3. 3.5GHz帯の利用に関する技術的要件のための技術開発

「3.5GHz帯TD-LTE導入に関するドコモの技術開発の取組み」目次

総務省による特定基地局の開設計画の認定にあたり、国内での3.5GHz帯の利用については、いくつかの要件が求められている[5]。その中で、技術的な事項に関連する主な要件を表2に抜粋して示す。

表2 3.5GHz帯の利用に求められた主な技術的要件

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  1. FDD方式とTDD方式のCAの活用
    通信方式は、LTE-AdvancedのTDD(Time Division Duplex)※6方式(TD-LTE)の導入が求められている。ドコモは、これまでにPREMIUM 4GとしてFDD(Frequency Division Duplex)※7方式の周波数帯を用いたキャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)※8によるLTE-Advancedの導入を進めてきた。3.5GHz帯におけるLTE-AdvancedのTDD方式の導入にあたっても、CAの活用が有効である。特に、ドコモが提唱する高度化C-RAN※9アーキテクチャを活用したCAにより、FDD方式で展開されている既存のマクロセル※10基地局と、3.5GHz帯で展開するスモールセル※11基地局を連携させれば、駅周辺や大規模商業施設などの通信トラフィックが多いエリアでも、より高速で安定した通信を提供することが可能となる(図1)[6]。LTE-AdvancedのFDD方式とTDD方式との間でCAを可能とするため、ドコモは3GPP仕様策定において、積極的に議論に参加し、Release 12仕様への盛込みを実現した[7]。

    図1 高度化C-RANアーキテクチャによるキャリアアグリゲーション図1 高度化C-RANアーキテクチャによるキャリアアグリゲーション

    図1 高度化C-RANアーキテクチャによるキャリアアグリゲーション

  2. その他の技術開発
    また、3.5GHz帯の基地局の展開では、人口カバー率の要件を効率的に満たすため、マクロセル基地局による展開や、トラフィック需要が多いひっ迫区域のため、高度特定基地局と呼ばれる8アンテナでの送信に対応した基地局の展開が必要となる。本特集記事では、これらの技術的要件に対応するための基地局装置や関連周辺装置の開発、ならびに端末の開発について解説をしているため、詳細はそちらをご参照頂きたい[8]〜[11]。

  1. TDD:上りリンクと下りリンクで、同じキャリア周波数、周波数帯域を用いて時間スロットで分割して信号伝送を行う方式。
  2. FDD:上りリンクと下りリンクで、異なるキャリア周波数、周波数帯域を用いて信号伝送を行う方式。
  3. キャリアアグリゲーション(CA):複数のLTEキャリアを用いて同時に送受信することで、LTEとの後方互換性を保ちながら広帯域化を実現する技術。
  4. 高度化C-RAN:ドコモが提唱する新しいネットワークアーキテクチャで、LTE-Advancedの主要な技術であるキャリアアグリゲーション技術を活用し、広域エリアをカバーするマクロセル(※10参照)と局所的なエリアをカバーするスモールセル(※11参照)を同一の基地局制御部により高度に連携させる無線アクセスネットワーク。
  5. マクロセル:主に屋外をカバーする半径数百メートルから数十キロメートルの通信可能エリア.通常、鉄塔上やビルの屋上などにアンテナが設置される。
  6. スモールセル:送信電力が大きいマクロセルと比較して送信電力が小さいセルの総称。

4. あとがき

本記事は、テクニカル・ジャーナルVol.24 No.2(Jul.2016)に掲載されています。

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