日本初、ドコモが国際ローミング故障回復業務の自動化「ZTO」を実現

docomo EVERYDAY日本初、ドコモが国際ローミング故障回復業務の自動化「ZTO」を実現

国際ローミングの保守業務のうち故障回復を自動化した「ZTO(ゼロタッチオペレーション)」。夜勤廃止を目標に約300の業務を見直し、コスト削減と品質向上を実現しました。
今回はこの取組みを中心となり推進している社員に話を聞きました。

プロフィール画像(池田 正隆さん)

サービスオペレーション部
国際サービス運営
池田 正隆

ZTO(ゼロタッチオペレーション)とは?

──どのような取組みか、お聞かせください。

池田:携帯電話のユーザーが契約先とは別の海外通信網を使える「国際ローミング」というサービスがあります。これを利用すれば、お客さまが海外でもドコモの携帯を使うことができますが、その裏では24時間365日、迅速かつ確実性の求められる故障回復業務が行われています。この故障回復業務を完全に自動化したというものです。

監視システムが故障の検知を集約し、それぞれに応じた策を他社のオペレーターに連絡したり社内関連部や幹部に適切な報告を行うなどの動作を、すべてプログラミング化しました。

ドコモが日本ではじめて国際ローミングサービスの保守における完全自動化を実現させました。この人の手を介さない「ZTO(ゼロタッチオペレーション)」により、人為的なミスは100%なくなり、故障から回復までの時間は最大で75%カットに。さらに大幅な経費の削減にもつながりました。

  • 2023年7月現在、公開情報において、ドコモ調べ。
ZTO(ゼロタッチオペレーション)の導入前と導入後

夢物語から現実へ─はじまりは「夜勤をなくしたい」

──どのような経緯ではじまったのでしょうか。

池田:ローミングを含め故障回復を含む保守業務を自動化しようという動きは、古くから遠い未来の夢物語としてありました。それが現実になりはじめたのが2019年ごろです。携帯電話先進国の欧米を中心に、実用レベルの自動化装置が少しずつ登場しはじめてきました。
着々と基盤ができていくなか、私たちも国内でいち早く着手しました。世界的にも比較的早い段階での実装でしたので、ノウハウもありません。協力をお願いしたNTTデータとともに歩みながら、つくりあげていきました。

技術的な課題がある一方、ゴールの設定をどうするかも悩みました。もちろん一番の目的は、世界的にも基準の高い、日本の携帯電話の品質要求を満たし、問題が起きた場合に迅速に解決することです。

ですが、これらは自動化が実現すれば、副次的に達成できてしまうもの。より明確で、社内の誰もが納得できるわかりやすい目標を模索するなかで浮かんだのが、「体力がもたない」「家族のケアがしにくい」などの問題を抱えていた「夜勤をなくす」というゴール設定でした。

──現場のエンジニアも納得できる、わかりやすいゴールですね。

池田:ゴールは決まりましたが、頭を抱えたのが次の段階です。ZTOの対象業務を洗い出してみると、なんと約300項目。これをそのまま実装すると、莫大な費用と時間がかかります。そこで、一つひとつていねいに業務の見直しや削減をはかることにしました。
ところが、業務をグループわけして少しずつ精査し、やっと前に進んだと思っても今度は別の課題が発生する──。そんな状況が続き、見直し作業などに約1年もの月日を費やしました。しかし、根気強く進めた結果、約300もあった開発対象項目が大幅に減り、開発費も80%以上削減することができました。

インタビュー風景①

ZTO実現のカギは“人の力”

──ZTOの本格稼働は、2022年の4月からですね。関係者からの反響はいかがでしたか。

池田:「本当にできたのか」「一体どうやったんだ」など、学会や海外の通信会社などからの称賛の声は、予想以上のものでした。関係者からは、いまだに「予算もつかない」「業務の見直しができない」という話も聞きます。一方で、実装するための相談を受けることも増えました。

──なぜドコモで実現できたのでしょうか。

池田:安定性のある優れた技術や装置が世に出回っているいま、保守業務の自動化で最も問題になるのは「人」の部分です。自身の役職を失うおそれから、ノウハウを他者に伝えないケースも多い海外に対し、日本はどちらかというと後世に伝え、共有していこうという意識が高い。勤勉でリスキリング(新たなスキルや知識の学び直し)への意欲も高いこの国だからできた、というのが一つあります。

加えて、ドコモには現場の故障回復を担うメンバーの中に新しい技術を前向きにとらえる人材がいました。「このままでは海外から取り残される」、そう考えたメンバーらが、「これだけ大変な業務が機械にできるわけがない」と否定的だった現場のメンバーを説得し、まとめあげてくれました。この取組みのMVPは、間違いなく彼らです。

インタビュー風景②

技術と人がつくる未来

──今後の展望をお聞かせください。

池田:国際ローミングでできたZTOを、国内でも応用がはじまっていて拡張していくことが一つ。もう一つはドコモ内のネットワークにとどまる自動化を、さらに多様な分野に広めていきたい。国際ローミングは、ドコモと渡航する国の通信会社のネットワークを使って成立するものですが、その間は自動化されておらず、相変わらずメールや電話という旧式の連絡手段を使っています。

もし、その間を相互接続して自動化できれば、故障回復の時間をさらに早められるし、働き方も変わってきます。豊かな時間が創造され、新しいビジネスも生まれるかもしれません。
現在、ドコモはそれに向かって世界の通信会社に課題提起を主体的に行い、技術的な実現に向けて標準化も含めて取組んでいます。

こうした技術の加速の先に、もはや「人」は必要ないのではないか──。そんな疑問に対して、私は「いいえ」と答えます。そもそもこの取組みの成功を支えたのは、紛れもなく人の存在でした。どれだけ技術が進歩しても、本当に大事な判断は人なくしてはあり得ません。技術と人が併存していけば、きっとよりよい社会ができる。そう信じています。

このページのトップへ