新たなエンタメ発信拠点「IGアリーナ」の挑戦と地域への想い
高速・大容量通信で生み出す、未来の感動体験

2025年7月13日にいよいよグランドオープンとなる名古屋の「IGアリーナ」は、最大17,000人を収容する日本最大級のアリーナです。ドコモは、運営代表として愛知県への入札提案から参画し、高速・大容量ネットワークの構築を担当。そのインフラを駆使し、リアルとバーチャルを融合させた新しい体験づくりに取組んでいます。また、ドコモは、2025年3月10日にIGアリーナとファウンディングパートナーシップ契約を締結しました。
本記事では、IGアリーナでの挑戦と、その舞台裏に込められた想いをご紹介します。
高速・大容量ネットワークで、新しいエンタメ体験を
ドコモはこれまで、通信を通じて人々のつながりを生み出し、「おサイフケータイ」など、通信を活用したさまざまなサービスで人々の暮らしに寄り添ってきました。通信は、単なる技術ではなく、感動をつくる土台となる。そう信じるドコモは、名古屋の新たな象徴ともいえるIGアリーナの建設プロジェクトを通して、バーチャルとリアルの融合という視点で、今までにない体験を実現しようとしています。大人数が同時にその場で感動の瞬間を撮影・アップロードし、SNSを通じてリアルタイムに共有できるほか、審判や選手視点からの映像視聴といった新たな観戦体験も可能です。将来的には、ARゴーグルを使ってスポーツ選手の走行スピードやボールの軌道などのデータが視界に重ねて表示されるといった、情報と映像が融合した観戦スタイルも構想されています。このように、来場者の動きに合わせて演出や情報がリアルタイムに変化するなど、従来にない双方向のエンタメ体験を支えるのが、IGアリーナにドコモが構築した通信インフラです。

来場者の同時接続を可能にする、ハイブリッドな通信設計
IGアリーナの通信環境の構築は、2025年度のドコモの通信改善 取組み宣言※1における重要な達成目標のひとつでもありました。「IGアリーナの施設内および周辺屋外において、国内最大規模※2となる通信設備を構築し、快適な5G通信の提供」に向けて、一丸となって取組んできました。
来場者が同時に通信を行っても、快適な通信ができるように、徹底してネットワーク設計にこだわり、5Gのなかでも広域をカバーする「Sub6」と超高速通信が可能な「ミリ波」、さらに最新規格である「Wi-Fi 7」を組み合わせたハイブリッド構成を採用しています。特に多くの通信利用が想定されるメインアリーナ、スイートエリア、飲食エリア、屋外ペデストリアンデッキなどには高速・大容量が特長のミリ波を重点的に配置。同時に4Gと5Gの主要周波数帯を網羅し、通信容量に余裕を持たせることで、どんな利用状況にも対応できる柔軟な通信環境を実現しています。
- 「2025年度 ドコモの通信改善 取組み宣言」についてはこちらをご確認ください。
- 国内の屋内集客施設のなかで、集客人数あたりの設備容量が最大規模

また、高密度に配置された通信設備のお互いの干渉を最小限に抑えるため、基地局のパラメータ制御やアンテナの設置角度にも細心の注意を払い、電波の干渉を避ける工夫がなされています。アジアのアリーナにおいて初導入※3のWi-Fi 7は、スイートフロアやラウンジなどでは、目立たないように天井裏に隠して配置するなど、デザイン性と電波特性を両立した緻密な設計が施されています。
どこにいても快適につながる品質を前提に、ドコモの知見と経験を惜しみなく注ぎ込んだ通信インフラが、IGアリーナという新しいエンターテインメントの場を支えます。
- 2025年6月時点。株式会社愛知国際アリーナ調べ。設計・構築はNTTドコモビジネス株式会社が行いました。NTTコミュニケーションズ株式会社は2025年7月1日に社名を「NTTドコモビジネス株式会社」に変更しました。


