
コア&OAM
1.6Gアーキテクチャ
これまでモバイルネットワーク技術は約10年ごとに新たな世代へと移り変わってきており、現在は6Gの検討が進んでいます。6Gの新たなネットワークアーキテクチャの検討にあたっては、現代社会の課題である持続可能性の確保や、インフラとしての信頼性向上などが一層重視されています。また、AI技術の発展や、仮想現実などのイマーシブサービス(没入型サービス)の普及を見据え、新たな利用シーンへの対応が求められています。
6Gネットワークアーキテクチャの具体的な検討ポイントとしては、「コアネットワークと無線アクセスネットワークの接続形態」、「5Gシステムとの共通性・独立性」、「現行ネットワークからのスムーズな移行方法」などが挙げられます。3GPPの標準化会議で、これらを踏まえた最適なネットワークアーキテクチャを議論していきます。
上記に加えドコモでは、類似した機能を統合することなどによりネットワークの複雑さを解消し、コストパフォーマンスと運用効率性を高めることが重要だと考えています。また、6G時代の新しいサービスに迅速・柔軟に対応できる、拡張性の高いネットワークアーキテクチャをめざしています。
ドコモはネットワークのシンプル化が重要だと考えていますが、これにより省電力・運用効率性向上を実現するとともに、ネットワークの頑健性を高めることが可能になると考えられます。
また拡張性の高いネットワークを実現することにより、通信事業者は各国の多様なニーズに柔軟に対応できるようになります。たとえばドコモでは6G時代の技術として“In-Network Computing”に着目しています。この技術を活用することにより、AIによる映像解析やメタバースといったイマーシブサービスの高負荷な処理を、ネットワーク側でサポートすることが可能になります。結果として、グラス型端末など機能が簡素化された端末でも快適で高品質なユーザ体験が得られるようになります。ネットワークの拡張性を高めることにより、このような先進的な機能をニーズに応じて柔軟に導入することが可能になります。
さらに、HAPSや人工衛星を利用したネットワークにより、人の少ない地域も含めた広範囲なエリアカバレッジが可能になります。これにより、現在ではネットワークへのアクセスが困難な地域でも、6Gの恩恵を受けることができるようになります。
ドコモではこれらの価値を提供可能となる6G時代の最適なネットワークアーキテクチャの検討を進めています。

2.In-Network Computing
In-Network Computing(以下、INC)は、ネットワークでサービスの計算処理を支援することで、ユーザ端末でのデータ処理負荷を軽減します。INCの適用により、ウェアラブル端末のように機能を簡素化したデバイスでも、AIによる映像解析などの高度な処理を快適に体感できることを目的としています。
ドコモはNTTと連携し、6G/IOWN時代のコアネットワークを提案する「インクルーシブコア」構想に基づき、INCの基盤であるISAP(In-network Service Acceleration Platform)の研究開発に取り組んでいます。ISAPは端末の接続状態やクラウドサービスの利用状況に応じて、通信やコンピューティングの設定を最適化します。
NTTおよびドコモは、この基盤をベースにINCアーキテクチャの実証実験を行っています。この取組みにより、INCの有効性と実現性が確認され、未来の通信インフラの進化に寄与することが期待されています。
6Gに向けてAIを活用したソリューションやXR、メタバースなどのイマーシブサービスがさらに身近になることが期待されています。機能を簡素化したウェアラブル端末などで、ソリューションやアプリケーションを利用するシーンもさらに拡大していくと考えられています。
たとえば、車載カメラやドローン、グラス型端末で撮影した映像に対してAIを用いてリアルタイムで解析し、道路付近の物体検知や、信号機・電柱などの社会インフラの点検が想定されます。このようなユースケースにおいて、AIによる映像解析には高度な処理能力を求められることがありますが、端末のハードウェアでは効率的な処理が難しい場合もあると考えられます。
ドコモは、こうした課題に対して、INCを適用することで、簡素な端末でも高度なソリューションやアプリケーションの快適な利用をめざしています。

3.保守運用の自動化
インテント駆動管理は、移動通信ネットワークの保守運用における新しいアプローチであり、技術の複雑性を軽減し、通信事業者がビジネスニーズに柔軟に対応できるようにすることを目的としています。
従来の管理手法では、通信事業者はネットワークの詳細を把握し、手動で設定を行う必要がありました。しかし、インテント駆動管理は「何を実現したいのか」という目標に基づいて、ネットワークを自動的に調整することを可能にします。
具体的な要件や制約に基づいて、インテントを設定することで、システムは必要な結果を達成するための最適な手段をAIなどにより自動的に選択します。その後、インテントを満たしていることを監視し、インテントを満たさない状況に陥る場合は、再度最適な手段を自動的に選択します。
この手法によって、通信サービスの消費者は、自分のニーズを簡単に表現でき、通信事業者は高度な技術的知識に依存することなく、効果的にサービスを提供できます。インテント駆動管理は、ネットワークの柔軟性を高め、運用の効率化を図ることで、よりスムーズかつ迅速なサービス提供を実現することをめざしています。
3GPPなどで検討されているインテント駆動管理は、移動通信ネットワークの保守運用を革新する技術であり、さまざまなユースケースを提供可能とします。この技術は特定のサービスに関する要件を簡単に表明できるようにし、たとえば「特定の時間うちに特定の車両グループにV2X通信サービスを提供する」といった具体的な要求の表現を実現します。
また詳細な技術知識がなくても、要求を表現することによりサービスやネットワークの管理に関する技術的な部分が自動設定・監視されます。これにより、複雑なネットワーク管理業務が簡素化され、サービスの迅速な展開が可能になります。
さらに、インテントは、数値目標に基づいて成果を測定できるため、成果の可視化や、業務改善のためのデータ分析が容易になります。最終的には、インテント駆動管理による効率的な運用は、顧客満足度の向上や競争力の強化に貢献し、通信業界全体の進化をもたらすことが期待されています。
