3GPPにおける取組み
3GPPの概要
3GPP(Third Generation Partnership Project)は、モバイル通信システムの国際標準仕様を策定するために設立されたプロジェクトです。
世界各国の主要な通信事業者や通信機器ベンダが参加しており、現在は5Gの高度化や、次世代の6G通信に向けた技術仕様化を推進しています。
3GPPにおける標準化は、3つの段階的なプロセスによって構成されています。
図1 標準化の手順
まず実現すべきサービスの「要求条件」を規定し(ステージ1)、次にその要求条件をもとにシステム全体のアーキテクチャを規定(ステージ2)、最後に通信に必要なプロトコル仕様を規定(ステージ3)という流れで進みます。
各ステージにおいては、世界中のエンジニアが集う会合が開催され、膨大な数の技術提案をもとに、課題や解決方法の議論が行われます。こうした綿密な合意形成を経て、世界中で利用可能な標準仕様が完成します。
3GPPとドコモの関係
3GPPは、PCG(Project Co-ordination Group)の配下に3つの検討グループ(TSG:Technical Specification Group)という構成で運営されています(図2)。
PCGでは、3GPP全体の運営方針の検討と、その配下で技術の検討を行っているTSG(表1)間の連携を調整します。またTSGの配下には、各技術の内容に応じて実際の検討を行う複数のWG(Working Group)が存在します。
ドコモは、大多数のワーキンググループ(WG)に参加し、横断的に標準化活動を推進しています。
表1 TSG検討グループ
図2 3GPPの組織構成
ドコモのメンバーは、5Gや6Gに関する議論において、標準化会合の進行やスケジュール管理、合意の取りまとめなどグループの議論が円滑に進むよう責任を持って運営する副議長といった役職や、ラポーターと呼ばれる議論を取りまとめる中心的な役割を複数務めており、標準化議論の合意形成に重要な役割を果たしています。
標準化検討テーマにおけるドコモの貢献
各ワーキンググループにおいて、ドコモは通信事業者として実運用ネットワークで得られた知見をもとに中長期的視点で提案・議論を行っています。将来の社会・産業を支える通信の在り方を見据え、3GPPの技術検討において積極的に議論に貢献することで、モバイル通信の発展に尽力してきました。ドコモの貢献内容を具体的にご紹介します。
RAN領域
端末から基地局、さらにコアネットワークへと接続される無線アクセスネットワーク全体に関する仕様検討を行う領域です。
ドコモは通信事業者として、将来の新たなサービスを支える無線方式や制御手順の検討から、直近の商用サービス提供に必要な周波数利用やアンテナの実装まで、幅広い観点で無線アクセス技術の高度化に参画しています。
SA領域
コアネットワークを含むモバイルシステム全体のアーキテクチャと実現したいサービスに関する仕様検討を行う領域です。
ドコモは通信事業者として、実運用ネットワークで得られた知見や商用サービスの要件を踏まえた機能拡張や、次世代ネットワークの全体アーキテクチャ議論、AIやcomputingといった新たなサービスを提供するためのアーキテクチャ検討に関する議論へ積極的に参画しています。
CT領域
コアネットワークおよび端末にかかわる通信方式や手順 、ネットワーク機能間の通信プロトコルやインターフェース仕様を定義する領域です。
ドコモはお客さまへのサービス提供に直結するネットワークの相互接続性や運用性、セキュリティ/国際ローミング/災害からの復旧などの要件を踏まえ、コアネットワークの高度化や将来ネットワークに向けたプロトコルおよび手順の改善に幅広く参画しています。
6Gへの新たな技術トピックス
これまで4Gや5G初期では通信システムを支える機能の着実な向上を軸に様々な技術検討が進められてきましたが、これに加えて近年の3GPPでは5G高度化および6Gに向けて従来にはなかった新たな技術要素が注目されて、広範囲な技術検討がなされています。その一例をご紹介します。
AI
