目に見えない不便をAIで可視化して、通信品質の向上をめざす「お客さまネットワーク体感指数(CNX)」
スマートフォンの表示ではアンテナは立っているのに、動画が止まる、SNSのタイムラインが更新されにくいという経験はありませんか。時として、圏内という表示だけでは、お客さまが実感される
本当の快適さまでは、十分に見通すことができないことがあります。そんな、目に見えない使い心地を少しでもよくしたいという想いから、ドコモは今AIを活用して、一つひとつの通信状況を緻密に把握し、改善へつなげる「お客さまネットワーク体感指数(以下、CNX指数)」の導入という、新しい挑戦をはじめています。
「お客さまの体感」を基準とした、新たな通信品質の評価指標
ドコモはこれまで、基地局そのものに不備がないかを主な基準として、ネットワークの品質を守ってきました。しかし、現場のエンジニアたちは長年、あるジレンマを抱えていました。それは、基地局のステータスは正常と表示されているのに、お客さまからつながりにくいという声が届くことです。ドコモは、この「基地局設備の正常な数値」と「お客さまのリアルな体感」の間にあるギャップを埋めるために、どのような対策を打ち出すべきか、社内で幾度となく議論を重ねてきました。
苦悩の末に辿り着いたのが、AIを活用して通信の快適さを数値化する「CNX指数」の導入です。これによって、今までに見えなかった通信の状況を、お客さまの体感で可視化し、その結果から迅速な改善アクションへつなげることが可能になりました。従来の設備基準による品質管理に加えて、お客さまの体感を新たな評価軸に加えることは、ドコモにとって大きな転換点です。当初は長年の軸を変更することに、社内で戸惑いもありましたが、お客さまにより快適な通信環境を提供したいという想いのもと、2025年10月より「CNX指数」の全国での本格導入がスタートしました。
毎日、全国の「見えない通信ストレス」を拾い上げるために
「CNX指数」導入は、一朝一夕でできることではなく、そこにはエンジニアたちの地道な努力と試行錯誤がありました。全国約8,000万人規模という膨大なデータをAIで毎日分析し、ネットワークの状況をきめ細かく数値化することは、技術的に困難な挑戦です。なかでも大きな壁となったのは、データ処理にかかるコストの問題。開発当初に構築したシステムでは、予想していたコストの5倍にまで膨らむことがわかったのです。
コスト削減のために対象データを一部の地域に絞る、あるいは更新頻度を下げるという案も検討されましたが、最終的には“毎日、全国の数値を出す”ことを決断。通信環境は日々変化し、お客さまのストレスは場所を選ばず発生します。昨日起きた不便を今日見つけ出し、すぐに改善へと動く。そのスピード感が、お客さまの使い心地に寄り添うための必要な条件だと考えたからです。この“毎日・全国”という方針を技術的に両立させるため、システム構成をゼロから見直し、細かなチューニングを幾度となく繰り返しました。こうした地道な改善を積み重ねた結果、処理コストを当初の5分の1にまで圧縮しながら、データを絞るなどの妥協をすることなく、毎日全国からのデータ収集を可能にしました。こうして、日本全国のネットワークの品質を、毎日欠かさず確認できる体制が整いました。
この「CNX指数」の導入によって、これまでは把握が難しかったお客さま体感をベースとした細かな通信品質の変化を、客観的に捉えられるようになりました。設備の数値上では正常であっても、日常のなかで見過ごされていた通信低下をいち早く見つけ出し、改善へとつなげることが可能になったのです。
たとえば、特定の住宅街や毎日の通勤路など、日常のなかでなぜか通信が遅い、この場所だけ使いにくいといった、お客さまのピンポイントなストレスが、AIによって客観的な数値として浮かび上がるようになりました。「CNX指数」の導入によって、もとから混雑が想定される場所の対策に留まらず、お客さま一人ひとりの暮らしに密着した見えない通信の不便を拾い上げ、改善へとつなげていく。そういった、新しい品質改善の姿をめざせるようになりました。
AIが捉えた兆候と現場の技術で、さらなる快適をめざして
AIがはじき出す「CNX指数」は単なる統計上の数値ではありません。それは現場でネットワークを支える社員にとって、いわば“お客さまの声”そのものです。たとえ基地局設備がデータ上で正常と表示していても、この指数に低下が見られれば、エンジニアは即座に原因を追求。現地での詳細な調査にもとづき、アンテナ角度の調整や基地局のパラメータ設定の最適化などの地道な改善を一つひとつ積み重ねていきます。このような、AIが捉えた不満の兆候に対して、エンジニアが長年培ってきた技術で応えるという二人三脚の取組みが、お客さまの体感に寄り添った品質改善を行うための、新しい指針となります。
この「CNX指数」を活用した取組みは、これからも進化を続けていきます。現在は、日々のネットワークの状態を客観的に把握し、分析の精度を高めながら、その結果を迅速な改善へとつなげていく段階にあります。将来的には、お客さまが不便を感じる一歩手前でネットワークが自ら最適化を図るような仕組みの構築をめざしています。ドコモはこれからも、新しい技術と現場の情熱を掛け合わせ、お客さまに確かなあんしんと快適を届けていきます。
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株式会社NTTドコモ ネットワーク本部 ネットワーク部 技術企画
藤塚 拓実
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株式会社NTTドコモ ネットワーク本部 ネットワーク部 技術企画
枡田 智希
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株式会社NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 ビックデータ基盤
成清 修平
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株式会社NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 ビックデータ基盤
松村 和士
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株式会社NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 ビックデータ基盤
竹鼻 将生
