再生可能エネルギーの未来と、
カーボンニュートラル実現のために
必要なものとは。

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MASAKAZU SUGIYAMA
杉山正和
カーボンニュートラル

MASAKAZU SUGIYAMA

杉山正和

東京大学先端科学技術センター

東京大学先端科学技術センター教授。2000年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程修了。博士(工学)。東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻教授等を経て、2017年4月より現職。2000年化学工学会奨励賞、2004年日本燃焼学会論文賞、2017年東京大学大学院工学系研究科長表彰(研究部門)などを受賞。

ドコモがめざすグリーンな世界

私たち人類が社会活動をするために、電気をはじめとした多くのエネルギーを必要としています。18世紀後半、英国で起こった産業革命以降、石油、石炭、天然ガスなどの「化石燃料」を使うことで、人類はあらゆる利便性を手にしてきました。こうして人類が化石燃料を使い始めて200年が経ちますが、地球の長い歴史のなかで化石燃料はいつ作られたかご存知でしょうか。

これは地球上の生物の歴史とほぼ同じ。つまり数億年という長い時間をかけてつくってきた化石燃料を、人間はわずか100年、200年の間に使い尽くそうとしているのです。さらに化石燃料を使うことで排出された大量の温室効果ガスにより、地球温暖化という環境問題まで引き起こしてしまいました。

世界の平均気温は産業革命以前と比べ、約1℃上昇しています。このままの状況が続けば、さらなる気温上昇が予測されています。

そこで近年「カーボンニュートラル」をめざそうと世界レベルで声が上がっています。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。

世界の動きとしては、2015年にパリ協定が採択され、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することという世界共通の長期目標を定めました。

2020年10月、日本でも2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルをめざすことを宣言しました。

それに付随するように、いま日本では多くの企業がカーボンニュートラルをめざして積極的に取組んでいます。NTTドコモは、自社の事業活動での温室効果ガス排出量を2030年までに実質ゼロにする「2030年カーボンニュートラル宣言」を発表し、カーボンニュートラルに向けた取組みを開始しました。

まずは「グリーン5G」。太陽光発電を利用したグリーン基地局や、ドコモ専用に設置した太陽光発電所等で発電した再生可能エネルギーなどを利用することにより、温室効果ガスを削減していくことに加え、ドコモの総電力消費量に占める実質再生可能エネルギー(非化石証書等含む)の比率が、ドコモの総契約数に占める5G契約数の比率よりも上回ることで、温室効果ガスの排出をしない「環境に配慮した5G」にしています。

また、再生可能エネルギーの積極的な活用を通じて社会全体のカーボンニュートラルに貢献するため、2022年3月(予定)から「ドコモでんき™」をスタートさせ、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを活用した地球にやさしいでんきのプランも提供していく予定です。

ドコモのこうしたカーボンニュートラルへの取組みや、再生可能エネルギーの電力発電や次世代エネルギーとは何かを探るべく、今回は主に太陽光発電を専門にする東京大学先端科学技術センターの杉山正和教授に話を伺いました。杉山先生は、いま、世界レべルでカーボンニュートラルが必要とされているのかを次のように語ります。

「地球の環境問題に配慮しながら人間の社会活動を維持できるサステイナブルな社会を実現するためには、エネルギーの消費と製造の時間がマッチしていないといけません。数億年かけてつくられた化石燃料をわずか100年で使い尽くすのではなく、人類が消費する燃料は、消費される時間と同じ時間で製造されなければならないということです。CO2の問題は、この根本的な燃料の消費と製造の年数のミスマッチから出てきた副産物で、資源の枯渇よりも先に解決しなくてはならない緊急の問題になってしまいました」

資源の枯渇問題、CO2をはじめとする温室効果ガスの問題という2つを解決し、本当のサステナブルな社会を築くために私たちには何ができるのでしょうか。

杉山正和教授

必要なのはワクワク感という価値創造

我々は、どのようにカーボンニュートラルの実現をめざせばよいのでしょう。屋根に太陽光パネルを設置している戸建てやマンションがありますが、杉山先生は「壁」「窓」なども視野にいれて設置する必要があると言います。例えば大岡山にある東京工業大学の「環境エネルギーイノベーション棟」は、建物の壁のほぼ全面に太陽光パネルが設置されています。これによりCO2の排出量を約60%以上削減し、棟内で消費する電力をほぼ自給自足できるエネルギーシステムを持っています。

杉山先生は「かっこいいと思えるかどうか、ワクワクできるかどうか」が重要だと語ります。
「太陽光パネルは無骨なイメージがあると思いますが、まずは『かっこいい』と思ってもらえるように変えていかなければならないと思うんです。ですから最近はガラスの加工を進化させて、薄型でファッショナブルでデザイン性の高いものを開発しています」

「カーボンニュートラルを社会に広めるために『これをやらなければならない』と国から言われても、押し付けられているようで社会に閉塞感が生まれてしまう。だから私はワクワクするカーボンニュートラルの方向性を考えませんか、と提案したいのです。もちろん圧倒的な面積が必要ですが、これからは発電だけやっていたらダメ。ワクワクできる価値に変えていくことが発電で大事なことだと思います」

これまで消費者は、金銭を支払うことで電力を得ていましたが、今後は自分たちで「つくっていくもの」という意識をもつことが重要です。

太陽光パネル
  • ※杉山先生が開発中の、ガラスを薄くしたスタイリッシュな太陽光パネル

ドコモは価値創造ができるプラットフォーマー

杉山先生がカーボンニュートラルの実現のためには「ワクワクすること」が必要だと語るように、このワクワク感は、ドコモのグリーン5Gやドコモでんきの取組みにもつながります。

ドコモは、「あなたと世界を変えていく。」というスローガンを掲げ、環境問題においては、「あなたと一緒に」、「環境をより良い方向に変えていく」ことをめざしています。2021年、お客様やパートナー企業とともに、楽しみながら地球に良いことができる新しい取組みをはじめました。そしてこれは携帯キャリアというプラットフォーマーだからこそできることです。

杉山先生は、ドコモのような通信キャリアがカーボンニュートラルに取組むことについて、次のように期待を寄せます。

「日本の技術は世界に比べて決して劣っていませんが、それを社会実装するための法制度や仕組みづくりが圧倒的に弱いと思います。法律でがちがちに固めるのではなく、多くの人が満足できるために、お金ではなく『カーボンニュートラルっていいよね』という価値観で社会がまわるような価値創造が必要です。ドコモさんならそうした価値創造ができると思います」

人間が自然と共存する中で、カーボンニュートラルとは必ず向き合わなくてはいけません。

「ドコモのようなテクノロジーに付随したコンテンツやコンセプトでハンドリングをする方法が、再生可能エネルギーの世界に入ってきたら、世の中は変わるのではないかなと思います。この方向性がカーボンニュートラルの社会が本当に来るか来ないかのポイントだと思います」

カーボンニュートラルは、誰かに言われて取組むものではありません。これからの時代は自然と再生可能エネルギーに目を向けられるようなワクワクするような価値を、プラットフォーマーであるドコモなら生み出していけるのかもしれません。

最後に杉山先生は、カーボンニュートラルが実現した未来を語ります。

「たとえば、2100年にはエネルギーが太陽のエネルギーでまわる世界になり、同時に物質も循環する社会であってほしいと思います。人間の新しい技術で、もっと効率よく炭素の循環や窒素の循環ができる社会が来ないといけません」

私たちの世代、次の世代にもつなげていくために、これからも人々の意識を変えていく必要がありそうです。

杉山正和教授
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