日本の携帯電話市場は1億契約を突破し、従来の成長期から成熟期に移行している。ドコモは、市場の成熟化に対応するため、事業体制の変革に向けた取り組みに着手した。
(1) ドコモの変革
- 徹底した現場原点主義でお客様満足度向上を目指す。2008年4月に発表した「新ドコモ宣言」はこれを明確化したもの。
- こうした変革に向けた取り組みはドコモの将来を大きく左右するもので、全社一丸となって取り組んでいく。
- サービスはもちろん、ネットワークや端末の作り方まであらゆる業務プロセスについてお客様視点で見直しを実施している。
- その一つの例が、11月から導入した新しい端末シリーズ。従来の機能別2シリーズから、お客さまのライフスタイルに応じた4シリーズに変更した。
(2) 新たなビジネスモデル
- 携帯電話市場では、既存のお客様の満足度を高め、長くドコモをご利用いただくことが重要で、ビジネスモデルをそれに適したものに変更した。
- 「新割引サービス」と「新販売モデル」の二つが新しいビジネスモデルの中心。
- 新ビジネスモデル導入後1年ほど経過したが、「新割引サービス」、「新販売モデル」ともに多くのお客様にご支持をいただいている。
- 新販売モデル導入の成果
- (i)解約率が低下しており、足元では0.5%程度で推移している。
- (ii)総販売数は50%程度を維持しており、数多くのお客様にご愛顧いただいている。
- (iii)純増シェアは回復傾向にある。「一人負け」と言われた状況は脱却した。
- お客さまの満足度向上を徹底し、2010年度には顧客満足度1位を獲得したい。
成熟する携帯電話市場でドコモが成長するために、ドコモがどのような分野に取り組んでいくのかを示したもの。日本国内では携帯電話の普及台数は今後大きな伸びは期待できないが、機能的にはまだまだ進化の余地がある。
携帯電話は単なる電話から始まったが、「情報アクセス」、「生活支援」と機能を拡大し、2008年11月に発売された新モデルからは新たに「行動支援」機能を備えるまでになった。
- これまで携帯電話は「電話ができる」「メールができる」といった「~できる」機能を提供していたが、「行動支援」機能の追加により携帯電話はお客様に「~してくれる」携帯電話に進化した。
- 携帯電話の更なる進化に「チャレンジ」し、今後の成長に繋げたい。
ドコモが「チャレンジ」する分野:
- パーソナル化
- ソーシャルサポート
- 融合サービス
- 動画サービスとネットワークの進化
- 端末の進化
- 国際ビジネス
- コア事業の強化(既存事業の収益基盤強化とコスト削減)
以上の分野での「チャレンジ」を通じて、2012年度には営業利益9,000億円以上を実現したい。
- 株主還元は、経営の重要課題の一つと認識しており、今後もその充実に努めたい。
A1 ・販売奨励金を削減したことも2008年度上期の業績が順調だった要因の一つだが、解約率が低下したこと、パケットARPUが好調なことも業績に寄与している。
・今後、新販売モデルによる増益効果が薄れていくなかで、2012年度で営業利益9,000億円という目標については、(1)新たな収益源の創出、(2)パケットARPUの引き上げ、(3)経営の一層の効率化により達成したい。
A2 ・ドコモの海外戦略は、過去の投資がうまく行かなかったという経験の上に立っている。
・ドコモの出資は投機目的ではなく事業投資なので、出資先がいかに発展するかが重要。投資して終わりではなく、自ら汗をかいて出資先企業の発展をバックアップしていく。
・11月にインドのタタ社への出資を発表したが、タタ社への出資がうまく行くようにプロジェクトチームを作って全社を挙げて取り組む。私自身も近いうちにチームを引き連れて再度インドを訪問するつもりだ。
A3 ・お客様の満足を高めることが会社の最大の目標であることを明確化し、お客様の満足度を高めるために結束しようと社内で繰り返し呼びかけている。
・会社が大きくなるとどうしても現場との距離が遠くなってしまう。現場が事業の原点だという現場原点主義を唱え、私自身も積極的に現場に足を運んでいる。
・現場をサポートするのが本社機能だという意識が少しずつ定着しつつあるという手ごたえを感じている。
A4 ・株主還元は経営の重要課題の一つと認識している。
・配当と自己株買い、成長投資にバランスよく取り組む。
・配当については、安定的な配当を基本方針とし、自己株買いについては、今年度は1,500億円の枠を株主総会でご承認いただいたのでその範囲で弾力的に取得する。
・取得した自己株式については、発行済株式の5%を超える部分については消却を実施している。