AIを活用した無線区間の特性改善やコアネットワーク自動化の高度化、それらを実現するためのフレームワークに関する技術検討を進めています。無線ネットワークの複雑化を背景に、AI活用による高度なネットワーク制御の実現を目指しています。
センシング
通信信号を活用して周辺環境や物体を検知する技術を検討しています。これまで情報を運ぶだけだった通信信号でセンシングを行うことで、将来の自動化やデジタルツインへの応用など、新しい価値創造が期待されています。
In-Network Computing
端末側の計算処理をネットワーク内の装置へオフロードし、通信の制御に加えて計算処理の制御もネットワークで実施するIn-Network Computing(INC)を検討しています。XRやAIを活用した高負荷サービスをウェアラブルなどの軽量端末でも快適に提供できることが期待されています。
ドコモの成果
国際標準化活動において、ドコモは長年にわたり通信事業者の立場から議論を主導し、標準仕様の策定を推進してきました。3GPPにおいても3G時代の標準化検討期から継続的に参画し、通信事業者としての知見や日本特有の課題を世界標準に反映してきた実績があります。また、技術提案だけでなく議長・副議長として合意形成と仕様策定における重要な役割をはたし、移動通信業界の発展に大きく貢献しています。
ドコモは標準化を通して安全・あんしんや品質向上・高速化などの技術を実現してきました。災害時の通信確保や緊急速報、LTE・5Gの高速化・大容量化、音声品質向上などに貢献してきました。ドコモのこれまでの成果の一部をご紹介します。
標準技術仕様の策定への貢献
安全・あんしんや品質向上・高速化などを目的とする取組み、および今後の提供に向けた貢献分野を紹介します。
- 取組分野の各リンクから、関連するテクニカル・ジャーナルの記事ページに遷移します。
| 取組分野 | ドコモの貢献内容 |
|---|---|
| 災害時の通信確保 (安全・あんしん) |
災害発生時の110番や119番などの重要な通信の回線を確保するために、通信の種類を区別し、優先度を付ける方式の技術仕様策定に貢献 |
| 緊急速報 (安全・あんしん) |
地震や津波などの自然災害が多い日本特有の課題に対し、日本の代表として、緊急速報を多くの人に迅速に届けるための基盤となる方式(CBS、ETWS)の技術仕様策定に貢献 |
| 音声品質向上 | 導入時のVoLTEよりも、より肉声に近いクリアな音質の通話を提供する音声符号化方式(EVS)の技術仕様策定に貢献 |
| エリア補完 (LTE) |
3Gに比べ高速なパケット通信が提供可能となるLTEを早期に提供するために、LTEエリアが不完全な状況であっても、3Gに切り替えて、通信継続を可能とする実現方式の技術仕様策定に貢献 |
| 高速移動時の通信品質向上 (LTE) |
新幹線をはじめとする高速移動手段の発達した日本の状況を標準化での議論に反映し、時速数百KMを超える高速移動時でもLTEパケット通信の継続を可能とする技術仕様策定に貢献 |
| 通信高速化・大容量化 (LTE/LTE-Advanced) |
将来の高速・大容量の移動通信システムへのスムーズな移行をめざし、LTEのコンセプトを提唱。世界各社の賛同を得て、その後の標準化を主導 さらなるモバイルトラフィックの増大に対応するため、キャリアアグリゲーション技術や高度化マルチアンテナ技術などのLTE-Advanced向けの技術仕様策定に貢献 |
| 5G基盤技術 | 5Gにおいて、LTE/LTE-Aよりも高速化/低遅延/多接続を可能とする多数の要素技術検討おいて標準化活動を主導し、他のオペレータと連携して5G全体の標準化推進に貢献 |
表2 ドコモの主な貢献
標準技術普及への貢献
ドコモの標準化における取組みによって得られた技術を特許化し、積極的にライセンスすることによって、3GPP標準技術の普及促進に貢献しています。
関連リンク
こういった長年の経験を基盤に、5G高度化や6Gに向けた次世代無線通信の標準化にも積極的に取組んでいます。詳細や最新の動向は当社開発者ブログやテクニカルジャーナル記事にて紹介しています。
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