「5Gネットワークスライシング」×「Starlink」
災害時の通信確保に向けた、輪島市での実証実験
ドコモグループは現在、より安定した通信品質を実現するために、「5Gネットワークスライシング技術」の本格展開に向けた準備を進めています。ネットワークスライシングの活用シーンは多岐にわたりますが、災害対策への応用もそのひとつです。
「災害時こそ、情報は命綱になる」という「令和6年能登半島地震」でも浮き彫りとなった教訓を胸に、2025年12月、NTTドコモビジネス、NTTデータ北陸、そして石川県輪島市とともに、先端技術を活用した災害時の通信安定化と防災情報のスムーズな配信をめざした実証実験を実施しました。
本記事では、最新の「5Gネットワークスライシング技術」と「Starlink」を組み合わせた、どんな状況下でも通信を守り抜くための仕組みづくりに向けたドコモの挑戦をご紹介します。
なぜ、災害時にスマートフォンはつながらなくなるのか?
災害発生時、私たちのスマートフォンの画面からアンテナマークが消えたり、電話がかからなくなったりするのには、主に2つの理由があります。
1.「通信の混雑(つながりにくい状態)」
安否確認の連絡やSNSでの情報収集が一斉に行われることで、回線がパンク状態になります。これにより、本当に急を要する救助活動や避難所の運営に必要な連絡さえも、一般の通信に埋もれてつながらなくなってしまうのです。
2.「通信の寸断(物理的な切断)」
地震による光ケーブルの切断や停電、基地局の故障などで、ネットワークそのものが途切れてしまう状態です。能登半島地震でも、多くのエリアで通信サービスの中断が発生しました。
たとえ災害でネットワークが混雑しても、救助や防災のための通信を確実につなぐこと。地上のケーブル切断や停電が発生しても、別の手段で早期に通信を復旧させること。この2つを同時に実現するために検証されたのが、同じネットワークを用途に合わせて仮想的に分割する「ネットワークスライシング」と、低軌道衛星「Starlink」を組み合わせた技術です。
「専用レーン」と「Starlink」で通信経路を確保する
今回の実験で検証した2つの技術の仕組みを、道路に例えて説明します。
1.ネットワークスライシング
渋滞している道路の横に、「専用のレーン」を確保するような技術です。今回の実験では、一般の方の安否確認などで回線が混みあっても、防災放送や行政の連絡を専用レーンで実施することで渋滞の影響を受けないスムーズな通信を実現しました。
2.Starlink
地上の道路(光回線)が寸断されてしまったときに、衛星を経由して通信経路を確保する手段のひとつです。今回の構成では、この「Starlink」を移動基地局車とネットワークをつなぐ中継回線として採用することで、地上の被害状況に左右されない環境をつくりました。
今回の実験では、輪島市役所前(対策本部)と、そこから1.5km離れた「コミセンマリンタウンBASE」(避難所を想定)の2拠点を、この「専用レーン」と「Starlink」でつなぎました。
目に見えた「つながるあんしん」
実験では、2つの成果が確認できました。
1.地上の回線がなくても、「防災放送」が届く可能性を確認
災害時、孤立した地域に避難指示などの「命を守る情報」を届けるには、確実な音声伝達が欠かせません。実験では情報を発信する側の基地局を通信網に接続するための通信回線として地上の光回線を使わず、「Starlink」経由で防災放送を流すことに成功。既存の設備が使えない状態でも、住民へ避難を呼びかけられる可能性を示しました。
2.混雑のなかでも、「映像」が途切れにくいことを確認
道路の崩落や避難所の混雑度など、言葉だけでは伝えきれない現場の状況を本部が素早く把握するには「映像」が有効です。そこで、避難所側のカメラから現地の映像を対策本部へ送るテストも行いました。あえて回線が混み合う状態をつくると、通常の通信では映像の遅延や一時停止がみられました。しかし、「ネットワークスライシング」を使った映像は、安定していて滑らかでした。現地の映像がほぼリアルタイムで届く様子に、現場の担当者からも「理屈だけでなく、目に見える形で違いを確認することができた」と手応えの声が上がりました。
経路が絶たれても、通信は途切れさせない
今回の実証により、「ネットワークスライシング」と「Starlink」を組み合わせることで、混雑時でも重要な通信を確保できることが実証されました。現地の状況がリアルタイムに共有されれば、復旧活動の判断もより迅速かつ正確に行えるようになります。
しかし、能登半島地震では「道路の寸断」そのものが大きな壁となりました。今回のように「Starlink」を中継回線として基地局につないで通信を復旧するには、移動基地局車や可搬型基地局の装置が現場へ到着するまで待たなければなりません。そこでドコモが次なる一手として開発を進めるのが、高高度プラットフォーム「HAPS」です。HAPSは、上空約20kmから地上のスマートフォンへ直接電波を届けるため、陸路の状況や地上設備の有無に関わらず、広範囲の通信エリアを即座に復旧させることが可能です。
すでにドコモグループでは、能登エリアでさまざまなユースケースを創出することを目的とした「能登HAPSパートナープログラム」が始動しており、通信をより災害に強くすることはもちろん、地域の産業発展にも役立つソリューションが実装できるように準備が進められています。
「もしものときにも、あたりまえにつながる」そんなあんしんを社会のスタンダードにするために。ドコモグループは自治体やパートナーのみなさまとともに、能登から全国へ、挑戦を続けていきます。
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NTTドコモビジネス株式会社
プラットフォームサービス本部
5G&IoTサービス部辻野 大輔
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NTTドコモビジネス株式会社
プラットフォームサービス本部
5G&IoTサービス部内野 智文
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NTTドコモビジネス株式会社
プラットフォームサービス本部
5G&IoTサービス部南郷 脩介
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株式会社NTTドコモ 北陸支社
ネットワーク部エリア推進担当浅井 勝芳