手話通訳派遣を牽引するドコモがめざす誰もが活躍できる社会

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ドコモ・サポート株式会社(以下、ドコモ・サポート)では、耳の聞こえにくい方や聞こえない方のコミュニケーションを支援するための手話通訳派遣サービスを2023年に開始しました。社内外から高評価を得て実績を伸ばし、専門性の向上や社会全体の理解促進をめざしています。
今回は、この取組みを中心となり推進している社員に話を聞きました。

岡村さま

ドコモ・サポート株式会社
コンタクト事業本部 ナレッジセンター
業務支援・手話サポート担当
岡村 昌美

柴田さま

ドコモ・サポート株式会社
コンタクト事業本部 ナレッジセンター
業務支援・手話サポート担当
柴田 志保

西川さま

ドコモ・サポート株式会社
コンタクト事業本部 ナレッジセンター
業務支援・手話サポート担当
西川 めぐみ

「手話通訳派遣サービス」とは?

──施策の内容をお聞かせください。

岡村:ドコモ・サポートの手話サポートセンターに所属する社員を、グループ内や一般企業、自治体に派遣し、耳が聞こえない方と聞こえる方を、手話通訳でつなぎます。
ドコモ・サポートでは、スマートフォン・携帯電話などのコールセンターの運営・管理や、ドコモオンラインショップなどのポータルサイトの構築・各種サービスの運営支援などが主な業務ですが、この「手話通訳派遣サービス」は、自主事業として2023年6月より開始しました。

西川:サービスは訪問もしくはオンライン形式で、会議、研修や面接などに手話通訳を派遣します。特にキックオフイベントへの派遣は珍しいと高い評価で、「他社で断られて、こちらを頼った」というお客さまもいらっしゃいます。また、研修用の映像コンテンツなどへの手話ワイプ(小窓)の挿入も行います。2023年度の実施件数は105件、翌年の2024年度は285件と、2倍以上、もしくは約3倍のご依頼をいただきました。

「手話通訳派遣サービス」の概要

──実現まで、どのように進めていったのでしょうか。

柴田:話は2003年までさかのぼります。当社では、以前からドコモショップを訪れる耳の聞こえにくい方や聞こえない方に向けた手話通訳サービスを他社に先駆けてはじめていました。この下地を活かし、さらに多くの方々の一助になるには──。そんな思いから浮かんだ構想ですが、実際にどれほどの需要があるのかはわかりませんでした。

そこで2022年度、NTTグループ内で無料のトライアルを実施しました。依頼数は1年間で53件。この数字は大きな励みになり、グループだけでこれだけのニーズがあるならばと、本格的に施策を始動させました。

しかし、ドコモの100%出資会社であるドコモ・サポートによる自主事業の事例はほとんどありません。私たちにしても、契約書のつくり方を学ぶところからのスタートでした。料金設定も自分たちで考え、本業であるドコモショップの手話サポートをしながら時間も捻出しなくてはなりません。

数々の障壁があり、はじめから順風満帆とはいきませんでした。ですが、経営企画部や総務部など関係各所の力を借りて、なんとかグループ外の企業や教育機関への営業をかけるまでにたどり着けました。

インタビュー風景(柴田さま)

“手話は言語”─本人の可能性を引出す

──営業先の反応はいかがでしたか。

岡村:「うちは文字で十分だから」。提案に対して、そう反応をいただくところもありました。映像教材なら字幕でいい、あるいは音声を文字化するアプリで対応すると。

耳の聞こえない方に文字情報だけですべて伝わるわけではありません。しかし「手話は言語。文字では伝えきれない抑揚やイントネーションなど、あまねく音情報を伝えることができる」。根気強くそう語り続けると、ご理解をいただくことができました。

インタビュー風景(岡村さま)

──利用者からの声もお聞かせください。

柴田:ご依頼をいただいた会社の上司の方からは、通訳がつくことで生き生きとしたものに変わっていく部下の眼差しに驚いたとの声がありました。「普段一緒に仕事をしているのに、本人のポテンシャルに気づかなかった」と。「母語」で話せる喜びや、相手にいいたいことが伝わる喜びが、表情に出ていたのでしょう。

岡村:ある会社の懇親会に通訳としてうかがったことがあります。昨年は筆談で参加していたという対象者の方から、「周囲に気を使った前回と違い、みんなの輪にとけこめて楽しかった」との声をいただきました。「ありがとう」の言葉に、続けてきたことは間違いじゃなかったと思いました。

西川:私たち手話通訳者の側も、本施策をとおしてかけがえのない経験をしました。通常業務だけでは学べない知識を得たり、技術を磨く機会があったり。広い世界で培った経験値は今後、多様な場面で役立っていくはずです。

インタビュー風景(西川さま)

誰もが活躍できる世のなかに─これからの手話通訳の使命

──本施策の、あるいは手話通訳の普及で、どんな世のなかになってほしいですか。

西川:社内の勉強会や研修に参加するために手話通訳を依頼したくても、金銭面がネックになるとの話も聞きます。手話が言語として認識され、各企業で依頼したいときにできる環境が整うよう、私たちも尽力していきたいと思います。

柴田:私は、IT系や医療系など、専門分野に特化した手話通訳がさらに普及してほしいとの思いがあります。米国などと違い、日本の手話通訳者は「何でも屋さん」。その分野の深い知識がなければ、伝えるべき核の部分が伝わらない。情報が共有できないといった事故も起きかねません。

言語としての専門性を高める道筋を探り、専門的な通訳が各所で育ち、どこでも本格的な通訳を受けられるようになる。そんな環境ができていけば、より多くの人にとって暮らしやすい社会になるのではないでしょうか。

岡村:昨春の「改正障害者差別解消法」の施行で、官民問わず多様な特性をもつ方々に対して合理的配慮が義務付けられました。しかし、その配慮は当事者が申し出て、そこではじめて効果を発揮するもの。そんなことをせずとも、事前に想定した環境整備で対応できる、あらゆる会社でそれがあたり前の世のなかになっていってほしいです。

多様性を認め合える社会が未来に花開くため、ドコモグループが手話通訳の派遣を率先して行い、配慮や支援を必要とする方々への偏見や誤解をなくしていく。これは、リーディングカンパニーとして大切な役割だと思います。

インタビュー風景(3人)
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