南海トラフ地震に備える
ドコモの合同災害対策訓練
自然災害による被害が年々深刻化するなか、通信事業者にとって通信を途切れさせないことは最優先の使命です。ドコモは愛知県知多郡美浜町のご協力のもと、2025年11月20日〜21日の2日間にわたり、南海トラフ地震によって被害にあった基地局の復旧を想定した全国合同災害対策訓練「R-ONE」を実施しました。
4回目となる今回は、全国から約100名のネットワーク保守・災害対策を担う社員およびパートナーが集まり、「連携力の向上」と「復旧技術の底上げ」をより実践的な形で追求しました。本記事では、その狙いと具体的な取組み、現場から生まれた学びをご紹介します。
- R-ONE(アールワン):Relief(あんしん)とONE docomoを掛け合わせた名称。
南海トラフ地震の被害を想定し、美浜町とドコモが連携
今回の訓練は、南海トラフ地震による広域災害を想定し、2024年9月に美浜町と締結した「災害時の連携に関する協定」に基づいて実施しました。指定緊急避難場所でもある美浜町運動公園を会場とし、知多半島内に広域支援の拠点をあらかじめ確保。その背景には、「令和6年能登半島地震」で得た教訓があります。それは、半島部での災害時には現地に拠点を構え、移動時間を短縮してより迅速な復旧・支援につなげることが重要であるということです。当時、発災直後は金沢市に拠点を置いて対応しましたが、半島部は幹線道路が限られ、渋滞により被災地までの移動時間が通常の3倍以上かかるなど、ネットワーク復旧や避難所支援に大きな課題がありました。今回の訓練では、その教訓を踏まえ、美浜町運動公園を拠点に、Starlinkを活用した移動基地局車や可搬中継局など、さまざまな機材の設営・運用を実践しました。
- Starlinkの活用に関する過去の特集記事はこちら
「迷わず動ける」広域支援体制の仕組みを強化
大規模災害に対応するには、全国から人員と機材を素早く集め、できるだけ早く復旧作業をはじめることが欠かせません。今回の訓練で特に重視したのが、この初動対応力です。
ドコモでは、災害が起きた際に「誰がどの拠点に向かうか」をあらかじめ決めておく、広域支援体制の自動確立ルールを整備しています。今回は、このルールに沿って、全国の社員が自律的に被災想定エリアに集まり、復旧を開始するまでの流れを実際に確認。「状況を見てから動く」のではなく、「決めておいた手順どおりにすぐ動く」ことの重要性を、参加者一人ひとりが実感する機会となりました。
また、新たな試みとして、復旧活動にあたる保守員を束ねるリーダーが前線基地に集まり、その場で復旧計画を組み立てる訓練も実施。机上のシミュレーションではなく、災害発生の一報から復旧作業の開始までを時系列でたどることで、参加者は「どのタイミングで誰がどう動くのか」を具体的にイメージしながら体感できました。
さらに、リーダーのなかには能登半島地震や豪雨災害での支援経験を持つ者もおり、自らの経験を踏まえて計画づくりをリードしたことで、「現場で本当に困ったポイント」が、より具体的な学びとして共有されました。
担当機材や役割が当日決まる体制で、連携力を磨く
訓練に参加した社員は、集合時点では自分たちがどの機材(Starlinkや可搬型基地局など)を担当するかを知らされていません。当日の会議のなかで、人員のスキルレベルや経験を踏まえたチーム構成と担当機材が決定。「どんなメンバーと組むかわからない」「どの機材を担当するかもわからない」という、実際の災害現場に近い状況をあえてつくり出すことで、はじめて顔を合わせる社員同士でも即座に連携体制を構築し、作業を進める力を養うことができました。また、各チームには必ず経験豊富な社員が指導役として配置され、経験の浅い社員は、その場で手順やポイントを教わりながら作業を行うことで、リアルな現場に近い緊張感のなかで、連携力とスキルを同時に磨くことができました。
現場の「小さな違い」から、全国で使えるノウハウを共有
訓練を通じて見えてきたのは、全国共通のマニュアルがあっても、現場の運用には各地域ならではの「小さな違い」があるということです。無線機の設置位置やケーブルのまとめ方、地形に応じたアンテナの立て方など、一見ささいな工夫のなかにも、現場で積み重ねてきた知恵が詰まっています。今回の訓練では、「自分たちのエリアにも取り入れられる工夫はないか」という視点で互いのやり方を紹介し合い、マニュアルには書ききれない細かなノウハウを共有することができました。
さらに今回の訓練では、「災害時にStarlinkをどう使いこなすか」が大きなテーマのひとつでした。従来の静止衛星と比べて、Starlinkは大容量かつ高速で、遅延の少ない通信ができるため、災害時の重要なインフラとなりつつあります。一方で、台風や豪雨災害などの現場では、周辺の地形や建物、樹木の影響でStarlinkのアンテナの見通しが確保できず、やむなく静止衛星による通信に頼らざるを得なかったケースもありました。
こうした課題に対し、全国の現場から生まれたアイデアをもとに、今回の訓練では、伸縮ポールを使ってアンテナを高い位置に設置する方法や、光ケーブルや無線伝送装置を用いてアンテナ設置場所から離れたエリアまで信号を延長する方法などを検証しました。アンテナを設置できる場所の自由度を高めることで、Starlinkを使った通信復旧ができる状況を増やすことができます。これらの工夫は、今後、全国共通のノウハウとして活かされていきます。
訓練がメンバーの絆を深め、未来への礎となる
訓練を終えた参加メンバーからは、「普段触れる機会のない機器の仕様や、他エリアとの設営方法の違いを学べた」「他エリアの考え方を知り、やり方を見直すきっかけになった」「過去の災害支援で一緒だったメンバーと再会し、改めて絆を感じた」といった声が聞かれました。
顔を合わせて一緒に作業した経験は、災害発生時の初動スピードや、現場での意思疎通のしやすさにも直結します。
ドコモは今回の訓練で得られた学びや関係性を土台として、今後も全国域で災害に対する総合力を高め、どのエリアで災害が起きても即応できる体制づくりを進め、「つなぎきる」使命を果たしていきます。
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株式会社NTTドコモ ネットワーク本部
サービスオペレーション部
災害対策室 主査淺田 洋輔
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株式会社NTTドコモ ネットワーク本部
無線アクセスデザイン部 アクセス保全推進若宮 輝
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株式会社NTTドコモ 東海支社
ネットワーク部 災害対策室菅井 大輔