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世界初、AIによるモバイルネットワーク構築の自律化
作業期間を80%削減し、快適な通信環境の提供をいち早く

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2026年3月、ドコモはモバイル関連の展示会「MWC Barcelona 2026」にて、世界初の技術を発表しました。それが、「AIによるモバイルネットワークの自律的な構築」です。従来、通信の中核を担うモバイルネットワークの構築には、熟練エンジニアによる膨大な手作業が必要でした。ドコモはこの工程にAIを導入することで、作業期間を約80%も短縮することに成功しました。今回は、この技術について紐解きながら、通信品質の向上のために新たな領域へ挑んだチームの想いをご紹介します。

  • 2026年3月2日時点、ドコモ調べ。

複雑化するモバイルネットワークに対応する技術開発

動画を見る、メッセージを送るなど、お客さまがスマートフォンで5G 通信を行うとき、基地局の裏側では「5Gコアネットワーク」という設備が、通信の中核を担っています。
現在の5G通信は、その能力を最大限に引き出す「5G SA(Standalone)」という通信方式を採用しています。5Gコアネットワークは、この5G SAにおいて通信の制御や管理を担う重要な設備です。ドコモでは、自社の専用基盤(オンプレミス)に加えて外部のクラウド(パブリッククラウド)を組み合わせて5Gコアネットワークを構築し、より安定した通信環境を整えています。

5Gコアネットワークと5G基地局を組み合わせて通信を行う「5G SA」の図解

しかし、近年、5Gの普及に加え、自社基盤とクラウドを組み合わせるなど、モバイルネットワークの構成が複雑になっています。それに伴い、現場で構築や設計、運用などの作業を行うエンジニアの作業負荷は大きくなっていました。新たな5Gコアネットワークの設定項目は数千から数万。もし、これらの設計や設定を手動で行うとすると、数か月はかかるほど膨大なデータ量です。

これまでも負荷を減らすために自動化技術を導入してきましたが、従来の技術では設定を少し変えるだけでも、システム全体を修正する必要がありました。そのたびに多額のコストと時間がかかることも、大きな悩みのひとつでした。これらの課題の解決をめざして開発されたのが、人の指示・判断のもとで「AIが自律的に5Gコアネットワークを設計・構築する技術」。その名前が、「AI×GitOps(ギットオプス)」です。

めざしたのは、熟練エンジニアと同じ思考ができるAI

「AI×GitOps」とは、「設計を行うAgentic AI」と、「自動で構築を実行するGitOps」を組み合わせた技術です。
まず、これまでエンジニアが手作業で行っていた複雑な設定値作りをするのが、「Agentic AI」です。このAIの特徴は、役割の異なる複数の「専門AIエージェント」によって構成されていることです。
具体的には、5Gコアネットワークの土台である基盤の設定値を決定する担当、アプリの詳細な設定値を決定する担当など、それぞれの分野に特化したAIエージェントが存在します。そしてこれらを束ねる司令塔役の「オーケーストレーターAIエージェント」が全体を統制することで、基盤作りからアプリの設定まで、正確な設定値が自動で生成されます。
こうしてAIが生成した設計ファイルに従って、5Gコアネットワークを自動で構築するのが「GitOps」です。

エンジニアが手作業していた工程に対して、エージェンティックAIで効率化する

しかし、5Gコアネットワークの設計には専門的な知識やスキルが必要なため、AIでの設計の実現は根気のいる地道なものでした。エンジニアたちが無意識で行っている熟練の判断基準を、AIが理解できる論理的な言葉にして、指示をする必要があったのです。AIは、時には新しい項目を自ら生成し、的外れな設定値を提示してくることもありました。それでも、AIに適切な情報や補助的な指示を事前に与え続けることで、ようやく実際に商用の5Gコアネットワークの設定で使えるレベルへと磨き上げることができました。

