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お客さまへ、快適な通信をいち早く。5Gの通信品質を支える運用自動化技術「SONシステム」の挑戦

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ドコモは現在、5G基地局の新設によるエリア拡大およびエリアチューニングによる通信品質改善に力を入れています。この拡大を支える鍵のひとつが、2025年11月に稼働をスタートさせた運用自動化システム「SONシステム」です。これまで手動で行っていた基地局調整をシステムが自動で行うことで、品質改善にかかる時間の大幅な短縮に成功しました。今回は、お客さまの快適な通信を支えるために、新しい技術の運用に取組んだドコモの挑戦を紹介します。

時間の壁を打ち破る、「自動化」という一手

今回導入された「ノキア製SONシステム(MantaRay SON)」は、世界で広く採用されている、フィンランドの大手通信機器メーカー「ノキア」の運用自動化システムです。エンジニアが手動で行っていた幅広い領域の業務を自動化する技術で、その役割はネットワークの建設・品質最適化・故障措置まで、多岐にわたります。そのなかでも、お客さまのつながりやすさに直結する代表的な機能のひとつに、5GとLTEの連携最適化による「ネットワークの調整」があります。ドコモのネットワークは、高速通信が可能な5Gと、広大なエリアをカバーするLTEが複雑に連携して動いています。通常時は5Gでスムーズに通信を行っていますが、5Gが混雑してきた時は、LTEも有効活用してデータを流すことで、5GとLTEを最適に組み合わせてお客さまへ早くデータを届けられるように調整しています。

5GとLTEの連携最適化を「物流の交通量の調整」にたとえたイメージ図

この“どちらの道にどのくらいの量を通すか”という通信データの交通量の調整は、これまでかなりの時間を要する作業でした。なぜなら、これまでは熟練のエンジニアが膨大なデータを分析し、手動で適切な設定値へ変更を行っていたからです。さらに、ドコモのネットワークが複数の異なるメーカーのシステムで構成されている点も、難易度を高いものにしていたのです。メーカーが違えば仕様も微妙に異なるため、連携の調整は非常に繊細な作業が求められます。
こうした現場での課題に対して、上記を含めさまざまな対策を講じることで解決を図り、今後増加していく5G基地局の設定をスピーディに最適化して、通信品質を保つうえでの重要なピースが、“運用の自動化”を実現する「SONシステム」でした。SONシステムとは、“膨大なデータの分析”と“メーカー間の仕様の違い”という課題を解決することができる、新しい仕組みです。メーカーごとに異なる仕様を自動で調整し、ひとつの形式に統一。そこに、熟練エンジニアの判断ロジックを共通のルールとして適用することで、データの分析から調整の実行までを、人の手を介さず自動で行うことが可能になります。そこでドコモは、現場の課題を解決し、通信品質を守るために、SONシステムの導入を決定しました。

世界基準をドコモの現場へ。ノキアと挑んだ「運用モデルの刷新」

SONシステムの導入が正式に決定したのは2025年3月。世界的に実績のあるシステムをドコモの環境に合わせて使いこなすため、6月にはノキアとチームを立ち上げ、定例ミーティングや海外エンジニアとの議論を通じて互いのノウハウを融合させながらプロジェクトを推進しました。

SONシステム導入を推進したドコモとノキアのプロジェクトメンバー

しかし、導入までの道のりは平坦ではありませんでした。最大の壁となったのは、「業務プロセスの変革」「ルール化」そして「人員の育成」です。これまで熟練のエンジニアが行ってきたことを、システムが自動で判断できるルールとして落とし込むと同時に、それに合わせた業務プロセスの見直しと、システムを使いこなせるエンジニアの育成も進めなければなりません。これらすべてを並行して進めることは困難を極めました。稼働まで1か月を切った最終検証の段階で、特定の条件下でエラーが出るという新たな課題が発生したこともありましたが、海外のエンジニアとリアルタイムで状況を共有し、互いのノウハウを突き合わせて解決策を導き出すことで、無事に稼働日を迎えることができました。

改善作業が「最短1日」に大幅短縮。自動化でめざす、さらなる通信品質の向上

2025年11月、ついにSONシステムが稼働。これまで人の手で行われていた品質改善のための作業が、通信データの分析から基地局への設定反映まで“最短1日”へと大幅に短縮されたのです。

SONシステム導入前後の運用フロー比較図

SONシステムの導入で、現場の空気も変わりはじめています。これまでは変更した設定が適切かどうかの結果がわかるまでに時間がかかったため、設定変更は慎重にならざるを得ませんでした。しかしその結果がすぐにわかるようになったことで、“やってみてダメなら次はこうしよう”という前向きなトライ&エラーが増加。品質改善のスピードが格段に上がっています。
また、膨大なデータの計算や入力といった定型的な作業が自動化されたことで、エンジニアはより高度な技術の習得や現場の潜在的な課題の分析など、人の手でしか生み出せない業務に時間を割けるようになりました。
この変化はお客さまのメリットに直結しています。 たとえば、街に新しいビルが建つ、イベントで多くの人が集まるといった環境の変化に対して、システムが自動で最適な設定へ変更を行います。お客さまは、いつもの場所で「動画が止まらない」「SNSの読み込みが速い」といった快適な通信を、あたりまえに使い続けることができるようになります。

環境変化や通信の混雑を先回り。自動化でめざす、いつでもつながる社会。

ドコモがめざしているのは、ネットワーク自身がトラブルの予兆を検知し、お客さまが気づく前に対応する「自律的な自動化」です。現在はあらかじめ人が決めたルールに従って稼働している段階ですが、将来的にはシステム自らが学習し、最適な解決策を自ら導き出す世界を見据えています。具体的には、混雑や障害の予兆をリアルタイムで捉え、トラブルが起きる前に自ら設定を変更する。こうした自ら考え、動くネットワークへと進化することで、環境の変化に左右されることなく、お客さまがいつでもあんしんして使い続けられることができます。通信が“途切れない・止まらない”があたりまえの毎日を、より強固なものにしていきたいと考えています。
技術がいかに進化しても、ドコモが大切にしている信念は変わりません。それは、システムに任せきりにするのではなく、技術を“使いこなす”ことで、お客さま一人ひとりに合わせた通信を届けたいということです。新たなパートナーとともに、今日もお客さまの毎日を見えない場所で支え続けています。

  • 株式会社NTTドコモ ネットワーク本部
    無線アクセスデザイン部 RAN技術推進室 無線ネットワークデザイン担当

    浜瀬 利道

  • 株式会社NTTドコモ ネットワーク本部
    無線アクセスデザイン部 RAN技術推進室 無線ネットワークデザイン担当

    國實 真人

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