準準拠のモバイルコアネットワークをパブリッククラウド上に構築し、ISAPと連携するように、ネットワークの情報を外部に開示する5G標準機能のNEF(Network Exposure Function)※5を拡張することで実施しました。上に挙げた3点の特徴について、以下を実証実験で確認しました。
A. 端末のモバイルネットワーク接続状態に合わせたモバイル回線への計算サービス設定
モバイルコアネットワークからNEFを用いて、端末のモバイルネットワーク接続状態情報を取得し、連動して、モバイルネットワーク内のコンピューティング機能から計算サービスを統合制御可能であることを確認しました。また、通常のモバイルネットワークへの接続手順相当の時間で完了することを確認しました。
B. クラウド側のサービスの利用状態の変化に合わせたモバイル回線への計算サービス設定
メタバースを利用するケースにおいて、メタバース空間内の状態に応じて高性能なレンダリング、エンコード/デコード機能に対応したGPU付きの計算サービスを具備するように計算サービスを制御可能であることを確認しました。また、メタバース空間の状態変化時間内に計算サービスを回線に設定できることを確認しました。
C. モバイルネットワークやクラウド側のサービスの状態や特徴・特性に適した計算サービスに用いるコンピューティング機能の制御
メタバースに加えて、監視カメラ映像ストリームをAIで分析するサービスなど、サービス毎で異なる特性がある場合において、GPUやDPUなどのコンピューティング機能をCPUを介さず動的に組み合わせて計算サービスを構成し、モバイル回線の接続および変更手順相当時間内に設定が可能であることを確認しました。
図3 ISAPの特徴と実証実験での確認ポイント
図4 実証実験の様子
4. 実証実験における各社の役割
6Gに向けたモバイルネットワークとコンピューティングの融合に関する実証実験は以下の分担で行いました。
- ドコモ:モバイルコアネットワークアーキテクチャおよびグローバル標準仕様の知見を活用した実現方法および実証実験の構成検討を実施、メタバースアプリケーションを提供
- NTT:インクルーシブコア・ISAP技術、およびAI映像解析アプリケーション、ISAPのテスト環境を提供し実証実験を実施
- Nokia:クラウドベースの3GPP標準準拠のCoreSaaSを提供
5. 今後の展開
NTT、ドコモは、引き続きコンピューティングと融合した6Gネットワークのユースケースやアーキテクチャの検討と実証を継続し、ユーザーが端末の処理能力やサービスの負荷状況に左右されず、いつでもどこでも使いたいサービスを自分主体で利用できるような新たなサービス形態の検討を進めます。
また、NTT、ドコモは、Nokiaとも連携し本格的な議論が予定されている6Gの標準化に向けて通信事業者・通信機器/端末メーカ、クラウド事業者、サービス提供事業者などとの連携を広げ、6G/IOWN時代のコンピューティングとネットワークの融合(In-Network Computing)※6の研究開発およびサービス提供に向けた検討を推進してまいります。
<用語解説>
- インクルーシブコア
NTTが提案する6G/IOWN時代のネットワークアーキテクチャ
ネットワークを介し様々な融合と協調を実現し、AI統合型のコミュニケーションやサイバーフィジカルシステムなどの6G/IOWNのユースケースに必要な、コンピューティングとネットワークの融合を実現する
- 「インクルーシブコア」技術仕様に関するホワイトペーパー
https://www.rd.ntt/ns/inclusivecore/whitepaper_ver1.html - 報道発表「6G/IOWN時代のコアネットワークである「インクルーシブコア」アーキテクチャの確立とメタバースを活用した実証実験を実施~萌芽的技術コンセプトの「In-Network Computing」と「SSI」を取り入れたコアネットワークを構成~」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/10/25/pdf/231025aa.pdf
- 2024年2月21日時点、NTT・ドコモ調べ
- サイバーフィジカル融合
現実世界(フィジカル空間)のヒト・モノ・コトを情報化し、サイバー空間へのデータ蓄積、そのデータの分析による未来予測・知の発見などの価値化、フィジカル空間への価値のフィードバックというループを回すフレームワーク
- ISAP(In-network Service Acceleration Platform)
In-Network Computingとして端末やクラウドでのサービスに係る情報処理を仲立ちし、両者を高速に同期・協調させながら、通信環境やサービス利用環境に即したネットワーク内のハードウェアでの連鎖的な処理基盤を形成します。端末とクラウドの情報処理をいつでもどこでもネットワークが協調させ高速化するので、お客さま環境や端末、サービスに制限されないフレキシブルなサービス体験の創出につながります。ISAPにより、端末スペックやアクセス環境を問わず様々な先進的なサービスを利用できるようになり、サービス提供者より多くのユーザーにサービス提供が可能となります。 - Network Exposure Function(NEF)
移動通信ネットワークで保持する情報を外部のアプリケーションに提供するためのネットワーク機能 - In-Network Computing
アプリケーションレイヤの処理機能をネットワーク内のデータ転送機能に移譲し、遅延や端末の消費電力の低減しつつ、高性能・高機能なサービスを実現する技術コンセプトです。ネットワーク内にあるスイッチなどの装置へ情報処理をオフロードすることで、端末の負荷を低減することが期待されます。
報道発表資料に記載された情報は、発表日現在のものです。仕様、サービス内容、お問い合わせ先などの内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。