現場を変えた「AI×GitOps」の革新的技術

こうして完成した「AI×GitOps」は、現場に大きな変化をもたらしました。

設計から構築までの期間を短縮し、スピーディな5Gコアネットワークの構築へ

「Agentic AI」による設計工程の自動化
司令塔となるAIエージェントとそれぞれの専門的なAIエージェントが連携し、複雑な数値を生成。さらにAIが“どの順番で、どの装置に設定を入れるか”という構築プロセスを自律的に組み立てるため、従来エンジニアに頼っていた設計から構築までの作業負荷が軽減しました。

チャット形式の対話型UIによる操作性向上
専門知識をもったAIとチャット形式で対話するだけで設計が進められるため、5Gコアネットワークの知識が深くなくても自然な言葉で直感的に指示ができます。

工事工程の大幅削減と、品質の均一化
設計から構築まで、従来よりもエンジニアによる手作業を削減できるため、パブリッククラウド上での5Gコアネットワーク構築にかかる期間を約80%削減。人の手作業を最小限に抑えるため、熟練度などによらず一貫したスピードと安定した品質の5Gコアネットワーク構築ができるようになりました。

この技術は、2025年10月にパブリッククラウド上での5Gコアネットワーク構築に導入。その後、2026年2月には本技術で構築した5Gコアネットワークで、実際にお客さまの通信を収容する商用サービスを国内で初めて開始しました。パブリッククラウド上の5Gコアネットワークの構築時間が大幅に短縮したことによって、たとえば災害発生時などにも、素早くネットワークを構築し安定した通信を提供する、といった運用が可能になります。状況に合わせて、柔軟に通信環境を最適化できるようになったことで、ネットワークの安定性は飛躍的に向上。途切れずにつながり続ける、持続可能な通信インフラの実現へ、この技術が大きな役割を果たしています。

新しい技術を、いつでも快適につながる未来のために

「MWC Barcelona 2026」での発表は、世界各国の通信キャリアやメーカーから大きな注目を集めました。ブースを訪れた多くの専門家たちが特に驚いたのは、この技術が「理論上の話ではなく、すでに商用ネットワークにおいて活用されている」点です。この実用化の早さは世界でも先進的な事例として高く評価され、構想からわずか1年で実用化までこぎつけたスピード感と成果は、チームにとって大きな自信となりました。

新しい技術への挑戦、そして世界での発信を経て、開発メンバーは次のように語ります。
ドコモ コアネットワークデザイン部 清水さん:「AI技術の進化を目の当たりにした2025年からちょうど1年、世界に遅れを取らず、むしろリードするため、日進月歩のAI技術の取り込みに挑戦してきました。今年もAIをテーマに次々と新しい技術が生まれていますが、それらを吸収・活用し、独自性を加えながら、お客さまに驚きを与えられるよう、これからも挑戦し続けていきたいです。」

NTTドコモビジネス イノベーションセンター 山田さん:「今回、最新のAIの動向を踏まえて、自分たちがやりたかったことを形にすることができて、本当によかったです。これからも“世界初・日本発”の技術で、通信の先陣をきっていきたいと考えています。」
AIに煩雑な作業を任せられるようになったことで、エンジニアは、より高度で創造的なシステムの“デザイン”に力を注げるようになっていきます。見えない部分で絶えず進化し、新しいことにチャレンジし続ける。ドコモはこれからも、AIというパートナーとともに、お客さまがより快適に、あんしんしてつながり続ける未来を切り拓いていきます。

  • 株式会社NTTドコモ
    コアネットワークデザイン部 5Gコア担当課長

    清水 裕介

  • 株式会社NTTドコモ
    コアネットワークデザイン部5Gコア

    國友 宏一郎

  • 株式会社NTTドコモ
    コアネットワークデザイン部5Gコア主査

    宮本 克真

  • 株式会社NTTドコモ
    コアネットワークデザイン部 5Gコア

    小原 啓希

  • NTTドコモビジネス株式会社
    イノベーションセンター テクノロジー部門

    山田 慎悟

  • NTTドコモビジネス株式会社
    イノベーションセンター テクノロジー部門

    藤田 康寛

  • NTTドコモビジネス株式会社
    イノベーションセンター テクノロジー部門

    福田 優真

  • NTTドコモビジネス株式会社
    イノベーションセンター テクノロジー部門

    村田 圭

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