技術と情熱で乗り越えた5年の設計・調整
アリーナ建設から運営まで、約5年にわたるこのプロジェクトは、通信設計において多くの課題と向き合ってきました。その課題のひとつが、アリーナ中央に設置された大型のセンターハングビジョンと複雑な屋根鉄骨による電波遮蔽など、施設の構造が複雑かつ設置物が多いことからアンテナを理想の構成で設置できなかったことです。多数の同時接続に対応できるマルチユーザMassive MIMOを設計当初は検討しましたが、施設の構造的な制約により設置困難となりました。
この課題に対しドコモは、通常の5G無線装置を増設。基地局完成後は館内の電波状況を確認し、アンテナ位置やパラメータを最適化することで、過度な干渉を抑えながら、最大収容時でも安定した通信が保たれるよう、細やかな工夫を積み重ねてきました。


この取組みを支えたのは、ドコモ社内のネットワーク関連部とエンターテインメントプラットフォーム部、そして建設会社やNTTドコモビジネス株式会社といった、組織の垣根を越えた連携体制です。技術領域を超えて、新しいエンターテインメントの場をともにつくるという共通のビジョンを軸に、プロジェクトを一体となって進めてきました。こうした見えない努力の積み重ねが実を結び、実際に、プレオープンイベントでは8,000人以上の来場者が集まるなか、速度テストではダウンロード565Mbps、アップロード83Mbpsを記録しました。現場のスタッフ一同、期待に応えられたという実感を得ることができました。

しかし、通信の最適化は一度で終わるものではありません。ドコモは今後も、イベント内容や来場者の行動、演出手法などエンターテインメントの変化に応じて、アンテナの再調整や通信設計の最適化を図ります。常に変化する現場に寄り添いながら、つながる感動体験を支える技術基盤として、アップデートを重ねていきます。
新たなエンタメ体験がもたらす、名古屋の新しい流れ
IGアリーナは、単なるエンターテインメント施設ではありません。これまで「名古屋飛ばし」とも呼ばれて、東京や大阪と比べて大規模イベントの開催が少なかった名古屋。この空白を埋める存在として、IGアリーナは国際イベントの誘致や街を巡る動線づくりを通じて、新たな人の流れを生み出そうとしています。今後は、来場者の動線データを活用したマーケティングや、アプリとビーコンを連携させて飲食店前を通過した来場者にリアルタイムでクーポンを配信するなど、通信を活用したダイナミックなコミュニケーションを構想しています。こうした取組みによって、来場者の体験価値を高めるだけでなく、施設内外の経済活動の活性化にもつなげます。さらに、メインアリーナの真横に設けられたサブアリーナでは、地元の大学や企業、学校のイベントなど、地域密着型の活動も開催される予定です。こうしたグローバルで大規模なイベントとローカルコミュニティにひらかれたイベントが共存できる多層的な空間は、名古屋全体を巻き込む都市活性の起点となっていくはずです。

IGアリーナが描く、通信の新しい使命
IGアリーナは、日常の快適な利用にとどまらず、災害時の通信確保や海外からの来場者対応までを見据えた、多様な状況に対応できる通信設計を構築しています。こうした設計思想は、次世代スタジアムのあり方を先取りするものです。同時に、このアリーナを支える通信基盤には「ドコモが運営する以上、つながらないという状況はあってはならない」という強い覚悟と責任が込められています。開業に向けて重ねてきたことすべてが、感動体験を支える礎となると信じています。
そしていよいよ、2025年7月13日、IGアリーナは、新たな幕をあけます。通信の力で、驚きや感動がリアルタイムに共有され、人と人とのコミュニケーションが加速する。ドコモはこの場所を、そんな「未来のあたりまえ」が日常になる舞台として育てていきます。
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株式会社NTTドコモ
エンターテインメントプラットフォーム部
株式会社愛知国際アリーナ出向 担当課長飯村 直記
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株式会社NTTドコモ 東海支社
ネットワーク部 エリア推進二山 愛理
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NTTドコモビジネス株式会社 ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部 第三マネージドソリューション部門
第三グループ 兼務 スマートワールドビジネス部
スマートシティ推進室 担当課長澤田 一哉
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NTTドコモビジネス株式会社
ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部
スマートシティ推進室東 宙成