進化し続ける、大阪環状線・御堂筋線の通信環境対策

スマートフォンの普及から、電車などの移動時にもSNSや動画視聴を楽しむという生活様式が一般化し、より快適な通信へのニーズは日々高まっています。それに応えるために、ドコモでは全国の鉄道動線などでの通信品質改善に継続して取組んでいます。特に2025年関西・大阪万博の開催などで旅行客増加が見込める関西エリアでは、通信環境の整備は急務でした。そこで関西エリアは、2025年3月末までの通信品質改善をマニフェストに掲げ集中対策を実施。そのなかでも、今回は主要路線である「大阪環状線」と「Osaka Metro御堂筋線」で行った対策の一部をご紹介します。
大阪の日常を支える鉄道網の「つながりにくさ」を解消する
約279万人の人口を有し、西日本における観光やビジネスの中心地である大阪市。その活気ある日常と経済活動を支える上で、鉄道網は必要不可欠な存在です。なかでも、多くの人の暮らしに深くかかわっているのが「大阪環状線」と「Osaka Metro御堂筋線」。大阪環状線は市内中心部を環状に結ぶ大動脈で、沿線には大阪城公園や京セラドームといった観光名所も点在し、地元住民から観光客まで幅広い層に利用されています。一方、Osaka Metro御堂筋線は大阪市内を南北に縦断する、もうひとつの重要な交通軸。梅田・心斎橋・なんばといった主要なビジネス街や繁華街を結び、朝夕ラッシュ時の乗車人数においては環状線を上回る区間があるほど、生活に欠かせない路線です。

これら大阪の交通の要である二つの路線では、コロナ禍が明けた2023年頃から、データ利用量の増加に伴う通信環境の課題が顕著に。特に利用者が集中する駅や時間帯では「動画の読み込みが遅い」「SNSにつながりにくい」といったお客さまの声が聞かれるようになるほど、通信品質が低下する状況になりました。これに対して、ドコモは二つの路線の駅や駅間での集中的な対策に乗り出しました。重要なポイントとなるのが、それぞれの路線が走る環境に最適化された対策を行うということです。
それぞれの路線で、それぞれの特性に合わせた「最適解」を
大阪環状線は主に屋外区間を走る路線のため、屋外区間に集中的な対策を行いました。まず高速・大容量通信を実現する5Gの主要周波数帯「Sub6」に対応した基地局を1.4倍に増設、通信容量そのものを大幅に増強しました。加えて、従来の基地局よりも広いエリアをカバーしながら一度に受信できるデータ量を増加させる新しい5G技術「マルチユーザーMassive MIMO」を導入。これにより多くの人が同時に通信しても速度が落ちにくく、より快適な通信体験の提供を実現できます。こうした設備の増強と並行して、基地局アンテナ角度の調整・出力の調整、ソフトウェア設定の最適化などの綿密なエリアチューニングを繰り返し実施。駅周辺のビルや施設への影響も考慮し、路線内だけでなく広範囲での快適性を追求したきめ細かな調整を行いました。

対してOsaka Metro御堂筋線では、屋外からの電波が届きにくい地下鉄やトンネル区間を中心に対策を行いました。地下での通信環境改善の要となったのは、複数の通信事業者が設備を共用する「基地局シェアリング」の活用です。これにより、限られたスペースでの効率的な設備設置と、地下鉄トンネル内での5Gサービスの提供を実現させました。この対策は、優先的に工事を行う駅・区間の選定からスケジュールの調整まで、他の通信業者や移動通信基盤整備協会(JMCIA)、鉄道事業者などとの密な連携が重要。最近では、新しい屋内用設備を使用したSub6による5Gエリア化の促進など、通信環境をよりよくするための取組みを協力して進めています。

これらの対策の結果、通信品質は着実に改善。大阪の環状線内を電車で移動中、HD画質の動画を快適に視聴できる時間が、対策を行う前と比べて約1.2倍に増えました。御堂筋線では、一部区間において約1.4倍に増加するなど対策の効果は歴然。お客さまからも「以前よりつながりやすくなった」という声が聞かれるまでに改善しています。
変化の先を読んで、一歩先ゆく継続的な対策を
駅という工事時間が限定される場所での通信対策には、多くの困難がありました。しかし鉄道事業者との綿密なスケジュール調整、駅周辺の施設・ビル・マンションオーナーさまからの理解と協力、そして他事業者と共同で行う最効率での設備設置など、地道で粘り強い努力の積み重ねが、今回の対策を成功に導いています。

関西エリアでは、今回の取組みで通信改善取組み宣言※におけるマニフェストを達成させることができました。大阪環状線・御堂筋線における対策は、これで終わりではありません。スマートフォンの利用形態は常に変化し、それに合わせてデータ通信量も変化していくことが予想されます。その変化の先を読み、継続的な対策を行っていくことが重要です。特に大阪を中心とした関西エリアは、統合型リゾート計画や再開発の進行など、今後も注目される地域です。これからもお客さまに不便やストレスを感じさせない通信環境を維持するために、ドコモはさらなる取組みを続けていきます。
- 通信改善取組み宣言については、こちらをご確認ください。
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株式会社NTTドコモ 関西支社
ネットワーク部 ネットワーク計画 移動無線計画竹田 悠二
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株式会社ドコモCS関西
エリア品質部 エリア品質技術担当森 博昭
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株式会社ドコモCS関西
エリア品質部 エリア品質技術担当日笠 智文
