コラム:イノベーション創発への挑戦

コロナパンデミック後の情報社会

コロナパンデミック後の情報社会

新型コロナウイルスにより2020年春以降、我々の生活スタイルは大きく変わってしまったが、災禍を嘆いてばかりもいられない。これを契機として、これまでの社会システムを見直してより良いものに再構築する機会が生まれると信じている。

コロナによって人と一緒にいられない反面、家にいて余暇を過ごす、仕事をすることのメリットが見えてきた。私はこのメリットを享受する8分野でイノベーションが加速するとみている。全世界で人類が数カ月もの間、外出を自粛するというのだからそのインパクトは破壊的ともいえる。

8つとは(1)テレワーク(2)オンラインゲーム(3)オンラインショッピング(4)宅配(5)ロボット(6)健康・医療(7)インターネットコンテンツ(8)オンライン教育だ。

テレワークは特にセキュリティー関連技術の発展が期待される。オンラインゲームには賛否両論あるが、孤立を避け、人との付き合いを維持するために複数人が参加するチーム形式のゲームが注目されている。

米国ではアマゾン・ドットコムに代表されるオンラインショッピングが席巻しているが、2020年3月からは生活がオンラインショッピングにほぼ依存することとなった。オンラインショッピングは料理の出前まで広がっている。

宅配事業者はこれまで人不足のなかで送料無料、即日配達を提供するために苦労してきた。ところが、最近都内ではUber Eatsと書かれたバッグを背負った自転車を見ることが多くなっている。これからは再配達をなくすために生鮮食品にも対応できる宅配ロッカーを設けるなど流通のラスト1マイルのイノベーションが必要となる。

ロボットは省力化のための自動機械という位置づけから人を介さずに遠隔でサービスを行う機械という位置づけで進展が期待できる。これは宅配の自動化にも貢献するだろう。

私の講義を受ける学生はもうテレビを見ていない。インターネットが使える人々の動画視聴はネットフリックスに代表される動画配信サービスに移行している。ビデオチャットと呼ばれる動画での会話サービスも人気だ。インターネットが新しい視聴コンテンツの源泉となっている。

オンライン教育は授業を録画して配信するというレベルを超え始めている。今後目指すべきは、学生が授業に積極的に参加し、質疑応答を通して参加者全員が一緒に問題を考えるという講義を遠隔でも可能にすることだ。

社会の再設計で浮き彫りになる大きな課題は従来から言われているデジタルデバイドだろう。インターネットの恩恵を受けられない人々を取り残さないことが欠かせない。インターネットを使いやすくする技術,ワンストップで簡単に使えるサービスなど災い転じて福となすイノベーションが生まれると信じたい。

ドコモのイノベーション創発を牽引してきた栄藤氏による2020年5月5日の日経産業新聞「Smart Times」を翻案したものです。

他のコラムを読む

このページのトップへ