特集

「基地局の仮想化(vRAN)」と「AI」で進化するネットワーク。
より柔軟に、もっと強い基地局へ

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スマートフォンとインターネットをつなぐ基地局ネットワーク。ドコモは今、この構成を抜本的に見直し、通信品質のさらなる改善に加え、設備投資や運用保守の効率化、信頼性向上、そして次世代通信へのスムーズな移行を進めています。
近年、通信設備の「仮想化」が世界的な潮流となるなか、ドコモはコアネットワークでの先行導入に続き、「基地局の仮想化(vRAN)」へ取組みを拡大しています。
これは、基地局の機能を専用ハードウェアから汎用サーバー上のソフトウェアへ移行させるものです。これにより、混雑時の通信安定性が高まるだけでなく、将来の「6G」導入時にも、ソフトウェア更新だけでスムーズに対応できる柔軟なネットワークを実現します。
本記事では、vRANと、それを支える仕組み(O-Cloud/SMO(OSS・MANO・RIC))とともに、進化するドコモのネットワークをご紹介します。

スマートフォンのアプリのように基地局をアップデート

これまでのネットワークは、専用ハードウェアを中心に構成されてきました。ソフトウェア更新で対応できることも多い一方で、機能拡張の範囲や構成の柔軟性には限界があり、機能によっては現地での機器の入れ替えが必要になる場合もあります。こうした背景から、基地局の機能を汎用サーバー上のソフトウェアとして動かすvRANの取組みが進んでいます。
vRAN化することで、ハードウェアそのものを入れ替えることなく、まるでスマートフォンのアプリを更新するようにソフトウェアを書き換えるだけで、迅速に機能追加や品質改善を行えるようになります。たとえば通信速度を向上させる最新技術などを、現場での工事を待つことなく、即座にネットワークへ反映させることができます。
この仕組みを支えるのが、オープンな標準仕様を採用し、ドコモが展開を進めるネットワーク基盤(O-Cloud)です。
これまでの基地局は、一つひとつが独立して処理を行っていたため、ある場所が混雑していても、近くの空いている基地局の能力を融通することはできませんでした。新しい仕組みでは、基地局の処理をO-Cloud上で集約し、複数の基地局を一括管理できるようにします。これにより、ネットワーク全体の処理能力を、混雑状況に合わせて必要な場所へ柔軟に割り当てることができるようになります。
そうすることで、たとえばお昼はビジネス街の基地局、夜は住宅街の基地局といったように、人の移動に合わせてその場所の通信処理能力を増やすことで、快適な通信を保つことができます。

こうしたvRANやO-Cloudの動作を最適化する役割を担うのが、「SMO」です。SMOとは、主にOSS/MANO/RICといった制御部から構成され、各制御部がvRANやO-Cloudの運用状況を管理・制御することでネットワーク全体のオーケストレーションを行う、運用の司令塔のようなシステムです。

トラブルが起きても止まりにくい通信ネットワークへ

これまでは、機械にトラブルがあれば作業員が現場へ急行して修理する必要がありました。しかしこれからは、人手に頼らず、OSSやMANOと呼ばれるシステムが自動でネットワーク全体を見守る形へと変わります。OSS/MANOがvRANやO-Cloudの状況を監視することで、ネットワークの異常を自動で検知し、自律的な再起動や設定変更による迅速な復旧が可能になります。さらに、万が一障害が発生しても、システムが自動的に別の正常なサーバーへソフトウェアを移すことで、通信への影響を最小限に抑えます。また、前述のO-Cloudによる処理能力の柔軟な割り当ては、混雑時だけでなく、こうしたトラブル時にも必要な場所へ処理能力を割り当てるうえでも有効です。

混雑しても通信をつながりやすくするエリア品質の自動改善

多くの人が集まるイベント会場や通勤ラッシュの時間帯などでも快適な通信を守るためには、複雑な通信状況を瞬時に判断し、コントロールする新しい仕組みが必要です。そこでドコモが導入したのが、基地局を賢く制御する機能「RIC」です。AIを取り入れたRICがネットワークの頭脳となり、刻々と変化する通信状況を分析します。まるで専門の技術者のようにアンテナの角度を微調整して電波の届く範囲を最適化したり、利用が集中する基地局の通信を、周辺の空いている基地局へ分散したりといった制御を、全自動で行います。これにより、イベントの開催場所や通勤時間帯の駅といった混雑した場所でも、快適な通信品質を楽しめるようになります。

あんしんで快適な通信環境を維持し続けるために

基地局を仮想化し、AIでコントロールする目的は、通信を効率化することに加えて、暮らしに欠かせない通信インフラをより強固、快適にし、「ドコモなら、つながりやすく、安定して使える」というあんしんを、より多くの人に感じていただくことです。
この記事でご紹介したような、AIを用いてネットワークを自動化する取組みは、「AI for Network」と呼ばれます。
一方で将来的には、全国に設置されたサーバーの計算能力を生かし、生成AIや映像解析、ロボット制御などのAI処理をネットワークのリソースを用いて処理する「In-Network Computing」の実現も視野に入れています。このようにネットワークがAIを支える仕組みは、「Network for AI」と呼ばれます。

ドコモは、これら一連の構想を「AI Centric Network」として掲げ、AI技術を中心としたネットワークインフラの高度化による社会変革をめざしています。この構想は、2026年3月に開催された世界最大級のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2026」でも紹介されました。これは、基地局が単なるアンテナから、街全体の安全や便利を支える社会のインフラへと進化する大きな後押しとなるはずです。
ドコモは、これからも、この新しいネットワークとともに、お客さまがいつでも快適に過ごせる通信環境と、その先にある豊かな未来をつくり続けていきます。

  • 無線アクセスデザイン部 RAN技術推進室 無線ネットワークデザイン 担当課長

    大藤 義顕

  • 無線アクセスデザイン部 RAN技術推進室 無線ネットワーク装置

    鈴木 勇斗

  • サービスデザイン部 クラウドデザイン室 ネットワーク仮想化基盤 主査

    谷口 航介

  • サービスデザイン部 クラウドデザイン室 ネットワーク仮想化基盤

    末永 大明

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