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5G電波が届きにくい場所でも、ハイパワーでつなぐドコモの先進技術

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スマートフォンを使っていて、「通信が不安定になる場所がある」と感じたことはありませんか?特に建物の奥や基地局から離れた場所では、通信機器(スマートフォンなど)から基地局への5Gの電波が届きにくいという課題があります。この課題を解決し、お客さまの通信体験をより快適にするために、ドコモが導入を進めているのが HPUE(High Power User Equipment) という先進技術です。HPUEは、送信する電力を高め、電波が届きにくい場所でも基地局との安定した通信を可能にします。本記事では、このHPUEの仕組みやドコモの開発の舞台裏も含めてご紹介します。

2倍の送信電力で、電波の届きにくさを克服するHPUE技術

HPUEは、通信機器(スマートフォンなど)の送信電力を高めることで通信の届きやすさを向上させる技術です。従来、スマートフォンの送信電力は200mWに制限されていましたが、HPUEではこれを400mWに引き上げることで、電波が基地局により届きやすくなります。
この技術が重要視される背景には、5G通信に使われる高周波数帯の特性があります。高周波数帯は高速・大容量通信に適している反面、遮蔽物による電波の減衰が大きいため、基地局から離れた場所や建物の地下などでは、スマートフォンからの電波が届きにくいという課題がありました。

こうした状況を受け、2024年9月に電波関連法令が整備され、5Gサービスにおけるスマートフォンなどの通信機器の送信電力を高めるHPUEの導入が可能となりました。これを契機に、ドコモではHPUEの導入に向けたスマートフォンメーカーとの連携や社内での議論が本格化しました。

SNS更新やファイル送信など、情報共有をもっとスムーズに

HPUEの導入により、これまで5Gの電波が届きにくかったさまざまな環境での通信品質が改善されます。特に効果が大きいのは、以下のような場所です。
○基地局から離れた場所(エリア端):サービスエリアの端でも、より安定した通信が可能になります。
○建物の奥や地下、高層ビル内:遮蔽物によって電波が減衰しやすい場所でも、通信機器(スマートフォンなど)からの信号が届きやすくなります。
HPUEにより通信が安定することで、SNSへの投稿やファイルのアップロードといった日常的な操作がより快適になります。

パートナー企業との協働で、新しい技術に挑む

HPUEを利用するには、HPUE対応のスマートフォンと、HPUE対応の基地局の両方が必要です。ドコモはこの両面での開発を推進し、全国展開を進めています。スマートフォン側の開発では、国際標準仕様(3GPP)に準拠した上で、ドコモの運用周波数や電力制御仕様にも沿った実装にする必要があり、ハードウェアへの影響やコスト面も考慮しつつ、スマートフォンメーカーへの粘り強い働きかけが求められました。また、送信電力を高めることに伴う発熱やバッテリー消費の増加といった技術的課題をクリアするため、メーカーと連携し、熱制御や電力効率の最適化を重ねてきました。基地局側の開発では、全国の基地局へのHPUE機能展開に向け、基地局ソフトウェアの更新も実施。その効果を実環境で確認するため、エリア端など、さまざまな条件下でのフィールド検証も入念に行いました。
HPUEのような最新技術を通じて、お客さまが感じる不都合を少しでも減らし、通信体感を向上させたいという強い想いがあります。その実現に向け、多くの部署や外部ベンダーと連携し、技術的課題の解決だけでなく、安全性や法令遵守を含む多角的かつ長期的な取組みが行われています。

フィールド検証をしている様子

より快適な通信環境の探求は次のステージへ

あたりまえにつながる5G通信を実現するHPUEは、あまり目立たない技術かもしれません。しかし、電波が届きにくい場所での通信を改善するなど、見えないところで通信環境を支える重要な役割を担っています。そのため、ドコモは今後もHPUEと最新技術を活用し、通信品質のさらなる向上をめざしていきます。まず、2025年10月末までに、ドコモの通信改善 取組み宣言として全国の5G基地局に対応機種との間で送信電力アップを実現し体感品質を向上させるHPUE技術を順次導入予定です。
将来的には、HPUEのような高出力化が標準技術となる可能性もあり、6Gといった次世代通信技術との連携も視野に入れています。また、HPUEだけでなく、大容量通信に対応した最新型基地局装置(MMU)の導入も進め、通信体感のさらなる向上に取組んでいます。
よりつながる社会を実現するために、開発者一人ひとりが、技術と情熱を持って開発に挑み続けています。HPUEは、そんなドコモの取組みのひとつの成果であり、これからも先進技術によって、より快適な通信環境を提供し続けていきます。

  • 「2025年度 ドコモの通信改善 取組み宣言」についてはこちらをご確認ください。
  • 株式会社NTTドコモ
    無線アクセスデザイン部 無線企画無線技術

    山岡 裕

  • 株式会社NTTドコモ
    プロダクト技術部 無線テクノロジー

    北川 竜

  • 株式会社NTTドコモ
    プロダクト技術部 無線テクノロジー

    由田 健介

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