「渋滞」を未然に防ぐ未来へ。人口データで挑むドコモの「AI渋滞予知」

docomo EVERYDAY「渋滞」を未然に防ぐ未来へ。人口データで挑むドコモの「AI渋滞予知」

2025年11月、ドコモは東日本高速道路株式会社(以下、NEXCO東日本)と連携し、房総半島から都心へ向かう際の渋滞回避を支援する「AIルートジャッジ」の実証実験を開始しました。アクアラインと京葉道路・館山道の所要時間を予測する本施策には、ドコモの「AI渋滞予知」が活用されています。この技術は、現在アクアラインや関越道、京葉道路・館山道で、すでに提供されているものです。なぜ通信会社が道路渋滞に挑むのか。そこには独自のデータ活用と、開発者たちのひたむきな挑戦がありました。今回は、新サービスを支える技術の原点とチームの想いをご紹介します。

10年前から始まった「渋滞」への挑戦

ドコモとNEXCO東日本による「AI渋滞予知」の挑戦がはじまったのは、今から10年前の2016年。
その背景には、年間10兆円以上とも試算される、交通渋滞による経済損失という社会課題がありました。ドコモには、携帯電話ネットワークの仕組みを利用して人口の分布や動態を推計する「モバイル空間統計」というデータがあります。
2013年から提供を開始したこの技術は進化を続け、現在ではどのエリアに人が密集しているかを、ほぼリアルタイムで把握できるようになりました。「このデータを活用すれば、渋滞による巨大な損失を少しでも減らせるのではないか」開発チームはそう考え、この技術を社会実装できるパートナーを探しはじめました。

携帯電話ネットワークを利用した人口推計の仕組み
モバイル空間統計によって可視化された人口分布

一方、時を同じくして、NEXCO東日本もアクアラインの渋滞対策に頭を悩ませていました。東京湾の海上を横断するアクアラインは、長いトンネルや橋梁で構成されているため、車線を増やすといったハード面での対策が難しく、新たな切り口での解決策を必要としていました。そこでドコモが、NEXCO東日本に対し人口データの活用を提案したところ、NEXCO東日本のニーズと一致。そこから連携にむけた具体的な協議がスタートしたと開発チームのメンバーは語ります。
「通信の力で社会課題を解決したいという想いを持ってNEXCO東日本と対話を重ねました。ドコモが持つ人口データとAIを活用した予測技術、NEXCO東日本が持つトラフィックカウンターをはじめとする交通実績データと交通工学の知見、これらを掛け合わせることが交通渋滞を解決する一手になるのではという考えのもと、『AI渋滞予知』の開発がはじまりました。」(寺田さん)

「未来の渋滞」が見える仕組みとは

「AI渋滞予知」とは、「『いま』の人の動きから、数時間先の『未来』における渋滞の発生とその時間ごとの推移を実用的な高い精度で予測する」技術です。一般的な渋滞予測は、過去の統計データや、道路上のセンサーで検知した過去の渋滞をもとにし、旅行計画の策定を目的として2か月ほど前に発表しています。しかし、ドコモのアプローチは全く異なります。携帯電話ネットワークの仕組みを利用した「モバイル空間統計」を活用し、当日の人口分布に基づいて、未来の交通需要を予測し、その交通需要をもとに所要時間の推移を予測する二段階のアプローチをとっています。この独自技術について、開発チームは次のように説明します。「雨が降ると、その後、川が増水しますよね。それと同じで、観光地に人が増えれば、その人たちが帰路につく夕方には、道路が混雑する可能性が高まります。この"行った人が帰ってくる"という人の分布と交通の関係をAIに学習させることで、数時間先の未来を見通すことができるのがこの技術です」(佐々木さん)

