
docomo EVERYDAYドコモのビルにはじめてバイオマス発電を導入
―再生可能エネルギーの未来を考える
ドコモは、東北電力株式会社、北陸電力株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、NTTアノードエナジー株式会社と連携し、太陽光発電所とバイオマス発電所で調達する電力を自社が保有かつ使用する東北・北陸・関東エリアのドコモのビルに2024年7月より導入しました。
今回は、ドコモではじめての導入となったバイオマス発電に注目し、施策を中心となり推進した社員に話を聞きました。
インフラデザイン部
ファシリティデザイン・ファシリティ企画担当
近藤 仁志

安定供給可能な「バイオマス発電」に着目
──本施策の内容をお聞かせください。
近藤:再生可能エネルギー(以下、再エネ)であるバイオマス発電を、ドコモではじめて導入しました*1。森林の手入れの際に出る秋田県の間伐材を燃料としており、秋田、青森、仙台の3つのドコモビルに導入しています。年間総電力量は、3ビル合計で7.9百万kWhで、うちバイオマス発電の年間発電量が6.0百万kWhになります。これは一般家庭の年間電力使用量*2で換算すると約1,518世帯以上の電力使用量となります。
ドコモは、自社の事業活動での温室効果ガス排出量を2030年までに実質ゼロにする「2030年カーボンニュートラル宣言」を、2021年9月に公表しました。それに対応すべく、太陽光発電を東北・北陸・関東エリアのビルへ導入しましたが、日の出ている時間帯しか発電できないという課題がありました。
夜間のカーボンニュートラルをどうしていくか──。いくつかの再エネをあたるなか、供給量の観点からたどり着いたのが、天候に左右されずに電気をつくることができるバイオマス発電でした。
供給の流れは、秋田県内全域にわたるネットワークから木製チップが秋田市のバイオマス発電所「向浜発電所」に集められ、そこで生まれた電力がドコモのビルに供給されるというものです。昨今、林業従事者も減ってきているなかで、地域への貢献も視野に入れた取組みとなっています。
- ドコモのビルへのバイオマス発電について詳しくはこちら
- 令和4年度の世帯あたり年間エネルギー種別消費量は全国平均で電気が3,950kWh。
出典:環境省「令和4年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」図1-72(p.41)
世界の潮流に乗る喜び
―迎えた新たな一歩
──取組みは、いつからはじまったのでしょうか。
近藤:いまから約3年前、再エネを導入する方針を立てたサステナビリティ推進室より打診があったのがはじまりです。私が所属するインフラデザイン部は、電力設備と建物の維持管理が主な業務ですが、そのなかの一つに、電力調達の役割もありました。
環境負荷の低減という使命は、インフラの業務に携わる人間なら誰しも意識するところです。舵を切るにあたっての戸惑いなどは特段なく、世界がめざす方向に今後は我々も合流できるという喜びが先立ちました。

──バイオマス発電に関して、どのように施策を進めていったのでしょうか。
近藤:以前からつながりのあった大手電力会社やNTTアノードエナジーなど電力関係のグループ会社を通じて、まずは太陽光以外の電力電源の状況を探りました。
社会的意義はもちろん重要です。ただ「コストは二の次」というわけにはいきません。もしさらなる費用がかかるなら、巡り巡ってエンドユーザーの方々へのご負担になってしまいますから。
どうすれば一定の安定した供給量が確保でき、さらにコストを抑えられるのか。さまざまな発電の方法を検討した結果、最終的には木質チップを活用したバイオマス発電を行う向浜発電所と契約を結びました。振り返ってみると、この発電所探しが最も大変でしたね。発電所では、原料に間伐材だけでなく輸入したヤシの実の殻を混ぜ込むことで、燃焼効率を高める工夫をしています。
気がかりだったのは、これほど大がかりなバイオマス発電所の導入実績が国内ではあまりなかったこと。実際に現地を視察し、慎重にことを進めました。
社会を動かすドコモの責任と未来の再エネとは
──こうした施策をドコモが取組む意義はどこにあると思いますか。
近藤:いま、化石燃料から再エネへの転換が声高に叫ばれています。しかし、どれだけ制度を整えても、そもそもの需要がなければ現実的ではありません。
ですが、企業規模が大きく電力消費量も多いNTTグループが率先して再エネの利用に取組めば、価格も安定し、ひいては日本全体のエネルギー自給率を上げることにつながるかもしれません。
太陽光発電でも足りない電力については自ら足を踏み込まずとも、再エネ由来の電力とみなせる再生可能エネルギー指定の「非化石証書」*3を購入するだけでも十分では、との声もあります。実際に、ドコモでも再生可能エネルギーを導入した上で不足する電力部分については非化石証書を付与し、各ビルで消費する電力の実質再生可能エネルギー比率を100%としています。
ですが、脱炭素への高い水準を掲げて通信サービス業界の先頭を走るのは、再エネ業界活性化への貢献も含め、ドコモの大事な役割だと思います。
- 非化石証書とは、石油や石炭などの化石燃料を使っていない再生可能エネルギーで発電された電気が持つ「環境価値」を取り出し、証書にして売買する制度。電気と非化石証書を組み合わせて提供することにより、実質的に再生可能エネルギー比率100%を実現できる。

──今後の展望をお聞かせください。
近藤:世界情勢に振り回されないためにも、自立した電力電源の確保が、日本にとってもドコモにとっても大事になってくると思います。
一方で、太陽光発電所やバイオマス発電所を構築するための用地がなくなるという問題も、長い目で見れば浮上してきます。追加電源の開発や確保が頭打ちになるということです。
そこで大事になってくるのが、環境価値の水準と照らし合わせながら、追加性のない既存の電源の使い方などをもう一度見直すこと。
バイオマス発電は社会的な注目度も高く、クリーンなイメージがある一方、近年では、同発電をしたいがために木質ペレット(間伐材や樹皮、枝葉などの木質バイオマスを原料として作られる固形燃料)を輸入し、結果、海外の森林破壊につながっているという報道もされています。
ただただアピールのために新たなグリーンエネルギー(風力発電や太陽光発電など環境負荷の少ないエネルギー)を利用するのではいけません。実際的な面を見極め、足元をしっかりと固める必要があると思うのです。
たくさんの人たちが幸せに暮らせる未来をつくる方法は何か。これからも知恵を絞り、微力ながら貢献していければと思います。