
5G Evo.&6G で実現する遠隔ロボット手術
概要
近年広がりを見せるロボット支援手術。その進化形として、遠隔地から手術支援ロボットを操作する「遠隔手術」の実現が期待されています。この革新的な医療の未来を拓くために、NTTドコモは通信分野を牽引する役割を担い、パートナーと共に社会実装に向けた取り組みを加速させています。
ロボット支援手術とは
医師がロボットを操作して行う手術のことで、専用のコンソールを用いてロボットアームを制御します。ロボットアームの先端には細長い手術器具やカメラが付いており、人間では難しい複雑な動きをしたり、手術部位を拡大して3D映像で見たりなど、より正確で繊細な手術が可能になります。
従来の開腹手術と比べて小さな傷で手術を行うことができ、腹腔鏡手術と同様に低侵襲のため、回復も早く傷跡が目立ちにくいなどのメリットがあります。
開腹手術・腹腔鏡手術では、医師が手術器具を用いて直接的に患部を処置する「アナログ手術」でしたが、ロボット支援手術の導入により、医師がコンソールを操作し、手の動きがデジタル信号となってロボットに伝わり、ロボットが患部を処置する「デジタル手術」へと変わってきています。

医療業界における課題
1.都市部と地方における医療格差
地方の過疎化・高齢化に伴い、病院数の減少と医師の都市部への流出が深刻化しています。結果として、ロボット支援手術などの先進医療を受けられる機会が都市部に集中し、地方との医療格差が年々拡大しています。
2.医師の働き方改革
医師の都市部集中は、都市部の大病院における患者集中を招き、手術の待ち時間増加や医師の長時間労働につながっています。医師の働き方改革による労働時間制限は、医療現場の人手不足をさらに深刻化させる可能性があります。
3.若手医師の教育機会
先進的な手術を行う医師の都市部集中は、若手医師の教育機会にも影響を及ぼしています。新しい技術を学ぶためには都市部の病院に行く必要があり、地方での研修を希望する若手医師が減少しています。これは、将来的な地方の医療体制の維持を困難にする要因となっています。
遠隔ロボット手術支援ソリューションの概要
- 我々のプロジェクトでは、手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)TMサージカルロボットシステム」(以下、hinotori)*1と商用5Gを組み合わせて遠隔ロボット手術支援ソリューションを開発しています。
- hinotoriのシステム一式をローカル側拠点へ、遠隔操作用のサージョンコックピット*2をリモート側拠点へ配置し、商用5G およびクラウド基盤(docomo MEC®*3、MECダイレクト®*4)で接続します。このシステムは、遠隔地の指導医が遠隔操作用のサージョンコックピットを操作し、現地の手術を指導あるいは部分的にロボットを遠隔操作して術者として参加することで、離れた場所でありながら共同で手術を行うことを可能にします。ユースケースとして、都市部の熟練医による地方の若手医師の手術支援や、教育への活用も検討されています。
- 本取組みは神戸市の神戸未来医療構想の支援を受け、パートナーである神戸大学、メディカロイド社とともに実証実験を重ね、社会実装に向けて取り組んでいます。

技術課題
デジタル化された手術情報を通信回線で遠隔地に伝送することで、遠隔操作による手術が可能になります。しかし、この実現には通信技術におけるいくつかの課題を克服する必要があります。
まず、手術支援ロボットをリアルタイムで操作するためには、拠点間の通信遅延を最小限に抑えた低遅延通信が不可欠です。遅延の発生は、手術の精度に深刻な影響をおよぼす可能性があります。次に、内視鏡映像のような高解像度映像を伝送するには、広帯域通信が求められます。鮮明な映像は正確な手術操作に直結するため、十分な帯域幅の確保が重要です。最後に、高いセキュリティの確保です。伝送される情報は患者のプライバシーにかかわる重要な医療情報であるため、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための強固なセキュリティ対策が必須となります。
技術の詳細
以下の技術アセットを活用しています。
高速かつ低遅延通信で、リアルタイムのロボット操作を実現します。5Gが利用可能な場所であれば、どこからでも遠隔ロボット手術支援が可能になります。
ドコモ網と直結した複数拠点のMECサーバーにより低遅延のクラウドサービスを提供し、ロボットのリアルタイム操作を実現します。
インターネットを経由しない閉域網接続により、セキュアな通信を実現します。専用回線で医療情報を安全に伝送します。
まとめ
遠隔ロボット手術は、地方の医療格差是正と医療資源不足解消への大きな可能性を秘めています。次世代ネットワーク5G Evolution & 6Gを導入し、より低遅延・高信頼な遠隔医療を実現することで、医療業界のさらなる発展に貢献してまいります。
- メディカロイド製の手術支援ロボットで、2020年8月に内視鏡手術を支援するロボットとして泌尿器科領域で製造販売承認を取得。同年12月に1例目の手術を実施しました。2022年10月には消化器外科・婦人科、2024年4月には呼吸器外科においても適応について承認を取得し、現在、使用症例を増やしています。
- 手術支援ロボット「hinotoriTMサージカルロボットシステム」のユニットの一つで、執刀医が3Dビューアをのぞき込みながら、手や足の操作で、実際に手術を実施するオペレーションユニットに取り付けられた3Dビデオスコープやインストゥルメントを操作する装置です。
- 「docomo MEC」は、5G時代に求められるMEC(Multi‐access Edge Computing)の特長である、低遅延、高セキュリティなどの機能を持つドコモのクラウドサービスです。
- 「MEC ダイレクト」は、ドコモが提供する接続端末とクラウド基盤を直結して通信経路を最適化することで、5Gによる低遅延・高セキュリティ通信を実現するサービスです。
<リリース>
<外部連携・表彰>
<メディア>
- 遠隔手術で切り拓く医療の未来。hinotoriTMと5Gを駆使した「遠隔ロボット手術」の社会実装に向けて|JOURNAL(先進事例や最新トレンド)|事業共創で未来を創るOPEN HUB for Smart World(2024/1/24)
- スマートIoT推進フォーラム IoT導入事例紹介「5Gを活用する遠隔ロボット手術ソリューション - 産学官連携でイノベーションの高速化にチャレンジ」(2022/3/8)
- NHK BS1「私たちのデジタル医療革命2022」(2022/1/2)
- 電経新聞「新生ドコモへの挑戦」(2022/1/1)
- テレビ大阪・医療特番「生きがいを繋ぐ!ロボット×医療最前線」(2021/12/21)
- 日本テレビ「シューイチ」(2021/12/12)
<展示>
- docomo Open House 2022 オンライン(2022/1/17-19)
- docomo Open House 2023 赤坂インターシティコンファレンス/オンライン(2023/2/2-3)