人口分布から未来の交通需要と所要時間を予測する、AI渋滞予知のメカニズム

たとえば、アクアラインや京葉道路などの渋滞を予測する場合、具体的には、正午時点の房総半島の人口分布データをもとに、その日の14時以降の交通需要を30分刻みで予測しています。
しかし、実現には高いハードルがありました。
それは、多様な属性を持つ大規模な人口データから、適切な情報を実用的な速度で抽出し、処理しなければならないという課題でした。開発チームはこれまでモバイル空間統計で培ってきた技術力を活かし、この課題を解決しました。
さらに、学習に使用した交通実績データのなかには、渋滞実績だけでなく、事故や交通規制などのデータを含んでおり、今回の渋滞予測のなかで必要なデータに絞って学習するための補正処理も課題となりましたが、NEXCO東日本が持つ交通工学の知見を掛け合わせることによって解決していきました。
こうして確立された予測モデルは、単に精度が高いだけではなく、画期的な特長を備えることができました。それは、過去の統計に頼るのではなく、リアルタイムの人々の動きを見ているからこそ、天候の急変やイベントによる当日の突発的な人出の変化にも対応できるという強みによるものです。

予測の信頼性向上に向けた、地道な対話

この技術は最初から完璧だったわけではありません。開発の初期段階では、特定の日において思ったように精度が出ないこともありました。しかし、道路管理のプロであるNEXCO東日本と膝を突き合わせて徹底的に議論し、地道な改善を積み重ねることで、その精度を高めていきました。
「近くで道路工事はなかったか、周辺施設のイベント状況はどうだったか、データだけでは見えない現場の知見を教えていただき、それを一つひとつAIモデルに反映させていきました。また、学習用のデータには、NEXCO東日本が管理するトラフィックカウンターの値を使用し、予測と現実のズレを修正し続けました。このディスカッションがあったからこそ、高い予測精度を持つ『AI渋滞予知』が生まれたと考えています。」(寺田さん)

[上]AI渋滞予知お客さまアンケート結果の概要、AI渋滞予知の評価より
[下]AI渋滞予知お客さまアンケート結果の概要、AI渋滞予知閲覧後の行動より
※調査期間:2019年7月~8月(アクアライン)、2023年7月~8月(京葉道路)、2020年7月~9月(関越道)

こうした地道な改善の結果、実証実験のアンケートでは、利用者の9割以上から「満足」との回答をいただき、約7~9割の方に「時間をずらす」「ルートを変える」といった具体的な行動の変化が見られました。全く異なる分野の2社が互いの専門性を尊重し合い真摯に向き合った結果が、ドライバーのみなさまからの信頼につながっています。

「渋滞ゼロ」の幸せな時間のために

こうして、数多くの苦労と実験、検証を重ねて生まれた「AI渋滞予知」。この技術を活用し開発されたのが、2025年11月より実証実験を開始している「AIルートジャッジ」です。これは、木更津JCTから特定のエリア(京葉JCT、箱崎JCT、板橋JCT)までの当日午後の予測所要時間について、アクアラインを経由するルートと、京葉・館山道を経由するルートでそれぞれ予測し、比較結果を配信するサービス。これを利用することで、それぞれのルートでの渋滞のピークを事前に把握し、混雑している時間帯を避けた帰宅が可能となります。さらに、ピーク時間帯を避けた帰宅が難しい方には、より所要時間がかからないルートを選択することができるため、ストレスの少ない運転計画を立てることができます。
「この技術で、移動先での滞在時間を十分に取れるようになれば、地域経済の活性化にもつながります。そして何よりも、ドライバーのストレスを減らし、ご家族との車内での時間を笑顔にすることができる。それがハッピーな旅行体験につながると考えています。」(佐々木さん)

2025年11月より提供開始した「AIルートジャッジ」の予測画面

渋滞が減るということは、ドライバーの「早く帰りたい」という願いを叶えるだけではありません。車がスムーズに流れることで、社会全体のCO2削減や、物流の効率化などにもつながっていきます。ドコモがめざすのは、テクノロジーの力で生活のあらゆる不便や、困りごとを快適に変えること。今後はこの技術を防災や他の社会課題の解決に役立てたいと考えています。まずは「渋滞は予知して回避する」ことがあたり前になる世のなかへ。これからもドコモはNEXCO東日本とともに、それぞれの技術や知見を持ち寄り、よりよいサービスを提供するために努力していきます。
「AIルートジャッジ」はこちらからご覧いただけます。

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